第21話 風の姉弟と生霊⑧

普通に話せてはいるが、まだ先程のダメージは消えていない。


勢いで最短ルートにしただけの無計画ノープラン。これからどうしよう。ホント何も思いつかない。だって異世界なんだもん。……それで終わるわけがない。

「……おまえが何とかするって言ったんだろ」

「言ったけど! 言ったけど明らかに出来る方法が穴から直接攻撃しか浮かばなくて……」

「それだとおまえだけが戦うことになるだろ」

「だから悩んでるんじゃん! 」

「なんで俺たちを頼らないんだよ。もう一蓮托生だろ」

「だって! 三人の能力わからないんだもん! 」

「視れる力があるのにか? 」

フリックくんを恨めしそうに睨む。

「あの、マーチ姉さま言ってましたよね? 視てしまうことになるって」

頷く。そう、細かい操作が出来ないために。生まれてから、若しくは生まれる前まで遡ってまるで走馬灯のようにその人の人生そのものを視てしまうことになる。必要な部分だけを切り取ることが出来ないんだ。だから人間相手に使うのは躊躇われる。異形やモンスターならそういった情報が細かく出てくるわけではない。人間のように詰まってないから。人間は情報過多過ぎる。視たくないものまで視えてしまう。

「ならば、話をしたらいい。本人の見解だけで正確なデータとしては未熟だがないよりはよくないか? 」

殿下が優しく提案してくれた。うん、分かってる。わたしの交渉ネゴシエーションは人間相手に破綻するほどの極度の人見知りだ。こうやってナチュラルに話せているが、事実かなり緊張している。

「あたし、人とコミュニケーション取るの苦手だから時間掛けて人となりを観察しなきゃならなくて……」

「は? 」

勝手ゴーイングマイウェイをしておいて信じられないと思うのは仕方ない。これはその、牽制や威嚇的なにかなので……。

「俺から話そうか。そうだな、メインは剣だ。魔法は火の魔法が使えるから炎を纏った魔剣で戦っているよ。まぁ、制御し切れなくてたまに剣が溶けたりしてしまうけれど」

苦笑いをしている。殿下の獲物は大剣の部類だ。これが扱えるなら大丈夫ではあるのかな。溶けるって太陽並に高温が出ちゃったりするのかな。

「ボ、ボクは風魔法しか使えません。それに攻撃になるスキルはないんですけど」

サポート系ってことかな。確かにあまり前衛をして欲しくない。

「俺は弓が得意で、雷の魔法を使える」

怒ったら雷落ちそうではあるわね。

「前衛後衛、サポートでバランスはいい? 」

「確かに。一緒に戦うことはないけどぬ」

なら───。

「目的地まではあたしもサポートに回る形がいいのかな」

梨翔ほどじゃないけど、索敵で敵の動きを読めるし。正直殺したりはあまりしたくない。でもこの世界は生死に関してはシビアなんだろうな。やらなきゃやられる。

取り敢えず、前進はしなくちゃならない。城までは警戒しながら向かうシンプルなプランで行くしかないだろう。

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