この時代で名をあげる!

羽ばたいていく大橋兵部少輔暁

 酷いものを見てしまった。気持ちわりぃー・・・。

とりあえずみんなの健康診断は終わったけど、望月信雅って人は初期の胃癌が見つかったので黙って処置してあげた。俺の初めての家臣だからな。


 さて、こんな夜中だけど罪深い飯だ。あんなセバスチャンだが飯は上手いからな。ゲームでは味は分からなかったが。


 「さぁみんな夜中だけどいっぱい食べてねぇ?」


 「こ、こ、これはなんですか!?」


 「まずはあなた達は皮膚と皮しかないから、脂肪をつける為に肉を食べなさい?宗教上食べられないとかは許さないからね?黙って焼肉食べて米食べてしっかり身体を作りなさい!」


 「う、美味い!!?」


 「あーしが瞬殺してきた猪肉を焼いてタレを付けただけよ?美味しいでしょう?黒川きゅんは特別メニューよ?あーしが愛情込めて作った1.5倍増し上ロース焼肉よ?」


 「・・・・はい」


 「セバスチャン?その辺にしてやれ。目に掛けてやるのは大事だがまずはここに慣れてもらおう。みんなもここで腹が減ればこのセバスチャンに言えばいつでも作ってもらえるから遠慮はしないように!飯は日に最低3食!おやつも甘味も食べたい物は食べる事!仕事はそこそこしてくれればいいから!後、簡単に命をかけないように!」


 「大橋様?大変美味しい物をいただいておりまするが仕事とは!?」


 「これより暫くすれば織田は浅井と戦をします。その嫌がらせをしようかなと。また近々その事は言うからまずは食べて寝る!以上!俺も食べよう!」


 「これは・・・箸が止まりませぬ!うむ!何枚肉を食っても美味い!」


 案外肉に忌避感はないのな。意外な発見だ。


 「千代女様?こんなに食べても良いのですか!?」


 「そうです!殿方に喜ばれるには細腰ではないといけないと・・・」


 「へぇ〜。巫女ってそんな事までしてるんだ?君達はまだ14、5歳くらいだろう?気にせず食べないといけないぞ?遠慮はしなくていい!それに巫女の事は考えなくて良いから」


 「あ、ありがとうございます・・・」


 可哀想な子達だ。満足に食べられず過酷な仕事をあんな歳からさせられて。


 「甲斐や信濃とは大違いですな・・・」


 「勘違いしないでね?ここの館が特別なだけだから」


 「そうそう。俺の家が特別なだけだから。セバスチャン?ビールでも出してあげて」


 「暁ちゃんも飲む〜?」


 「いや俺はもう眠いから寝るよ。明日城に行かないといけないし」


 「あらそう?ならあーしが付き合おうかしら?」


 「程々にしてやれよ?じゃあ望月さん?後は仲間達とセバスチャンと程々に。俺は寝るから。酒は飲み過ぎないように」


 「さ、酒をくださるのか!?」


 「小雪?寝るよ」


 この日俺は小雪が突然居なくなるかもと思い無性に抱きたくなって、半兵衛さんや巫女村の人達が居る事を無視し声は聞こえていないだろうが何回も抱き合った。その途中何故か俺は涙が溢れた。


 次の日朝方に目が覚めた。睡眠時間が短いはずだが寝覚めのいい起き方だ。ダイニングに行くと既に竹中夫婦が起きていた。


 「おはようございます。半兵衛さん、いね様」


 「大橋様おはようございます」


 「暁殿おはよう」


 「セバスチャン?朝飯を」


 「出来上がってるわよぉ〜」


 さすがセバスチャンだ。バターパンにコーヒーか。うん!良い朝飯だな!


 「いねちゃん?今日帰るのでしょう?お土産だよぉ?作り方とか色々書いてるから半兵衛きゅんと食べてね?」


 「何から何までありがとうございます」


 「セバスチャン様ありがとうございます」


 「いいのよ?ただ、半兵衛きゅんはもう少し肉を付けるともっといいわよ?」


 「・・・覚えておきまする」


 「とにかく食べましょうか。パンは初めてでしょう?」


 「はい!うむ!米とは違い変な感じですな?」


 「朝飯は軽い方が楽なのでこのパンを俺は好んで食べてますよ」


 「いや、本当に面白い方だ。私達は初めて目にする物に興奮しているが然も当然のように物を使い食べ・・・ここは極楽ですな」


 この時代の人からすればそうだろうな。まあせめて早く日本が一つになれば今より食事上は良くなるかな?その後は信長に頑張ってもらい世界戦になるのかな?


 「大変楽しみました。暁殿?これを」


 「うん?なんですか?」


 「城に行くのであろう?この書状をお館様に見せるように。全面的に暁殿のする事を私は支持すると書いてある。もし、失敗しても私も一緒に咎を受けるとも」


 「え!?それはだめですよ!!」


 「い〜や!私は未来を見る力はないが、人を見る目はあると思っておる。暁殿は織田に必要な方。お館様の唯一の理解者になれるお方。私如きが今できる事はこれくらい。他の方の根回しも私が致しましょう。まだ見ぬ力を存分にお出しし、お館様の悲願を共に・・・」


 臭い言葉だがこれ程この言葉が似合う人は居ないだろう。本来なら結核か何かで死ぬ運命の人を俺は助けている。まだ何が起こるかは分からないしその史実での死亡日は超えてないが。ただ・・・竹中半兵衛の言葉が俺は嬉しかった。やるぞ!浅井!恨みはないけど屠らせてもらう。



 その後は俺がかつて作った芸術品(ガラクタ)を半ば無理矢理渡し、写真は額縁に入れ土産として帰ってもらった。


 「バタバタさせてすいません!後日また改めて来てください!まだまだ見せたい部屋はあるんです!」


 「ははは!それではまた近々参らせてもらいますぞ!」


 ワンチャンこの人は明日とかに来そうな感じがする。


 「大橋様?お邪魔致しました。今度はこちらにもいらしてください!もてなしをさせてくださいまし」


 「また落ち着けばお邪魔させていただきますね。お気をつけて」


 さてそろそろ巫女村の人達と話すか。


 「ってかセバスチャン?お土産は正確には何を渡したんだ?」


 「小麦に、バターに、砂糖でしょう?錬成機で作った翡翠やエメラルドの指輪も入れたわよ?全部説明書書いてるから装飾品として使ってくれるかしら?あっ!後は半兵衛きゅんにニューナンブM60と38スペシャル弾500発渡したわよ?」


 「おいおい?別に構わないけど錬成機をかなり使った土産を渡したな?まあ、半兵衛さんはもう友達みたいなもんだからいいけど。新しく来た人達の飯を作ってやってくれ。俺は小雪と城に行ってくる」


 「あーしも信長見てみたいんだけどぉ?けどデータベースには優男なのよねぇ〜。あーしは家康が好みかしらぁ?」


 「やめておけよ!?俺が怒られるんだからな!?」


 「はいはーい!気をつけてねぇ〜」


 半兵衛さんにだけピストル渡して信長に渡さないわけにはいかないよな。なんか一丁渡してやるか。


 「小雪?信長にも何か銃渡そうと思うけど何がいいかな?」


 「そうですね・・・竹中様にニューナンブ渡したのならコルトキングコブラなんていかがですか?あれも倉庫に山程転がってますよ?」


 「正直ゲームならガチャのゴミだったからな。そうだな。弾も38スペシャル弾だからな。この時代の火縄銃より小型だけど威力も射程も精密さも段違いだろう?メンテナンスも簡単だろうし」


 「そうですね。この時代の鍛治する人でも簡単にメンテナンスはできるでしょう」


 「決まりだな。倉庫から取り出して木箱にでも入れて持って行こう」


 

 城に上がった俺達は名前を言うとすぐに通された。案内された場所はこじんまりとした囲炉裏のある部屋だった。


 「作法はよい。入れ」


 「はっ。失礼します」


 うわ!茶室かよ!?作法はよい。って言ったけどさすがに普通通りはだめだろ!?どうしよう・・・。


 「クハハハハハ!本当に大橋は茶の事は知らぬようだな?構わんと言ったであろう?足を崩せ!ほれ!飲んでみよ!」


 「ありがとうございます。いただきます。・・・・え!?甘っ!?なんでこんなに甘いの!?」


 「ほーう?甘いか!ならワシの茶は未来でも通用するということか?良きかな。小雪も飲んでみろ」


 「いただきます。確かに甘いです!飲みやすく喉にスッと入る滑らかさ!さすがでございます」


 「ははは!いつでも入れてやる!好きな時に来い!して、今日はなんぞ?」


 「小雪?お渡ししてあげて」


 「こちらにございます。昨夜竹中様がお泊まりになりこれより'弱くて古い'銃をお渡ししました。織田様にお渡しした回転式拳銃コルトキングコブラは竹中様のより'強くて新しい'銃でございます」


 「ほう?強くて新しいとな?どうやって使うのだ?随分と小さいが火縄より弱いのじゃないのか?弾は・・・この形は初めて見る・・・。試して良いか?」


 信長のこの試したいの一言で庭に降りると城に詰めていた色々な人が勢揃いし信長と俺達を見守る。


 「この小さい箱に弾があり………左にスライドさせて………チャンバーに弾を込め……斬鉄を引き起こしこの、引き金を引く・・・どうぞ!お撃ちください!」


 バァンッ!


 「「「「「おぉぉぉぉーー!!!」」」」」


 いやいやギャラリーの方が興奮しているぞ!?


 「これは・・・名をなんと申したか?」「コルトキングコブラでございます」


 「長い!そうだな・・・岐阜銃という名前にしよう!」


 いや本当に信長って勝手に名前付けたりあだ名つけたりするんだな!?まあどうせ史実とは違うから気にしないけど。


 「分かりました。岐阜銃にしましょう」


 「大橋?これは他にはないのか?」


 「私の家の倉庫にそこそこ山積みされていますが」


 「おい!堀!大橋に銭を渡せ!蔵一つ分だ!」


 「く、蔵一つ分でしょうか!?些か多いように思いまするが!?」


 「聞こえなかったのか?貴様にこの銃の価値が分かるのか?」


 「申し訳ございません!直ちに!」


 それから暫くは岐阜城の庭に銃声が鳴り響いた。甲冑なんは当たり前のように貫通し、矢盾なんかもなんのその。さすがに石でできた本陣に置く弾避けは貫けなかったけど。


 「ははは!これは良い!爽快じゃ!!!」


 俺がマシンガンなんかでブッパしてたらそれをくれ!とか言われるだろうな・・・。


 「織田様?実は新しい人を雇いました」


 「ほう。さっそく仕官してきた者が居たか。どこのどいつじゃ?」


 「ここでは・・・できれば先程の部屋にて・・・」


 「・・・・うむ。相分かった。些細聞こう。皆の者!散れ!」


 さっきまであんなに無邪気にコルトキングコブラブッパしてたのに急にマジな顔になったな・・・なんて言おうか。

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