強敵 森可成との仕合い
俺は城の人に信長がどこに居るか聞いた。普通に私室で仕事をしていると。俺はその人にお願いして部屋に案内してもらった。
「うむ。入れ」
「失礼します」
部屋は板張りのこの時代のThe城!って感じの部屋だった。
「ちょうど皆を集めようと思っておった。着いて参れ」
そう言い、大きな広間に呼ばれ座って待てと言われた。すると10人程が集まり、俺と小雪は端の方に座った。
「集まったか。此度の戦は義弟の裏切りに合い失敗に終わった。じゃが、市の機転により窮地を脱した。これより織田は浅井を潰さねばならぬ」
「「「おぉぉーーーー!!!」」
「その前に新たに仕官した二人を紹介する。おい!」
いやおい!って!?名前くらい言って紹介してくれよ!?
「大橋兵部少輔暁と申します」
「その妻、大橋左衛門尉小雪と申します」
「うむ。この二人は偽りの官位ではなく、従五位下と正六位である!軽口は気を付けよ」
「「「はっ」」」
「右から、権六、丹羽、恒興、キンカ頭、犬!左は森、佐久間、堀、佐々、河尻だ」
いや二人は名前じゃなくあだ名じゃない!?可哀想なんだけど!?
「其方が大橋殿か!噂は聞いておるぞ!」
いやなんの噂!?まだ来て1日なんだけど!?
「これはこれは槍術の右に出る者は居ないと言われる森様。私達の噂なぞ大した事ないでございますよ」
「そう謙遜されるな。あの柴田殿と丹羽殿が奥方に弟子入りしたとか?ならワシも譜代の臣として大橋殿に弟子入りしようかと思いましてな?ははは!」
ははは!じゃねーし!森って森可成だろ!?こっちが弟子入りするレベルじゃねーか!?勝てるわけないだろ!?
「この者の中に何故この二人を仕える事を許すか気になっておる者も居るだろう。表に出い!可成!槍を持ってこい!大橋!貴様も刀を抜け!貴様の技見せてみろ!」
えぇぇぇぇ〜〜〜!?!?なんだって!?!?
ったく何でこんな役回りなんだよ・・・。あぁ〜あぁ〜あぁ〜・・・文官らしき人達も来たじゃねーか・・・。
「森様の槍が見れるとな!?」「中々ない事だぞ!?あまり誇らない方だ!」「お前はどっちに賭けるんだ?」「そりゃ森様だろうが!」
おい!全部聞こえてるんだよ!!人で賭け事するな!!
「寸止めだ。可成!間合いがあると過信するな。大橋!貴様は遠慮はするな。ただやり過ぎるなよ?」
またまた難しい注文か。一発大技見せて終わりにするか。
「はじめ!」
信長の掛け声が掛かった瞬間さっきまで優しい雰囲気だった森は凄いオーラが発せられた。俺は半分おちゃらけのような感じだったが俺も真剣に向き合う。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
これはヤバイな。隙がねぇ〜よ!飛ぶ斬撃を放とうものなら瞬間的に突かれそうだ。
ジリジリ ジリジリ ジリジリ
クッソ・・・俺の間合いまで入れさせてくれないと・・・。本当の修練を積んでるんだな。
「おおおおぉぉぉーーー!!!」
あっ、あれは!?確か暇つぶしにサブアカウントで朝倉家でゲームをプレイしていた時、宇佐山城の戦いでAIである森可成は上段に構え胴ががら空きになるがそれは罠で突っ込めば槍を短く持ち刀のような斬り方をするのだったよな!?
難易度普通でもかなりの強敵だったのを覚えているがまさか同じか!?いや動きも同じ・・・。なら左のガードが硬い方から一振りし、これは捨てのフェイク。本命は首のみ!行くぞ!
「ヤァァァァァーーーーー!スラッシュ!!!」
この恥ずかしい掛け声・・・本当は言わなくてもいいが仕様上全ての剣技に名前があり発声しないと発動しないというデメリットがあり恥ずかしいが俺は発声して攻撃をしている。もちろん技の名前は変更可能だ。
本来なら今出した技・・・飛ぶ斬撃ではないがこのニンフの剣 固有技 風を俺の前に出し相手の軌道を逸らす効果があるのだ。その軌道を逸らし相手が反応できない場所から打ち込む技だ。最初の技名は何かって?
それは・・・『風の精霊ニンフの名の元に集え!52階廷 風舞いの剣技 ウィンドスラッシュ!!』だ。こんなの恥ずかしくて言えないし、なんならプレイヤー対決なら発声途中にやられてしまうのだ。初期プレイヤーはここで気付く奴が多いはずだ。
俺はまたは私は何を言っているのだろうと・・・。そして負けた後、拠点に転送されるが転送されて初めて技名を変更できるとヒントが出るのだ。最早これは運営の罠とも言われている。
「グハッ・・・・」
少し強く打ち込み過ぎたかな?
俺は片足ついている森可成に刀の鞘を首に付けた。
「勝負あり!貴様の剣技は初めて見た!見事という他ない!あの上段の構えに飛び込める奴はそうはおらん!」
「いえ、私もギリギリでした。本当は手の内出すつもりはありませんでしたが、いやはやさすが森様です。汗が止まりません」
「お主らも見よ!この技を持ってして此奴はまだ上を目指そうとしておる!これが此奴が仕える事を許した理由じゃ!」
「暁様おめでとうございます!お疲れ様です!」
「小雪ありがとう。森様に手当てを。副賞の赤チンを」
そう。この赤チンこそコスパ最強な薬である。戦闘中に少し斬られたり、内出血を起こす打ち込みを打たれてもこの赤チンを塗れば一定時間経てば治るのだ。初心者プレイヤー御用達の物だ。ゲーム内のどこかの勢力にランダムで現れる行商人からのみ買えるのだ。かく言う俺も初心者の時買い溜めし、ストックを相当数してある。
ただ、骨折や病気などは治らない。だから上級者プレイヤーまたは廃人と選ばれし人しか持っていない(課金ガチャのみでしか排出されない)完全回復スプレーを使う。これを使うのは強者の証でもあるのだ。この完全回復スプレーは即座に効果が発動し寿命すらも伸ばすのだ。寿命はおよそ10年伸びると言われている物だ。
「森様お怪我をお見せください」
「すまん。いや、大橋殿は凄いな。ワシがよもや潜り込まれ尚且つ打ち込まれるとは・・・」
「森様すいません。あまりにあなた様が巨大で笑える状況じゃなかったのでつい本気を出してしまいました」
「嘘を申すな。大橋殿はまだまだ行けそうだったではないか?ワシは大橋殿の本気を見れる土俵に立ってなかった・・・ただそれだけの事・・・」
いや確かにまだまだ技はあるけどこの人も現実の人間ならかなり人間離れしてると思うよ!?だって俺が打ち込んだ刹那俺は躱せたけど蹴りを入れようとしてただろう!?常人じゃ無理だろ!?でもかなり落ち込んでるな・・・。
ゲーム内の修練道場のAI先生から言われた言葉を引用するべきか!?
「偉そうに言うつもりはありませんが、槍にも刀にも弓にも色々技があるでしょう。その技で相手を倒すのではなく本物の修練者はただの初撃、この初撃にて相手を屠る者。この初撃を完成させた者こそ、その道の頂なり」
「・・・・・確かにワシも息子に言うておる事と同じだ。技に頼る事なく槍ならばただの突き、刀ならただの薙ぎ払い。弓ならばただの一矢で相手を震え上がらせろと。その言葉は大橋殿が?」
「いえ、私の師匠の言葉です」
「一度お会いしてみたいものだ。そしてワシも良ければ稽古を付けていただきたい。この歳になり追う立場から追われる立場になり早、10年・・・再び追う立場になろうとは・・・」
いやマジで化け物かよ!?もう十分だろ!?人間やめるの!?!?残念ながら俺の師匠には会えないよ!?だって俺も会えねーもん!
「可成!手当て終われば戻ってこい!負けたからと恥ではない!此奴らは相当な場数を踏んである!ワシも相対すれば負けるであろう」
「お、お館様!?」「殿!?」
「そう騒ぐな!簡単な事じゃ!強き者が勝つ!獣でも同じじゃ!よって、ワシが浅井に勝つのは至極当然。皆の者!これからもワシに付いて来い!さすれば見た事ない世を見せてやろう!」
「「「おぉぉぉぉーーーー!!!」」」
うまく纏めたし俺も聞き入ってしまった・・・。俺が居た21世紀に到達はできないだろう。けどこの人が作る世界を見てみたい。俺はそう思った。
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