第18話 お歯黒さま⑦

「?! 」

人影の正体とは───。

「あの人は……まさか、そんな……」

固まっている間にその人は素早く沢渡の背後に周り、に彼を転倒させた。

「あのはやはり───! 」

興奮したように駆け出す丈琉に訳が分からず、慌ててついていくキャスリン。

Sさん! 」

「へあ? 」

猿渡が誘導されたことに気が付かず、誰もいないと思っていたのか、彼はビックリして振り返った。

「その声は……川口か」

「え? え? え? ……エェエェエェ?! そのお声は島袋次長……え? え……S、あ……」

丈琉は頭を抱えた。目の前にいるのは金髪オールバックの前時代的な髪形をした島袋だった。

「……なんてことでしょう。まさか我々の上官が憧れの特別捜査官Sさんだったなんて。──全く予想できませんでした」

最後はすくっと立ち上がり、スンッとなった。

「おまえはそういうやつだよ。不本意だが、資料提供された門外不出の手本チュートリアルの中の俺は終始無言だったからな。バレないようにするのは容易だったぞ」

「でも、引退されたあなたが何故こちらへ? 」

「あきらか緊急事態だろうが。連絡もなしにサポートのおまえらが櫛田さんのとこから現場入りしてたんだから。様子見に来たらこうだよ」

「お手数てかずお掛けして……すみません」

今まで一度だって来たことは無かった。

「まぁ、ちょっと違和感があったからな、提供側に。だったよ」

気絶している沢渡を蹴りつける。

「咲華楽に渡りをつけたのはこの野郎だったんだよ」

「ど、どういうことですか?! 」

島袋が調べた概要はこうだ。

あまりに詳細に語るMouTube運営を名乗る存在。たまたまを装ってはいたが、バレないようにするならもう少しフワッとした話ならよかった。興味を持つような単語を並べたのが違和感の原因。真智は立場が悪いことが原因で気がつけなかった。蓋を開けて見たら確かにMouTubeの運営ではあったものの、2ヶ月前に新規採用されたばかりの新人運営。国家権力職権乱用でデータを読み込んでみたら、そいつのヤラセだったことが発覚。通報を捏造し、MouTuberの4人も似たような手口で誘導したことがわかった。現地人なら知っていて当たり前。それが裏目に出たということだ。誘導招かれたと分かって慌てて様子を見に行ったら……最初に戻る。

「こいつ、能力者みたいだぞ」

「え? 」

能力者を見分ける能力がある人はいない。消去法や実際使っているところを見るか、見た人の噂話やタレコミが主だったもの。だから中々見つけられないのだ。

「たまにいるんだよ、発現した能力で悪さする奴がさ。こいつみたいにな」

「……タイミングよく、真智さんと梨翔さんを迎えたこともですか? 」

「何らかの感知能力があるんだろうな」

明かされた情報が答え合わせかのようにマッチングする。

「確かに、やけにお喋りで話術には長けて無さそうでした。聞いてないことまでベラベラ話す方でした」

手っ取り早く自分たちを始末するには持ってこいなわけである。異形が関わるなら行かねばならない。そこまで把握してたということは───。

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