2 魔法学園


 この国では魔法を使える人間が生まれる。どういう時にどういう理由でそういう子供ができるのか、建国以前から400年間の統計を見ても確たる理由はないように見えるけれど、血筋は唯一見える大きな要素だ。


 そういうわけで、多くの貴族とわずかな平民の子弟が魔法を学ぶ学園が、この国にはある。

 魔法の私学校は認められていない。そういう地下組織は時々摘発されている。それはさておき。




 仮御殿の玄関先で弟マルツェルとは右と左に別れて、歩いて学舎を目指します。体を鍛えるためなんだって。


 特別に馬車を用意してもらえるほど重要な王族とは、わたくしは見なしてもらえていない。それで中等部まではウマ、も怖いからロバをエマに引いてもらって登校していたけれど、歩くよりマシとはいえ恥ずかしかった。

 疲れ果てて背を丸め、ロバに横乗りして運ばれている姿はいかにも年寄りじみていて、級友から陰で〝太王太后ババア〟とあだ名を付けられていたらしいことはショックだったものです。嫌な記憶!

 運動。せめて歩いて、若返らねば。


 朝はまだ早いけれど、休憩地点が3箇所用意されてるんだって。できる限りではすごく過保護にしてくれる。

 ありがたいのは確かなこと。人生、ままならないことばっかりだ。

 それを考えると、同じ時間の出発ではマルツェルには朝早すぎたんじゃないかな。まぁ、あの子も3年生だからいろいろあるんだろう。



   🎲



 息も絶え絶えになりつつ、杖をついてエマに支えてもらいながら学舎に到着。低かった太陽もけっこう高く昇ってしまった。

 中等部よりも近くなったはずなんだけれど、これを毎日やるのは初日から気が重いものですね。


 水分補給のし過ぎでお腹がタポタポです。目が回ってきました。

 え、ここが最終休憩ポイント? さすがエマ、私のことがわかってるね。


 道端にどこからともなく椅子とテーブルとお茶が設置されている。エマ以外にも協力者がいるらしい。姿は見たことがなくて、エマに聞いても何も教えてくれない。謎です。

 いや、お茶は、もういいかな。でも、息が切れて口の中が乾いて。ひと口だけ! あぁ、飲み干しちゃった。学舎についたらまずトイレに案内してもらおう。




 微妙な尿意を感じつつも道端でまったりしていると、普通に歩いている生徒さんたちをかき分けつつ、すごい勢いで走ってくる女の子がひとり。

(1d6️⃣×10+120)6️⃣【180】cmの巨体を弾ませて、(地味<1d6️⃣<美貌)6️⃣【太陽が彼女だけを選んで照らしているかのような美貌】を流れる汗に濡らしながら「遅刻!遅刻!」なんて叫んで駆けている。すごい迫力だ。

 学校指定のハイヒールの靴って、走れるのね。私も、こうやって鍛えたらいつか走れるかしら。


 じゃ、なくて、エマ。あんなに急がないと、もう遅刻しそうなの?


「いいえ。おそらく彼女は平民なのでしょう。貴族とは別の手続きが必要だと聞いています。姫様はお構いになりませぬよう。」



 エマは人目があると私を〝姫様〟と呼ぶし、敬語も崩さない。いつでも子供の頃みたいに普通に接してほしいのだけれど、そうもいかないことは私にだってわかる。

 要領よく振る舞えれば抜け道も前例もあるのに、自分の口下手が恨めしい。

 これは私の火魔法ではいかんともし難いものだけれど、もしかしたら私の特殊魔法〝ダイス魔法〟でなら、「喋りながら産まれてきて新生児が話芸で産室を笑いに包んだという伝説の〝口先のアカシア〟」の3分の1くらいは魔法の力で喋れるようになる可能性も絶対に無いとはいえないんじゃないかしら。


 いや、これは思考が乱れすぎています、今必要なアレじゃない。

 そう、私たちも登校の旅を再開しましょう!



   🎲



 大講堂に人々が集まっている。私の中等部の同級生は、病欠中に2年生に進級、先輩になっちゃった。そちらの方に目をやると〝口先のアカシア〟が目ざとく見つけてくれて手を振ってくれている。こちらも手を振り返すと、早速彼女がそれをネタにして周囲に笑いを振りまいてる。相変わらず賑やかだなぁ。


 私は、新入生。周りにいる新しい同級生たちも緊張してる。あ、後ろの方にあの大美人もいる。目立つなぁ。すごいなぁ。




 薄暗い大講堂に重めの空気が流れるなか、正面の演壇が照らされた。


「生徒会会長、ヴィンツェンツ・ミュラー!」のアナウンスと共に、華麗な装いの男性が演壇に上がる。

会長は(1d6️⃣×10+140)5️⃣【190】cmの堂々たる体躯に、(地味<1d6️⃣<美貌)6️⃣【神話の神を踏みつけるのがお似合いの自ら輝くようなルックス】をそなえた完璧人間と私でさえ聞いている。3年生だけど同い年、我が身を振り返って泣けてくるね。


 ミュラー家は(弱<1d6️⃣<強)2️⃣【地方の騎士】に過ぎないけれど、彼がこのまま完璧であれば伯爵家の養子になって侯爵家に婿入りすることが内定しているらしい。

 でも、私のダイス魔法の詳細が早々に判明して「国外に嫁がせるにはもったいない有用さ」が証明されて、なおかつ王太子兄上の立場が盤石だったら彼が急遽、私のお婿さんになる可能性だってあるらしい。


 ……ちょっと冗談は勘弁して欲しい。あんな、太陽みたいな人の隣に栗のイガみたいな私を夫婦として並べるようなはずかしめは甘受できないわ。

 学業はのんびりしましょうかね。




 堂々とした会長の祝辞の後、学園長(普通<1d6️⃣<謎)3️⃣ からの挨拶。


 学園長は【老男性と幼女の双頭をもつ人間】。有名人なので私は何度か見たことがある。新入生の下級貴族や平民さんたちからは息を呑む音、抑えきれない悲鳴も上がる。それも知ってる人には慣れた反応です。

 学園長も、よせばいいのに重たい場の他では幼女面の方でばかりスピーチする主義。気持ち悪いったらない。




「みんなぁーっ、本学の、生徒たる誇りと自覚を持って「埃っぽいのはかなわんなぁ」おじいちゃん頭、ウッサイ! えー、しっかり勉学にマイセンするように!「マイセンゆうたらお皿やがな、邁進、マイッちんグ、」ウッゼ! オマエラ、わかったか! 以上!」


 一人二役のコントをこなしつつ、スピーチを終える。根は常識人なのだから普通にやればいいのに、お子様たちを楽しませようとする心根が残念だし、それでお子らをただドン引きさせていても無駄に我が道を行く心根も残念さんですね。

 今度、お父様に会うときがあったら学園長の交代を打診しよう。




 入学式を終えて、決められた教室への移動。

 廊下ではメイドとも一緒にいられるので、エマを探してキョロキョロしている間に接近してくる人がいる!


[謎の人物(1d6️⃣)]

1: 生徒会長ヴィンツェンツ

2: 学長

3: 王太子兄様

4: 暗殺者

5: マルツェル弟王子

6: 巨美女


【6️⃣】







――――――――――――


シャールカ姫様の容姿・追加ダイス1d6️⃣


髪色6️⃣3️⃣ 1:金 2:茶 3:銀 4:緑 5:青 6:黒

  黒から銀のグラデ


髪型5️⃣3️⃣ 1:ショート 2:おさげ 3:ウェーブ 

     4:結い上げ 5:ツイン 6:ロング

  自然なウェーブが掛かったツインテール


目色1️⃣  1:茶 2:青 3:緑 4:赤 5:金 6:虹色

  茶色の瞳



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