第3話 一生懸命

 『今、曲がれよ!』と心の中で思ったが前の軽自動車は赤信号で停車している。運転しているのはおそらく私よりはかなり年上のおじいさんである。自動車の運転はそんなに難しい事ではないと思うが判断にかかる時間は年代によりかなり差があるという事は体感している。分かっていても流れに乗って運転して欲しいと考えるのは私だけの我儘では無いと…

 私だって分かっているのだ。皆が必要に駆られて目的地に向かっている事を。 

 何故、そんなに急いでいるのか?何故、そんなにイライラしてしまうのか?仕事のせいにしてしまえばそれで説明はついてしまうのだけれど、違う理由があるといつも気持ちの片隅に引っかかるのである。『狭い日本、そんなに急いで何処へ行く?』そんな交通標語が有った。まさにその通りだ。多少急いだところで到着時間の差は微微たるものだ。自身が狭い心なのだから急ぐ必要はないのかも…

 生きて行くということは大変な事だ。自分では気付かない分岐点をいつの間にか通り過ぎて分岐点を過ぎた事を自覚せずに進んでいることの方が大多数なんだろう。

 一生懸命に生きている全ての人がそれぞれお互い寛容になりたいと願いながら今日もまたイライラする事があるのでしょうね。

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