第11話 風の姉弟と生霊③

に合わせる。の土俵に強制的に上がらせ、霊視チューニングしたらこちらのカチカク……?』

「よく出来ました。勝ち確は勝ち確定。よし、次はどちらか解決したら連絡しましょう? すぐ行動しなくちゃ。じゃねえ」

通話を切った。

「よし! 早速……」

振り返るとしょんぼりとした2人。

「キャスリン……」

「リン姉さま……」

はぁ、めんどくさい。

「これがあればいつでも話せるんだから、まずはリーシャルちゃんの救出からよ! シャキッとなさい! 」

あたしは2人に喝を入れた。

「リーファルくんは直々に招待されたもおなじなのよ! 馬車を用意してサクッと行くわよ! 」

「……残念ながらすぐには行けないみたいだぞ」

え?

「キャスリン!! 」

下から叫ぶ声がした。知らない声だけど誰だろう?

「『義兄上あにうえ』だよ」

「兄? 」

「キャスリンの兄上、オスカー王太子殿下だ」

姫にお兄さんいたんだ。

「病み上がりなのになんでそこにいるんだよ! 」

ご立腹だな、ありゃ。使えるかな。

「風よ、下まで運んで」

ふわりと優しく風が包んで浮かばせてくれる。3人まとめてゆっくりと下ろしてくれた。

「ありがとう」

「キャスリン! 大丈夫なのか? 記憶が戻ったのか? 」

心配そうに駆け寄ってくる。

「……あの人を味方にしたら楽だぞ」

フリックくんの悪魔の囁きが聞こえた。使える人材を抱こめば確率が上がる寸法ね。

「体は大丈夫です、お兄様……。実は……」

あたしがキャスリンではないこと、リーシャルちゃんが誘拐されて現場まできたことを出来るだけ子細に話した。

「……だから無理するなって」

相当落ち込んでいる。でもわかる。この人は唯一真っ当な人だって。

「姫の魂はあたしの体にいます。リーシャルちゃんを救えたあと、また連絡をする予定です。その時ご一緒して頂くために同行をお願いできませんか? 」

「キャスリンは、戻れるのか? 」

「まだ分かりません。あたしが帰れたらきっと帰れると信じています」

「あ、すまない。君も帰りたいよな。妹の事ばかりで申し訳なかった」

「いえ」

2人に爪の垢煎じて飲ませてやってくれ。

「エアダール帝国まではどれくらい掛かりますか? 」

「エアダール……帝国?! 」

「馬車だと10日は掛かります」

「マデリンちゃんのレイスが瞬で攫ったんだからやっぱ空間こじ開けていく? いや、それだとあたししかいけないな。あたしだけ入ってどっか穴開けて出て、馬車を転移テレポートさせる? 」

「……なんだ、その無茶苦茶なやり方は」

「なんの話しをしているんだ? 」

ゴリ押しが日常だったので出来る範囲で話しているつもりだけど。

転移テレポートの使い方が滅茶苦茶です……」

「出来れば視界の範囲内が望ましいけど、あたしの場所に持ってくるくらいなら行けるわよ」

「マーチ殿は賢者か大魔道士なのか? 」

この感じ、知ってる。真人たちもすごい顔してみてくるから。時短を考えたんだけどなあ。

「むー、じゃあ、風の力で馬車を浮かせて飛ばして進むってのは……」

「精霊さんにそんな負担させられません」

えー、10日も揺られたら掛かりすぎじゃん?

出発までに話し合いは難航しそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る