課金ガチャ一回5000円のバイク

 「竹中様?その辺にしてみては!?」


 「いや待て待て!もう少し待てば敵が来るやもしれませぬぞ!!」


 グロイ・・・。血の惨劇とまでは言わないかもしれないが狂気だ。敵が可哀想に見える・・・。


 「貴様等はなんだと言うのだ・・・」


 「ほう。このぴすとるを喰らって生きておりますか・・・名を聞こう」


 「朝倉景紀・・・」


 おい!?ここで朝倉姓が出るのか!?この人は知らないけど朝倉一族か!?てか、殺しまくってるけど俺ってばどうしたんだよ!?なんで平気なんだよ!?


 まさか!?この意味不明な500円で必ず貰えた【平静のお守り】のせいか!?確かゲームでは狂乱状態や状態異常攻撃や威圧に耐えるとかだったと思うけど・・・・。試しに外してみるか・・・。


 お守りを外した瞬間俺は味わった事ない圧を感じ、さっき吐いたばかりだがまたとてつもない強力な吐き気が襲ってきて、自然と涙が溢れた。


 「大橋殿!?どうなされた!?具合でも悪いのか!?私にくれたこの薬で治らぬのか!?」


 「グスン・・・いえ、すいません。このような場面に初めて出くわしまして・・・」


 「では大橋殿の未来とやらはとても平和な世界なのですな」


 「貴様等・・・は・・何を言って・・・いる?未来・・・だと?」


 「そうそう。この大橋殿は未来からこられた方です。あなたに撃った鉄砲・・・見た事ないでしょう」


 「なに世迷い事を・・言っている・・・だが・・・必ず我が殿が貴様等に正義の鉄槌を喰らわすだろう。先に地獄で待ってるぞ」


 ブシュッ


 「満身創痍の中朝倉景紀見事なり。首級頂戴致しまする」


 俺は竹中が首を切ってる所を見て更に吐いてしまい過呼吸になってしまう・・・。ヤバイ・・・息が・・・お守りを・・・


 「大橋殿!!!誠、大丈夫であるか!?うん?なんですか!?」


 「・・・りを・・・このお守りを・・・」


 「このお守りを付けよと!?分かった!」


 「ハァーハァーハァー助かった・・・。500円に助けられた・・・」


 「うん?そのお守りで治ったと!?」


 「はい。少しまだ吐き気はありますがこれは大切なお守りです。恐怖とかにいいのです!そんな事より首持って帰るのですか!?俺の装甲車では嫌ですよ!?呪われそう・・・」


 「何を言っている!?祟りなんぞ出てもまた成敗すれば宜しい!見えないようにするから帰りましょうぞ!」


 俺はこれ以上敵が来て同じ事を繰り返したくないから竹中に言われた道をゆっくり進んだ。獣道・・・とも言えないような道だが俺は気にせず運転した。


 この装甲車の能力は道なき道を作る装甲車と言われていて走破性は途轍もなく高いのだ。ただ、スピードは40キロまでしかでないが。燃料は水だ。現実にこの乗り物があればかなり、需要があるだろうがこれは本来はゲームの乗り物だ。


 「大橋殿!このそうこうしゃなる物は良いな!!乗り心地も良い!馬なんかよりよっぽど良い!ははは!」


 「上機嫌なところ申し訳ないですがそろそろ燃料がなくなりそうです。水が補給できれば良いのですが・・・」


 「朽木家に言い水を貰いましょう。それに返り血や汗なんかも拭いましょう」


 「後どのくらいですか?」


 「後、5里ほどだと思います。さすが池田殿です。道中道に迷わぬよう紐を結んでいるでしょう?」


 いや5里はどのくらいだ!?それに紐だと!?俺は言われた方角に走らせてるだけだから分からないけど竹中はこの装甲車の中から見えてるのか!?


 「おっと!次はこの横の道ですが・・・さすがにこのそうこうしゃなる物では通れませんね・・・」


 俺は外に出て確認するが確かに装甲車では厳しいな。ここまでゲームで使えた物があるしインベントリーも頭で唱えると項目が見えるから収納も使えるよな!?


 「収納!」


 「な、な、なんと!?そうこうしゃなる物が消えた!?どうなってる!?」


 よし。ゲームで使えた事はとりああずできるし、能力もそのままだな。後は帰る方法が分かればいいんだが・・・。竹中さんに説明を・・・面倒くせ〜な。


 「さっき言ったゲームで見えない私だけの空間に収納できるのですよ。重さも感じず自在に出せますよ。こうやって・・・」


 そう。このゲーム出す時はインベントリーの出す項目をタップするだけだが収納する時はちゃんと発声しないと収納できないのだ。運営にこの声一つが要らないと何回かメールしたが答えは・・・無視だった。


 「おぉぉぉ!!誠、浮世離れしておりまするな!」


 「まあ、もしここが現実・・・いや失礼しました。これを使えるのは多分俺だけでしょうね。もし俺みたいや奴が他にも居たら分かりませんが」


 「いや居ないでしょうな。私は、それなりに情報を大事と思い、草を使い他国にも精通しておりまするが大橋殿のような者は聞いた事がない。貴殿のような者が居ればたちまち広まるでしょう」


 「そうですか。なら俺は一人か・・・」


 「そう言いなさんな!お館様に聞かぬと分かりませぬが私が面倒みましょう!まずは朽木家に向かいましょう」


 「分かりました。ありがとうございます。ではここからはこれで行きましょう」


 そう言い、俺は二つ目の乗り物原付きバイクを出した。タイヤが大きく転けにくいと定評のある原付きバイクだ。ちなみに課金ガチャ一回5000円の物だ。


 本当は時速250キロ出ると言われる戦国時代には似合わないレース用のバイクが出るガチャだったが副賞が10分の1でこの原付きが当たるガチャで俺はこの原付きバイクが10台ある。俺が何故これだけ持っているのかは察してほしい。そして本命は持っていない。出なかったのとお金が無かったからだ!


 そうそう。ゲームで使えた乗り物の燃料は全て水だ。世界観が壊れないようにガソリンは出さないと運営が言ってたが十分ぶっ壊れた戦国ゲームだったと思う。まあそれに俺は今助けられてるが。


 「今度はなんでしょうか!?」


 「こうやってここを押しエンジンを付けると・・・」


 ブォーーーーーン!


 「うっうわ!!」


 盛大に転けたな。


 「いや、失礼。少々この竹中驚いてしまいました」


 「いえ。大丈夫です。こうやって跨いで右のハンドルを捻るだけです。慣れないと転けて危ないでーー」


 「大橋殿!!!これは楽しいですな!そうこうしゃなる物より人馬一体のようで良いですな!!」


 うん。初めて乗るはずなのに竹中は乗りこなしてるね。


 「上手です!一応念の為に脛当て、ヘルメットお願いします!」


 「うむ。では向かいましょうぞ!ハイヤッ!」


 いや、最後の掛け声はなんだよ!?馬じゃねーぞ!?


 それから30分程さっきより更に悪くなった道を走り、俺は何回かバランスを崩しかけたが竹中は普通に乗りこなし朽木谷と言われる場所の一際大きな・・・いやかなり大きな日本家屋に着いた。木下や池田、明智なんかも見える。


 「おぉぉぉぉ!!!半兵衛!!!!!無事であったか!!それにそれはなんじゃ!?!?」


 「其方も・・・・・無事でなによりじゃ!それで首尾は?」


 「はっ。朝倉景紀の首級を。この大橋暁殿が討ち取りました」


 オレ討ち取ってないよ!?


 「なに!?朝倉景紀殿をか!?」


 「うん?あなたは?」


 「いやすまぬ。朽木谷を治めておる、朽木元綱である」


 「失礼致しました。織田家家臣 木下家支配内 竹中半兵衛と申します」


 「隣の者は?そしてその跨っておる物は!?」


 「えっと・・・えっと・・・」


 「この者はワシの弟、幼き時に離れて暮らしたおったが今はワシの与力で共にしておる。名を暁(あかつき)と申す。暁?挨拶しなさい」


 いや嘘八百だろ!?服装こそ課金服でこの時代でも合ってると思うが、思いっきり背中の家紋は島津の十字家紋だぞ!?これは後ですぐに着替えよう。竹中の助け舟。ありがたい。乗らない手はないな。

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