貧しい甲斐

 俺達3人は甲斐の方面に向かう。道は俺も半兵衛さんも知らないから小雪が分かると言うので小雪に先頭を走ってもらった。


 もう一度眠り薬を使い小雪の後ろに括り付けて走ってもらっている。馬の疾風に関しては当初は男を乗せると思ってたみたいで渋っていたが、


 "何でワテが男をしかも2人も乗せないと行けないだすか!?"


 "え!?女だすか!?ゴホンッ・・・・ワテが・・・目的の地まで責任を持ち運びましょう。ワテより女を乗せる事に長けておる紳士な馬は居ません。ご安心くだせ〜"


 と欲望丸出しになりながら走ってくれている。括り付ける時ももっとキツく!とか密着させて!とか変態な事言ってたけど。


 「それはそうと暁殿の馬はご立派ですな?」


 「コナユキですか?そうですね。サラブレッドって種類かな?」


 "違うし!私は赤兎馬って種類だから!そこんとこ間違えないで!"


 いや赤兎馬が種類の名前なの!?


 「私の桜も名馬に入りますがコナユキ号には敵いませんな」


 「大きさは関係ありませんよ。馬とどれだけ心通わせてるかですよ。もし気になるなら私の館の庭にこれから拡張して馬が走れる場所を作ろうと思いますので見に来ますか?こう見えてまだまだ馬が居るんですよ」


 「では、また出来上がりましたら拝見しにいきますね!」


 

 そうこう話しているとすぐに険しい山道に入る。


 「こんな山の中に武田は住んでるの!?」


 「この山を越えたらそこが甲斐です。暁様もう少し頑張りください」


 俺は大丈夫だけど半兵衛さんと馬は大丈夫かな?


 「暁殿!!?少しお待ちください!桜が疲れているようで・・・」


 大丈夫じゃなかった・・・。


 「小雪?少し休憩しよう。馬に例のドーピング人参あげようか」


 「あれ!?コロッと忘れていました!最初から食べさせてあげればよかったですね!」


 "あっ!!その人参体が強くなる人参だ!くれるの!?"


 "あぁ。まだ少し頑張ってもらわないとダメだから食べていいよ。コナユキ?ありがとうな"


 "いいよ!走るの楽しいし!けどあの子が可哀想だね?疾風は興奮してるみたいだからいいけど"


 "小雪様!ワテを叩いてください!もっと走れと!!"


 うん。疾風は絶対に大丈夫だ。


 「半兵衛さん?桜君?桜ちゃん?にこれを食べさせてあげてください」


 「桜は雄馬ですよ。それとこれは?」


 「馬用の菓子みたいな物です」


 「かたじけない。いただこう。桜?暁殿から貰ったんだ。食べれるか?」


 ブビィィィィィィィィィーーーーー!


 「おぉぉ!!桜どうしたんだ!?」


 めっちゃ覚醒したんだが!?


 "あの子が早く走りたいって!暁君にありがとうって言ってるよ!"


 "あれくらいなんでもないから気にするなって言ってくれるか?"


 "オッケー!"



 それから道なき道を走り本当に合っているか分からない道を歩いたがこの道の方が早いのと関所対策だそうだ。館の時計で10時くらいに出発したが多分今は12時くらいかな?思ってたより時間は掛かったが到着した。


 「なんていうか・・・本当に貧しい感じがする」


 「初めて甲斐に来ましたが岐阜とは大違いですね」


 「人が集まってくるといけないからここら辺でいいかな?」


 「貴様ら!何者だ!?」


 ほら言わんこっちゃない。相手は3人か。揉め事は起こしたくないけど・・・


 「殺りますか?」


 「小雪は待機。俺がする。その間にその女を起こしておいて」


 俺はニンフ剣を抜くのと同時に土産も出して砂埃を上げた。が、その刹那1人の男が矢を放ってきた。

軌道的に脅しのような軌道だな、もちろんこれを固有技のスラッシュで完璧に安全な軌道に逸らす。俺に飛び道具は効かない。


 本当はさっきの砂埃の間に女を置いて帰ろうとしたけどなんか叫んでいるな?この技はかなりいいけど風の音が煩いのが難点なんだよな。


 「・・・・・さまではないか!?」


 「・・・さま!?」


 「代女様!!」


 「千代女様!!!」


 うん!?千代女!?まさか望月千代女か!?この女が!?


 「己ら!!生きて帰れると思うなよ!!巫女頭の千代女様をこのような・・・ぐぬぬぬ!」


 「巫女頭か何か知らんけどこの女が岐阜の俺の家に忍び込んだ。俺は友好的に返却しに来た。それをあんた達は攻撃を仕掛けてきた。どちらが筋道間違えているか分かるか?」


 「その話!信ずる証拠は!?」


 「普通に考えろよ!今は友好かどうか知らんけど他家にこの人数で戦いに来るわけないだろ!?馬鹿か!?」


 「ここはどこだ!?」


 「「「「千代女様!!!」」」」


 「うん?貴様等は・・・・」


 「望月千代女さんでよろしいですね?右目が見えなくなってたと思うけど治したから礼としてこの人達どうにかしてくれるかな?」


 「ここは・・・甲斐・・・」


 「そうそう。わざわざ運んであげたし、お土産まで持って来たんだから」


 「み、皆の者!武器を下げ!私は大丈夫だ!」


 「じゃあ俺達は帰るから!武田さんによろしく伝えてといてくれ!お土産もこれ全部だから!書状も小雪が分かりやすく書いてるから!」


 「おい、ちょ待て!!」


 シューーーーーーーンッ


 俺達はニンフ剣でまた土埃を上げてコナユキに乗りこの場を後にした。


 「ははは!さすが暁殿!面白かったですな!!!」


 「いやいやあんないきなり攻撃されると思わなかったですよ!それで小雪?手紙はなんて書いたの?」


 「はい。普通に間者を放つなら相応の対応をする事と、争うつもりはないからあの土産をあげる事とかグラスは当たると割れると当たり障りない事を書きました」


 「最初の文字は喧嘩ふっかけてるようだけど向こうが忍びこんで来たのだからな」


 「そうですね。それとあの女にはもし殺されそうになるなら私達の元に来いと手紙を渡しております。私の演算では高確率で7日以内に暗殺されます」


 「え!?何で暗殺されるの?任務失敗してバレたから?」


 小雪が教えてくれたのは俺は普通に未来で過去の事知ってるからだけど、あの千代女って女・・・まあ歩き巫女だ。その歩き巫女の凄さは忍術や体術を使う事ではないらしい。何が凄いかとはその秘匿性だそうだ。俺は普通に知ってるが歩き巫女が武田の間者とは知らない人がほとんどだと。


 「ではもし暁殿は本当にあの女が来れば仕える事を許すのか?」


 「そうですね。俺の家に侵入は失敗したけど望月千代女って名前は知ってる人も居るくらい未来では少し有名ですよ」


 「ほう。あの女子がか」


 「はい。たしか甲賀と伊賀の忍術や体術、薬など色々精通してると俺は認識しています」


 「暁殿は色々知っているのだな。私も負けてはおれんですな?」


 「まあ俺の場合は反則な気が自分でもしますけどね。とにかく帰りましょう。夜飯はチャーハンにでもしましょうか。小雪?チャーハンでもいいかな?」


 「はい!私が作ります!」


 「チャーハンとは!?この私にチャーハンを教えてください!」


 「そんなビックリする程の事でもなくてチャーハンとは……」






 書状の事あまり聞いてこなかったですがあの望月千代女・・・早ければ明日には処刑されるかもしれませんね。暁様はゲームと違い慎重になりました。その意を汲んで私は先回りしましょうか。


 さっきのが巫女村・・・あの村の者を私達が吸収し武田の目を奪いますか。確か望月現当主 望月信雅は1543年に長窪城の攻略にて望月城も陥落させられ一族は悉く処刑されたと・・・武田は偏諱を与えたり、忠勤を褒めたりしているけど家族を親族を殺され心から従うわけがないでしょう。愚か也!


 さてさて・・・今日の夜中は大変です。まずは武田の目を貰い出方を見ましょうか。


 「小雪?チャーハンじゃなくエビピラフにしよう!」


 「(クスッ!)はいはい!エビピラフですね!」


 暁様の望む世界をここで作りましょうか!

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