3 あの娘


「王女様ーっ!」


 屈託くったくのない、高いような低いような声が響く。声のもとを探るまでもなく、居並んだ人々からひとつ高い頭が天井近くまで手を上げて振り回しながら、満面の笑みでこちらに向かっている。

 おぉぅ。どうしたらいいの?




 舌が固まっている間に、みるみるそれ・・は近づいてくる。大きい。


「お初にお目もじさせていただきまっすル! 朝には親しく微笑みかけてくだすって、感激です! お姫ちゃんだったんですね! あたくし、ヤルミラです![属性(1d6️⃣・3回)]【4️⃣】【5️⃣】【6️⃣】の魔法で高等部からお世話になります、よろしくお願いしまっすル!」

1:光 2:地 3:火 4:風 5:水 6:闇

初期親愛度(1d100、1d100)【巨女→姫:62】【姫→巨女:47】



 はるか高みからテンションが浴びせかけられて、ひたすら戸惑うしかない。大きい。こわい。


「そ、そ、そう、なんだぁー。…えっと、風と、水と闇? てっきり、光とかだと思ってたよぉ。…よろしく、ね…」




「慮外者! 下がれ!」


 いまさらになってエマが追いついてきた、巨美女ヤルミラさんに棍棒を突きつけ、怒号を発する。ちなみに棍棒は、先端が射出されて爆発する仕込み付きの暗器なのです。

 問題の巨女はその戦闘メイドより頭1つ大きくて、わたくしは巨女より頭2つ半も小さい。仕込み棍棒の威力も効かなさそう。大丈夫?


「姫様、遅くなりまして申し訳ありません、[謎の人物(1d6️⃣)]の説得に手間取りまして、駆けつけることが遅れましたこと、万死に…」


1: 生徒会長ヴィンツェンツ

2: 学長

3: 王太子兄様

4: 暗殺者

5: マルツェル弟王子

6: 振り直し

【5️⃣】



「【マルツェル】、なんで居るの、何やってるのあの子。それで、ど、どうしたの?」


「2人して、物陰から姫様の晴れ姿をお伺いしていて…」


「…私、新入生代表でもないし、ただ座ってただけなのに?」


「そんなぁ、姫ちゃん様はそこだけ差し込む優しい闇がわだかまったように美しく暗く……」

下種ゲスは黙って控えていろ。裁くぞ」



「あのぅ、エマ。それで、マルツェルは、その後どうしたの?」


「どうした、ですか?そりゃ、中等部の式典に戻ったのではないでしょうか」


「…あー、よかったぁ。入学生代表で挨拶してたのは(1d6️⃣)さんだったけれど、次は私もなれるよう頑張るね。」


[新入生代表(1d6️⃣)]

1: 生徒会長ヴィンツェンツの弟くん

2: 正王妃の実家のいとこちゃん

3: 母の実家のいとこくん

4: マルツェル母実家のいとこくん

5: 宰相家期待の坊っちゃん

6: 巨美女ヤルミラ

【2️⃣】



「新入生代表は一度きりですよ、姫様。しかしせっかくなので生徒会長を目指しましょう。

 えー、さっきの代表はアベスコヴァ公爵家の【ジョフィエ=アベスコヴァ嬢】でしたね。ほどほどの才媛であらせられるとか。入学前試験の筆記・論述が満点だった姫様にかなうはずもないのに」


「私はそのかわり口述試問が((地頭値1×1d20)+(政治値3×10) 最大100)12【42点】、ダンスが((体力値1×1d20)+(体力値1×10) 最大100)3【13点】だったんだからしょうがないよ。

 あ、ジョフィエさんもクラスメイトになるのかしら…」


「なんの公爵家ごとき、エマに始末をお任せください!」

「そうっスよ! お姫ちゃん、あたくしも力になりまっすル!」

「平民が図に乗るな!」


「あの」


「メイドさんよりいざというときはクラスメイトっす!」

「王女と公爵令嬢の間で貴様に何ができるっていうんだ」

「別に仕事を取ったりしまっすリませンから同盟くらいに受け取ってもらえませんかね」


「あの」


「信用ならんと言っているのだ」

「それはお互いさまっすル! あたくしもお姫ちゃんを1人で放ったらかしてたメイドさんが信用ならん!」


「別にジョフィエさんと喧嘩とかしないから…」

「うるさい!


 ……あ、姫様!、違いますシャールカ様、あの女に言ったのでありまして。違う、違いまする…じゃなくて、あぁシャールカ様、愚かな私を鞭打ってください!」




 話のはずみで、つい私の鼻先に噛みつく勢いで凄んできたエマが、私のびっくりした顔を見てスッと表情を無くして、あっという間に自分のベルトをスルスルと外して私の手に持ち手?を握らせる。これは、ベルトじゃない。三つ又の棘付きムチだ。それで、背中を向けてひざまずいている。

 このムチで、その背中を打て、って? たくさんの新入生が見ている公衆の面前で? エマは、私をどういうキャラだと思っているの?


 うぅ、周囲の目線が怖い。……この場をしのぐためには、(1d6️⃣ 偶数は○奇数は×)3️⃣【判断ミス】


「えいっ!」

 周囲からの視線に耐えられなくなって、一瞬でも早くこの場から抜けるために思い切って、我ながらへなちょこな動作でムチを振ってしまう。


 ヘチュン。ムチらしくない音がする。


「ひゃぁっ!」

 その鞭の先は器用にエマを避けて、床を跳ねて、私の足先を打つ。



「お姫ちゃん!」「姫様!」

 周囲の群衆が喧騒に包まれる。勢いは無さすぎたのに、それでも足の甲から血が出る。信じられないほどノータイムで目から涙が吹き出す。

 

「ふぅぅ~っ…。」


「姫様っ、姫様っ、そんなつもりでは……医者!御典医殿を!」

「メイドさん、それじゃ遅い。あたくしがやります!」






――――――――――――


ヤルミラさんの容姿・追加ダイス1d6️⃣


髪色3️⃣3️⃣ 1:金 2:茶 3:銀 4:緑 5:青 6:黒

  くすみのないピカピカの銀髪


髪型1️⃣1️⃣ 1:ショート 2:おさげ 3:ウェーブ 

     4:結い上げ 5:ツイン 6:ロング

  おかっぱ頭


目色4️⃣  1:茶 2:青 3:緑 4:赤 5:金 6:虹色

  赤色の瞳

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