歩き巫女
「ったくなんなんだよ!誰が入って来たんだ!?小雪ごめん・・・」
「・・・・許すまじ」
ヤバイ!小雪がブチ切れしてるんだが!?そりゃ俺も蛇の生殺しみたいな状態だからイライラするけどよ!?
この侵入者アラームはかつてゲームで俺がログアウトしてる時に襲われても大丈夫なように仕掛けた物だ。このアラームはこのジオラマ家の標準装備でアラームは24時間に2回しか鳴らないけど2回は外部からの攻撃を1時間防いでくれるのだ。その間に連携している携帯にメールでお知らせがくるシステムだ。
「外部からの攻撃は大丈夫だけど攻撃される事もないよな。誰だ?」
「私がこの黒刀にて成敗致します。折角の!折角の私の楽しい生き甲斐を踏み躙りやがって!!」
「いや小雪?これから毎日居るんだからそんなに怒らないで?それに殺してしまえば背後関係が分からないよ」
「そうでした。すいません。つい熱くなりました。探してきます」
そう言って俺は小雪と反対の方のテラスの方を探す事にした。ちなみにこの侵入者アラームが鳴ると自動で鍵がかかる仕様だ。だから侵入者は隠れるくらいしかできないはずだ。
俺はしらみ潰しに一つ一つ部屋を除く。風呂場、トイレ、多目的ルーム、ゲストルーム、地下施設は指紋認証で入らないから除外して・・・俺の方は残りはこの部屋だけか。
この部屋は俺の私室だ。変なモニュメントやらオブジェクトなどを置いている。水牛の角の形をした刀や某ゲームで猛将が使ってた方天戟や波を打った刀とかだ。
カッコイイと思うだけで俺が作った武器だ。ゲーム内マネーが欲しく売ろうともして行商人に聞けば1円だったものたちだ。俺の情熱は1円だったのだ。あの日は悔しくて泣いたな。色々付加価値も付けて最強に近い武器だったんだけどな。
「おい!そこに居るのか!?」
「・・・・・・・・」
この感じ絶対に居る。真っ暗だから分かりにくいが俺のウィンチェスターコレクションの台座の前に居る・・・。
俺はニンフ剣を抜き軽く風を起こす。
ヒューーーーーーーーーー
「そこに居るのは分かっている。出てこい!命だけは助けてやる!」
「そぉこぉかぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!天誅!!!」
ドガァァァァァーーーーーーン!!
俺は目が点になり口を空けてしまう・・・。真っ暗だが分かる・・・
「俺のウィンチェスターM70とM1887が・・・・・」
「暁様申し訳ありません!!!後で必ず直しますので!」
俺は小雪の言葉が聞こえはしたが残念な気分になりつつ明かりをつけた。そこに居たのは未来の漫画やテレビで忍者と言えば思い浮かぶ服装で女が腕を押さえながら倒れていた。
「おい!女!この館は暁様の館だ!それも私と暁様が初めての夜・・・初夜を共にし逢瀬を重ねる事17分42秒・・・これからと言う時に貴様は!!!!!」
いや小雪は時間数えてたの!?しかもそんなに楽しみにしてたの!?少し怖いんだが!?
「な、何も喋る事はない!殺せ!」
「あぁ!殺してやる!お前は爪剥ぎ、舌抜き、四肢欠損、最後は猪の餌にしてやる!!」
「小雪?ストップ。そこまでしなくていいし、俺が尋問するから。すぐに戻るからベッド暖めておいてくれるかな?」
「ベッドを暖める・・・・はい!!すぐに暖めておきます!!!お待ちしてます!!!」
小雪は全速力で寝室に向かった。
「で、俺はそんなに攻撃的な事は言うつもりはないけど朝まで牢に入ってもらうから。さっきの小雪って子なんだけど感情なく残酷な事も平気でするから俺と居る時に全部話した方が君のためでもあるよ。俺は本当に殺すつもりはないから」
俺は念の為手錠をかけて地下の農園に向かう途中にある牢屋に連れて行った。見た目は牢屋だが現代のワンルームのような部屋である。ただ鉄格子ってだけだ。
「何日までも餓死しようとも喋らぬ!殺せ!」
「いや俺は俺の家で人が死んで欲しくないの。とりあえず、水と菓子パン。水は蓋を左に回して開けてパンは袋を適当に開けて食べるように。そして、この瓶の中に入ってる赤色の布を痛いところに塗って今日は寝るように!以上!」
俺は機嫌が悪い小雪の元に急ぐ。寝室に着くと小雪はスッポンポンで布団にくるまっていた。ムードもなにもありゃしないな。
「さっきの女は牢屋に入れてアカチンと水とパンを渡したよ。何者かは明日俺が聞くから」
「あんな女の事なんか放っておきましょう。暁様?私我慢できません!」
おいおい!?こんな積極的だったか!?据え膳食わぬは男の恥!
「ハァー ハァー ハァー」
気付けば俺は小雪と抱き合っていた。そりゃ現実でも程々に女は抱いてきたが小雪は別格だった。
「暁様・・・私、今が一番幸せです・・・私の我が儘に付き合わせ申し訳ありません」
「俺も今幸せかも・・・比べるつもりはないけど小雪が1番良いかも・・・何より心から安心できる・・・小雪?これからも、ずっとずっと一緒に居てくれ!」
「はい!護衛アンドロイドですから!もし暁様が帰れなかったとしてこの世界に居ても私は暁様が亡くなれば骨を私が保管し、毎日祈り壊れるまでそうします!」
「おいおい!怖い事言うなよ!?小雪は普通に暮らせよ?」
「暁様・・・愛おしい・・・」
その後俺達は3回もしてしまった。付ける物は付けてだけど。ゲーム内通貨でクソ高かったアイテム、コンド○ムの0.01ミリの距離は大切だ。
ピンポーン
うん!?なんだ!?俺は唐突に天井から聞こえた音で目が覚める。
「暁様?聞こえましたか?」
「あっ、小雪おはよう!聞こえた!ってか、あれで目が覚めた。なんなんだ!?こんなの初めてだよな!?」
「少し調べましょう」
一通り調べたが変わった事は何もなかった。台所を省いて。
「暁様!昨日消費した物が新しく補填されています!」
「え!?どういう事!?」
「そのままの意味です!見てください!この冷蔵庫の中にあったゲーム誕生3周年バースデイケーキを見てください!」
それはゲームが誕生して3周年を迎え、プレイ者みんなにただで配られたクソでかいイチゴケーキだ。このケーキはゲーム内では食べると気力、体力、怪我、病気を完全回復するチートケーキだ。言葉通り、欠損した手なども生えてくる物だ。
だが実はゲームでは欠損したりすれば切腹し、新しいキャラで話を進めた方がいい場面もある。子供ができたりしても色々制限が設けられたりするからゲーム内でもゴムは必要なんだ。いや、ゲーム内の事はもういいだろう。ここは現実だ。
「よく分からないけど復活したのならいいんじゃない?理由を探しても分からないだろう。俺がタイムスリップしたのも分からないのだから」
「そうですね。この事は私も分かりません」
「とりあえず、顔を洗ってあの女が誰か聞いてくるよ。小雪はさきさん迎えに行く準備してくれるかな?」
「分かりました。同じ暁様を好いた者通し。早く呼んであげましょう」
「うん。ありがとう」
俺は牢屋に向かう。例の女はもがいていた。
「はぁ〜。自決しようとしたのだな。残念だな。この牢屋は特殊でね?ここに入った者は寿命以外では絶対死なない牢屋なんだよ」
「う、うるさい!わけの分からん事をベラベラと!お前はなんなのだ!突如織田に現れこんな家を出したかと思えばーー」
「うんうん。今の言葉で織田じゃない事が分かったね。女の忍者か・・・。甲賀?伊賀?風魔?根来?黒脛巾組?いや、黒脛巾組はまだ後の時代か。後は・・・歩き巫女?三ツ者?」
うん!?歩き巫女の所で息が上がった感じがするな!?図星かな?カマをかけてみようか。
「あれ?歩き巫女の所で深い息とはまさか武田の間者かな?」
「違う!武田ではない!」
「へぇ〜。武田ではないと。三ツ者かな?信玄が手塩に掛けて育てたーー」
「呼び捨てにするな!!!」
「ビンゴ!武田ね。素人の俺でも分かる反応するとは忍者失格だわ」
「貴様・・・もう良い!殺せ!これ以上は喋らぬ!」
「いやだから俺の家で死なれるのはごめんだから。それにせっかくの水もパンも薬も使ってないじゃん!せめて怪我は直しな?」
「ふん!敵の施しなんぞ受けるわけない!」
「なら別にいいけど。ちなみにそちらが探ろうがこっちは武田の事いっぱい知ってるから。武田徳栄軒信玄。まだ晴信でしたっけ?甲斐源氏の嫡流にあたる武田氏第16代当主甲斐武田家第19代当主。『御旗盾無御照覧あれ』合議制なためよく使われていたらしいですね。それと裏切りもよくしていたとか?まあ、甲斐は山奥だから海を欲するため仕方ない気もするけど。上杉とは5回も戦いーー」
「待て!待て!貴様は何故そんなに知っているのだ!?貴様は何者だ!?」
「ふふふ。女は三ツ者ですか・・・」
「いやなんで小雪は知ってんの!?聞いてたの?」
「カメラで見てました。そして・・・おい!三ツ者!何故ここに来た!何故暁様の館に来た!」
だから気付けば何で小雪が尋問してるんだよ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます