狩りに行こうぜ!

 城に充てがわれた部屋は、所謂和室だ。当たり前だけど。畳っちゃ畳だがクソ硬くて寝るのも一苦労な畳だ。


 「小雪?大丈夫?」


 「私はアンドロイドなので寝なくてもかまいません。暁様が常事をお望みでしたら致す事もできます」


 「いやそりゃ〜・・・据え膳食わぬは男の恥だからな。けどここではさすがにダメだ。ジオラマの家を出せば・・・お願いしよっかな!?」


 「では楽しみにしてますね!ゲームのアンドロイドである私ですが人間みたいに作られています。子も為せますよ」


 「ブッ!いや待て!待て!子供は早い!」


 「はい。いつでも受精できますので良いタイミングで言ってください!」


 小雪よ・・・ニコニコ顔で簡単に言う事じゃないだろ!?最早アンドロイド超えて本当の人間みたいだな。


 「とりあえず疲れたから寝よう。ゲームではあの体力マックスになる布団ってある?」


 「あ、私のアバターのために一回100円のガチャを回し、確率も40%で当たりなのに20回も外した副賞品ですか?」


 いや、そこまで事細かく言わなくていいだろう!?俺のヒキが悪いみたいじゃないか!?


 「あぁ!そうだ!悪いか!?俺はアバターだろうがなんだろうが見た目は気にするんだ!同じ形の服でも色違いがあればコンプリートしたいタイプなんだよ!!」


 「クスッ!ありがとうございます!はい!どうぞ!布団です!」


 え!?笑った!?小雪が普通に笑う事なんかあったか!?リアルになったからかな?まっ、いいや。


 「うん。ありがとう!じゃあ寝るね!風呂に入ってないから気持ち悪いけどしょうがない。おやすみ!」


 「はい!おやすみなさいませ!」





 暁様の寝顔・・・・雄々しい・・・たくましいイビキ・・・寝相の悪さ・・・これがリアルなのかしら・・・。ゲームのプレイヤーの護衛として作られ無茶な行動をするプレイヤーも必ず命をかけて守らないといけないのが私達護衛戦闘アンドロイドの宿命。その命令に背いたり別行動をすればバグとして処分されるか放逐されてしまう運命。


 けど今は自由に考え自由に行動できるけど、それでも私は暁様を守りたい。暁様とまた共に戦場に行きたい!カッコイイお名前の技をまた見たい!これが好きという感情でしょうか。



 「あぁ〜!よく寝た!小雪?」


 あれ?どこに行ったんだ?ってか今何時だ?寝過ぎたのか?うん?外から何か聞こえるぞ?


 俺は充てがわれた部屋の隣の庭?の方に向かう。そこで男の人が2人、髭もじゃガチムチと線の細い優男が居て木刀で稽古をしてる感じだった。


 「あっ、暁様おはようございます!」


 「おぉ!あなた様が大橋殿ですか!?」


 「え!?あ、はい!俺が大橋暁です。あなたは?」


 「某、柴田勝家でございます」


 「拙者は丹羽長秀です」


 お!?大物だな!?柴田はイメージ通りだな。丹羽も概ねイメージと合うな。二人とも俺を批判してくると思ったが礼儀正しいな。


 「どうも。昨日?一昨日?から織田様の配下になりました。よろしくお願い致します」


 「なんのなんの!お館様が絶賛されておったぞ!」


 「そうそう。なんでも素晴らしい技を使い見た事ない物を持っておるとな?」


 「えぇ。まぁ。それで俺の事で核心的な事は聞きました?」


 「「未来から来たと?」」


 いや二人ハモるなよ!?


 「そうです。私は未来から来ました」


 「暁様?それは今しがた私からもお話しました。それで未来の剣術を見てやると言われ一合ずつ相対しましたところ私の飛ぶ斬撃を教えてくれと言われまして」


 「そ、そうだったんだ?それで教えたの?」


 「柴田様は剣術が苦手のようで槍術の技【地走り】を教えると一回でマスターしました」


 地走り(じばしり)って名前はカッコイイけどゲームの中の技だろ!?いやいやそもそも飛ぶ斬撃もゲームの中だけだろ!?何故リアルな人ができるの!?


 「大橋殿!見てくだされ!フンッ!」


 ゴォォォォォーーーーー


 うん。地走りだね。ゲームで見たやつだ。槍を相手に向け地面を擦り地面から槍の斬撃が飛ぶやつだ。


 「いやいや、柴田!待てい!大橋殿!拙者の飛ぶ斬撃も見てくだされ!ソォイ!」


 シューーーーーーーンッ!!


 うん。これも完璧だけど何で!?みんな猛者ばかりなの!?


 「「どうですかな!?」」


 いやどうですかな!?じゃねーよ!?二人とも何者なの!?もうこの二人で天下統一できんじゃねーか!?


 「大変に素晴らしいと思います」


 「いつか奥方に一本取れるようになれば一合お付き合いしていただけますか?何でも奥方を教えたのは大橋殿で奥方もかなりの修練者だが大橋殿には手も足もでないとか?」


 いやいや、逆!逆!そこまで大差はないけど俺もアンドロイドに勝てないから!!


 「もし、一本取る事ができればお願いしますね」


 こうやって言うしかないじゃん!?


 「暁様?倉庫に入っている、副賞の量産型シルフィ剣とシルフィ槍をプレゼントしたのです」


 あっ。なるほどね。だから飛ぶ斬撃と地走りか。

シルフィ剣とは簡単に言えば俺のニンフ剣の下位互換だ。風の下級精霊の力が込められてる剣と槍だ。


 俺は上級精霊ニンフその者が宿っている剣だ。性能差は明らかだ。まっ、量産型だからいいかな?どうせ1日一回無料で引ける10連ガチャのゴミだし。なんなら200本くらいずつあるんじゃないのかな?


 「そうだったんだ。柴田様?丹羽様?良ければその、二振りお使いください。偉そうに言うわけではないですが共に頂に到達しましょう」


 「おうとも!では、奥方殿。これからもご指導よろしくお願い致します」


 「はーい!柴田様は足の動きを注意ましょう!丹羽様は力みすぎぬよう注意する事です!」


 「はっ!では失礼致しまする」


 いや本当に二人の師匠になったんだ!?まあ、知り合うきっかけになったから良かったと考えるべきか。


 「大橋兵部少輔様並びに大橋左衛門尉様。朝餉をお持ちしました・・・・」


 「ありがとうございます。どうしました?」


 「い、いえ。失礼致しました。左衛門尉様は男かと思いまして、女とは知らず・・・」


 「私は大橋左衛門尉小雪。暁様の正妻です。覚えておきなさい」


 「はっ!!申し訳ございません!」


 いや正妻と強調しなくてもいいんじゃない!?


 「むず痒い呼ばれ方だな」


 「私はなんと呼ばれても気にしないですよ?さあ、せっかくなので朝餉を食べましょう」


 この朝餉だが・・・籾殻が混ざってる米に薄そうな味噌汁にたくあん、味噌の塊が少し・・・正直ガッカリだ。


 「暁様は食が進みませんか?」


 「う〜ん。贅沢は言うつもりないけどこれば続けば発狂するかも!?」


 「クスッ!ではゲームでは気力体力が上がるカツ丼でも出しますか?」


 「いや、アイテムの弁当は限りがあるからこれから温存していこうと思う。食に関しては自力で発展させていこう」


 「了解致しました!さて・・・食べ終わりましたし織田様に土地の話を言いましょうか!ジオラマの家を出し引っ越ししましょう!私が毎日暁様のお食事用意しますね!今日の夜は私がカツ丼を作りますね!」


 「え!?カツ丼作れるの!?肉は!?」


 小雪は無言で黒刀を背中に掛けニコッと笑った。言葉はなかったが俺には分かる・・・・


 『狩りに行こうぜ!!』と言われているようだ。

 

 

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