小雪の裏稼業1

 「なんとこれがエビピラフとな!?焼飯に似てはおるが見た事ない具材が多いな?」


 「エビピラフのエビはそのままの海の海老です。とにかく食べましょう!奥さんも待たせてすいません!側仕えさんもどうぞ!」


 俺達はあの後普通に夕方に戻り館に向かった。セバスチャンが言うにはこの家に何人か商人らしき人が来たが対応し留守にしていると伝えるとそそくさと帰ったと。


 「ちょっと暁ちゃん?あーしの席かないんだけどぉ〜?」


 「いや今俺達が食べてるからーー」


 「(クスクス!)大橋様?妾は随分と楽しかったですよ?このせばすちゃん様とお話させていただき色々お聞きしました。随分と遠い所からいらしたと?」


 「そうですね。帰り方も分からないため暫くはここで住もうかと。何かセバスチャンは問題なかったですか?」


 「なによぉ〜?何も悪い事なんかしてないわよぉ?」


 「こーひー牛乳なるものから始まり聞いた事も、見た事もない甘味をお作りいただきました。側仕えの者の分まで。格別な配慮誠にありがとうございます」


 「セバスチャン?何作ったんだ?」


 「えぇ?クッキーに、シフォンケーキに、紅茶も出したしぃ〜、錬成機で花瓶も作りお花のお造りもしたわねぇ〜」


 いやいやさすが全ステータスが1番高いアンドロイドだ。何でもマルチにできるのか!?


 「いねちゃん?今日は泊まるんでしょぉ?この後、暁ちゃん自慢の館の風呂に入りましょう?あっ、あーしは心は女だけど体が男だから一緒には無理だけど、きっと驚くわよぉ?なんて言っても課金額3000円もした虎のジャグジーよぉ」


 いやだから課金額はいらないから!


 「まぁ!?せばすちゃん様ったら!」


 「半兵衛さんも奥さんと風呂に入ります?本当に自慢の風呂ですよ!」


 本当は俺もまだ入った事ないけど。だってゲームではVR越しでしか見れないんだから。意味の分からない所にまで課金して揃えててよかったよ・・・この事だけは自分で自分を褒めてやりたい。


 「ってか小雪はどこに行ったの?」


 「小雪嬢ならなんか確認する事があると言って出て行ったわよぉ?」


 「なんだよ!エビピラフ作るだけで出て行ったのか。いつ帰るとか言ってたか?」


 「さぁ〜?でも私抜きで楽しんで!って言ってたわよぉ?料理はあーしの方が得意だから何でも作るわよぉ?」


 なんか気になる。前みたいに狩りに行くとかなら分かるけど確認する事ってなんだ!?少し待ってみるか。


 「お二人は仲が良いですね!」


 「私といねがですか?」


 「大橋様ったら!妾がいついつまでも半兵衛様をお慕いしておるだけですよ。なのに半兵衛様は側室も取られずにーー」


 「いね!やめ!暁殿の前ぞ!!」


 「ははは!羨ましいですよ!いつまでも仲良くしてくださいね?あっ!そうだ二人にピッタリな物をあげましょう!」


 俺は初期の頃に実装された敵陣を撮影できる超望遠一眼レフカメラを倉庫から取り出した。敵陣を撮影するために実装されたがこの一眼レフが実装された数日後に大型アップデートが入りこの家にもある虫型偵察機やら色々追加されなんのために生まれたアイテムか分からない物だ。


 救いなのがこれはガチャではなくゲーム内コインで買えた事だ。


 「ってでか!長っ!!重っ!!こんなんスナイパーライフル並みじゃねー!?」


 「ちょっとぉ〜?暁ちゃん?写真撮ってあげるのぉ?あーしが撮ってあげようかぁ?」


 「悪い。セバスチャンに任す。竹中夫婦を美しく背景をぼかして撮影して額縁に入れ渡してあげなさい!」


 「ほぉ〜い!ちょっと、いねちゃん?もう少し旦那さんに寄りなさい?そうそう!」


 「あ、暁殿!?あれはなんなのだ!?鉄砲に似ておるが!?」


 「ほらほら半兵衛きゅん?動かない動かない!」


 「ははは!鉄砲じゃないですよ!できてからのお楽しみで!」


 「はぁ〜い!321」


 カシャッ!






 さて再び全速力で巫女村まで来ましたが・・・虫型偵察機とタブレットを・・・・


 「では、千代女は本当に無害で帰されたのか?」


 「はい。恥ずかしながら敵の施しは受けまいと思っておりましたが眠り薬にて眠らされ・・・・」


 「そうか。では何故織田の奴らは千代女をここまで連れてこれたのだ?」


 「織田は・・・・いや、あの男と女は最初から私達の正体を知っていました。歩き巫女の存在、お館様と本願寺との書状までも」


 「では内部まで間者が潜んでおると?」


 「いえ、そんな枠の話ではないような・・・もっとも人智を超えた・・・それに二度と治らないと思われた私の右目も治してもらいました」


 「分かった。それで首尾は?」


 「・・・・・・すみません。朝倉の間者が言った鉄の化け物は発見できませんでしたがあの大橋という者で間違いないかと」


 「後日沙汰を出す。しばらく休め。後で飯をもってこよう」


 任務失敗私は毒を盛られて死ぬのか。はぁ〜。なんであんな怪しい建物に入ったのか。あんなの外見からでも一目瞭然ではないか。


 「待たせたな。お前の頑張りにて巫女村 惣領 諏訪頼忠様から下賜された。存分に味わうが良い」


 「ありがとうございまする」


 はぁ〜。どうせ巫女の頭領になろうが使い捨てか。


 「こんばんわ?千代女さん?」


 「お、お前は!?」


 「シーッ!手短に言うわ。そのナマズに砒素が入っているわ。食べるのはやめた方がいいわよ?」


 「・・・・もう良い。私は用済みだ」


 「分かってないわね?私があなたに書いた手紙は見てないのかしら?」


 「お前達に仕えろということか?」


 「簡単に言えばそうね。けどあなたが目にかけてる子達が居るなら全員雇ってあげてもいいわよ?私達織田家では新参だから家臣が居ないの」


 「・・・・・・・」


 「時間がないから早く答えを貰えるかしら?あなたの死を確認するために後少しで見回りが来るわよ?それに聞いたわよ?あなたの親族は武田晴信に処刑されたのでしょう?けどおかしいわね?千代女と言えば現当主 信雅の母親だと思うけど?」


 「それは先代の千代女だ!千代女と言うのは巫女頭になれば名乗るのだ」


 データベースにない事だ。これは覚えておきましょうか。


 「ではあなたは望月家と関係ないと?」


 「関係ないわけあるか!私の父は晴信様と戦い負けはしたがその娘が私だ!」


 というと初代千代女の孫ということかしら?


 「ふ〜ん。あなた達はかなりの訓練をしてると思うけどそれをこんなつまらない形で終わらせるのはもったいないと思わない?任務失敗しただけで消されるなんてあまりに酷いと思わない?」


 「それが武田歩き巫女の宿命だ。それで秘密を守っている」


 「私は知っていたけどね。それで・・・あなたがいいなら私の下に仕える子全員雇い旧領及び旧里をあなたの父に返す事を約束してあげるわよ?」


 「そ、そんな事新参のお前達が決めれる事ではーー」


 「決めれるのよそれが。だってもし織田の殿様にこの事を私達が勝手に決めた事だ!と足蹴にすれば離反するから。この意味が分かるかしら?」


 「それ程までに私達を・・・・」


 「そうね。暁様はあなた達の事を認めていたわよ?あの歩き巫女は良い考えだとね」


 本当は何も思ってないけど、武田の目を奪うには必要な嘘かしら。離反すると勝手に言ったけど後で怒られるかもしれないから帰ればすぐに謝らないといけないわね。


 「この裏手にある、あなたが探してた鉄の化け物で帰るからここに連れて行く子達を連れて来なさい」


 「え!?それは・・・・」


 「千代女?まだ食べておらぬのか?」


 「これを飲んでからそのご飯を食べなさい。どんな毒も効かなくなる。裏で待ってるわよ」

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