官位貰った件

 「おい!大橋!貴様これをどうやって作った!?言え!どうやって作ったのだ!?」


 「お、落ち着いてください!これは作ったのではなくてですねーー」


 「お館様?これは動くのですよ。それに敵の矢も槍すらも弾くのですよ」


 「竹中ッッッ!!!!貴様は何故それを知っておる!!?ワシより先に遊んだのかッッ!?」


 竹中さんよ・・・何故火に油を注ぐような事を言うかな・・・。


 「こちらからお入り下さい。座席に座って下さい」


 「おっ、入り口は狭いのだな・・・なんだ!?南蛮のような椅子があるぞ!?」


 椅子は分かるんだな。


 「まずは座り横の紐を・・・私がします。そのままでお待ちください」


 「大橋・・・暫し待て。年甲斐もなく興奮して喉が乾いた。竹中?水を持ってまいれ」


 「はっ」


 「いや水じゃなくてもいいならありますよ?水もありますが何がいいですか?」


 俺はインベントリーのカテゴリーの飲み物の項目を見たが、水から始まり、オレンジジュース、サイダー、コーラ、コーヒー、ミックスジュースやら酒もウイスキー、チューハイ、ビール、ワイン、焼酎、日本酒など他にもいっぱいある。


 これこそゲームの時は何に使うか分からないアイテムだったが。だって、飲んでもマイナス要素しかなかったからだ。ただ、アバターに酒を持たすとカッコいいとかはありはしたが。


 確か信長は酒に弱かったよな。コーラでも出すか。


 「コーラです。どうぞ」


 「なんじゃ?泥水をワシに飲ます気か?貴様その命要らぬと見るぞ?」


 「いやいやいや泥水じゃなくジュースですよ!私が先に飲みます!ゴグッゴグッゴグッ・・・プッハァー!美味い!あっ、すいません。普通に飲んでしまいました」


 「ふん。飲んでやるか・・・・うっ・・・これはなんだ!?口で暴れよるぞ!?それに・・ガァァァ・・・うむ。失礼をした」


 特大ゲップですね。分かります。


 「もう一杯よこせ!これは美味い!甘い!こーらと言うたか?これは良い!ワシが今まで飲んできた物で一番じゃ!」


 運営様!意味の分からないアイテムの数々ありがとうございます!今かなり役立っております!散々貢いできたハズレアイテムですがかなり良い反応でございますよ!!!


 「おい!竹中にも出してやれ!」


 「大橋殿?すまぬ。いただきましょ・・・・うっ、これは・・・」


 「なっ?美味いだろう?ワシが言うのだから間違いない!」


 いや何で信長が勝ち誇ってんの!?俺が出したコーラだけど!!?


 「貴様どこぞに・・・いや今は辞めておこう。動く事を証明してみよ!」


 「分かりました。掴まっていてくださいね?」


 中の操縦は現実世界の車と同じで簡単だ。ハンドル、アクセル、ブレーキ、ギアがあるだけだ。一応自爆スイッチなんかもあるがこれは押すつもりはない。


 「おぉぉぉぉ!!動いておる!動いておるぞ!!!」


 どんだけはしゃぐんだよ!?そりゃ運転してるから動くよ!


 「殿!!!」「大殿様!!!」「お館様!!」


 「なんだ!!これは!?敵襲じゃ!出合え!!!」


 「ふん。いい訓練じゃ。これは槍も効かぬのであろう?試しさせても良いか?」


 おっ!?初めて優しい口調になったな。


 「構いませんよ」


 「誰だ!!もののけか!!」「お館様をどこへ連れてった!?」


 ガキンッ ガキンッ バンッ ドンッ


 「クハハハハハ!良い!誠に良いぞ!確かに中はなんともないのう?実に良い!居心地まで抜群じゃ!大橋!止めろ!」


 俺はクリープで動いただけで10メートルも進んでないが止まった。


 「辞めい!ワシはここだ!」


 「おっ、お館様!!!その異形なる物は!?」


 「動いておりましたぞ!?」


 「騒ぐな!これは我が軍の新兵器だ!今、武器開発隊の頭と話しておる!静かにせい!」


 「大橋殿!おめでとうございます!織田家 武器開発隊の頭ですよ!出世でございますよ!」


 うん。なんか知らないけど勝手に俺が織田家に仕える事になったんだけど?


 「一つ聞く。貴様他にもまだあるのか?奪ったりしないから正直に言え。貴様の答えによって今後の方針が変わる」


 迷ったあげく半分の武器や乗り物を教えた。


 「武器は多数あります。このような乗り物は後5台程。後は大型クルーズ船が3隻、中型の船が10隻、軍艦及び駆逐艦が2隻。小さい一人乗りの乗り物が10台、二人で乗れる乗り物が10台あります」


 本当はバルーンやら戦闘機も2台、ヘリコプター、潜水艦、戦車もある。それに俺のとっておきの最高課金額を更新した宇宙レールガン通称【ソアラ】も一台だけある。


 このソアラは大型のロケットを発射し、宇宙空間からレーザー銃を撃つチート武器だ。実装初日に26歳時点の貯金50万円を運営に貢ぎやっと当てた物だ。嬉しかった。


 だが1週間で弱体化され発動してもエフェクトで丸分かりになり、挙げ句の果てには初期装備の盾にすら弾かれるようになり所謂・・・産廃武器になったやつだ。イベントリーにこれがあるのを確認している。


 「なんじゃ!?聞いた事ない物ばかりだな?貴様とは一度ゆるりと話がしたい。岐阜に先に戻っておけ!居を許す!そうだな・・・身分も付けてやらねばなるまい。竹中!何かあるか?」


 「そうでございますな・・・従五位下 兵部少輔 辺りはいかがですか?」


 「良いな。これで貴様に文句を言う奴も居るまい。将軍に打診しておく。そうだな・・・。おい?食い物は何かないのか?公家でも食べた事ない物だ」


 「え!?公家でも食べた事ない物ですか!?・・・ケーキ、幕の内弁当、パン、他にも色々なものがありますが・・・」


 「もう良い。すぐに動かねばならぬ。おい一度出るぞ!」


 「あの・・・・」


 「大橋殿?少しお待ちなさい。きっと悪いようにはなりませんよ」


 「誰ぞある!今日の予定は全て取りやめじゃ!」


 「え!?ですが将軍との饗応がありまするが・・・」


 「いや、待てよ・・・。うむ。ちょうど良い!饗応は予定通り行う!将軍にそう伝えよ!」


 「はっ!」


 「という事じゃ。昼飯は貴様がそのけーきやらなんとかべんとうやらを出せい!ワシが味見してやる!」


 究極の我が儘だな。後世に残ったのは案外間違いじゃないんだな。


 「貴様の事ぞ!返事はッッ!!?」


 「は、はい!分かりました!!!」


 「下がれ!」


 

 「大橋殿!やりましたな!お館様は興奮のあまり素性を聞いてきませんでしたな?」


 「確かにそうですけど・・・俺官位とか興味ないんですけど・・・」


 「そう言われますな?従五位下ですが中々貰えないのですぞ?それに銭もお館様が工面してくれるおつもりです。有り難くいただいておきなさい」


 「はぁ〜。分かりました。それで将軍と飯を食べるのですよね?その飯を俺が出せばいいんですか?」


 「その通りですな。将軍の好みとか分かりますか?」


 「私が明智殿に聞いておきます。暫し失礼をば」


 竹中は明智の所に向かい、俺は小雪が居る入り口に向かう。


 「ごめん!待たせたね」


 「大丈夫です。暁様?それでどうなりましたか?滅ぼしますか?」


 「いや滅ぼさないから!」


 サラリと怖い事言う小雪だな!?


 「なんか官位貰えるみたい。それで将軍の義昭が食べる飯を用意しろと言われた。アイテムに色々あったよね?」


 「まさか・・・今日初めて出会いいきなり官位ですか!?おめでとうございます!」


 「うん?まあありがとう。俺はパッとしないけど」


 「官位はそうそう貰える物ではございませんよ?」


 「竹中さんもそう言ってたな」


 「言葉悪く言えば将軍は織田の傀儡ですからね。それに反発して色々事を起こしますが彼が動くと全て失敗するのが通説です」


 散々な言われ様・・・義昭とは会った事ないけど可哀想だ。


 「確かこの後は浅井攻めだったよね?」


 「私達の暦で言えば今日が5月1日です。6月から姉川の戦いが始まります」


 「う〜ん。参加するかは分からないけどとりあえず岐阜に家を構えていいって言われたから持ち運びできる模型住居あったよね?あれを出そうと思う」


 「分かりました。とりあえず私はインベントリーから将軍義昭が好みそうな物をピックアップします」


 「分かった。助かるよ。権限を譲渡するから、今後俺ができる事全てを小雪もできるようにするからよろしく頼むね?正妻にもなってくれるんでしょ?」


 「・・・・・ありがとうございます。命に代えてもお守りしますね」


 最低な男と分かっているが、さきさんもだしこの小雪もとても愛おしく思う。アンドロイドに何を思っているのかと思うがこれが今の正直な気持ちだ。

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