第2話 当り屋
仕事中、段ボールを抱えて小走りに団地街にいた時だった。軽い衝撃を腕に感じて立ち止まった時、黄色い虫が私の左側を飛び去っていた。スズメバチだったと思う。「おい!待て!」と待ってもらったわけでは無いのでもしかしたら他の何かかもしれないが…私の抱えていた段ボールに正面衝突してそのまま彼の仕事を全うする為に行ってしまったのだろう。滅多に経験する事が無いであろう出来事に胸が高鳴った。秋は結構、単独で仕事をしている彼らを多く見かけるがアタックされる事はそうそうないであろう。
これもそうだが、少し被害の出る当り屋にも遭った事がある。夜勤の倉庫でアルバイトをしていた時だった。そこそこ蒸し暑い夏だった。段ボールを抱えて小走りに倉庫内を移動中、突然鼻に痛みを感じ段ボールを放り投げて右手で自分の鼻を確認すると確実に何者かが感じられた。それをつかみ取るとメスのカブト虫が目の前に現れた。6本の足をゆっくり右往左往して元気だった。私は鼻の痛みを抱えながら倉庫の近くの雑木林へ投げた。彼女が掴まる場所は他に幾らでもあるだろうに、何故私の鼻?という疑問はあるが、これもまた胸が高鳴った事を覚えている。少しの間の痛みも覚えている。
虫との思い出はまだあるけれど、私は嫌いな方ではないので彼らの短い時間がそれぞれにきちんと全う出来ていたらいいなと思っている。
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