第6話 血の儀式

宙太ちゅうた、戻りなさい!ここに来てはいけない!」


 星恋せいれんの叫びが森の静寂を切り裂き、宙太の胸に深い不安を刻み込む。だが、その警告が届く間もなく、冷たい気配が彼の背後に迫った。振り返ると、銀色の仮面をつけた男が立っていた。仮面には星雲を模した複雑な模様が刻まれ、その隙間から覗く金色の瞳が宙太の内面を見透かすように光っていた。


「星恋、儀式を続けろ。この少年の命が惜しいのならな。」


 その冷たい声に、星恋の手が震える。彼女の手に握られたナイフの刃が、淡い月光を反射して微かに輝いている。


 宙太は何が起こっているのか理解する暇もなく仮面の男に捕らえられ、見えない力に包まれた。仮面の男は低く呪文を唱え、その声に呼応するかのように空間が歪み始める。


「フェーズロック・バリア(※1参照)、起動。」


 男の言葉とともに、宙太の愛犬シエルが低い唸り声を上げて仮面の男に飛びかかる。しかし、その勇気も無情に弾き飛ばされ、見えないバリアがシエルを囲んだ。バリアの表面にはエネルギー粒子が踊り、シエルの爪が引っ掻くたびに波紋が広がるが、すぐに元の形状を取り戻す。


「このバリアは、次元間位相(※2参照)を利用したものだ。お前のような下等生物には突破は不可能だ。」


 仮面の男の冷笑に、宙太は激しい無力感に苛まれた。


 星恋は震える手でナイフを構え、弟を救うための選択に苦しむ。そして、彼女の覚悟の瞬間が訪れた。ナイフを手のひらに押し当て、赤い血をほこらに捧げる。血が大地に滴り落ちた瞬間、祠から青白い光が放たれ、地面が震えた。


「これが…祠の目覚め…?」


 地面を駆け巡る亀裂と共に、仮面の男が満足げに呟く。


「素晴らしい、これで我らの計画は成就する。」


 宙太の周囲で空間が激しく歪み、彼の視界は暗転した。そして次の瞬間、彼は目の前に広がる未知の光景を目にして息を呑む。それは星雲のようにきらめく世界でありながら、どこか懐かしい感覚を伴っていた。


 彼の視界が一瞬暗くなり、次の瞬間、宙太は目の前に広がる未知の光景を目にして息を呑んだ。


「これから、何が…起きるんだ…?」


 *****************


 ※注釈

 1. フェーズロック・バリア (Phase Lock Barrier):

 →高次元物理学に基づき、異なる位相(フェーズ)の空間を重ね合わせることで生成される防御壁。通常の物理的攻撃を無効化し、内部と外部のエネルギー交流を遮断する。

 2. 次元間位相 (Interdimensional Phase):

 → 次元間のエネルギーの状態を指し、異なる次元が重なり合う際に発生する振動数や位相(フェーズ)の干渉を利用する理論。この技術は物語の中で、仮面の男が異次元からの力を引き出し、物理的な攻撃を超越する手段として使用される。

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