第2話 私1

あまりに暑いと動く気もしない。薄暗く、出来るだけしのぎやすい木陰で休む。

お腹が減ればすぐに管を差し込んで、腹は満たされる。

しかし、かすかに心にざわめきを感じる。腰に下げた袋。この袋は大事な物。大切な物が入っているのだ。何か足りない気がするが涼しくなるまで、もう一眠りしよう。


葉のざわめきで目が覚める。周囲は黄味を帯初め、ちょうど活動しやすい暑さだ。

普段私達の活動を支える食事は、いつも同じ場所にあり熱もなく良い匂いもしない。安心できる休息の場でもある。


しかし心のざわめきに押されて飛び立つ。今から探すのは私達に必要な物。命がなくなろうと向かい集めたくなる衝動。

引き寄せられる感覚に飛び込むと、もう私達がたくさん集まっていた。

なんでこんなに引き寄せられるのか?食用とは違う、体の奥底からの欲求。


集めたい。ここから。採取しなければ。

採取にちょうど良い場所を探して飛び回る。私とぶつかりかける。


その時、キーンと低い音がかすめていく。風圧は少ないが、大きな影がよぎる。私はくるくると飛行を変えながら離れる。

なんだったんだろう。


再び近寄ろうとすると、今までの私達とは違う羽音が迫る。避けるかと思えばそのままぶつかってくる。その勢いにバランスが崩れながらも、相手に支えられてなんとか空中に身を保つ。

驚きに相手の顔を見ると、私達だが私ではない。ふさふさと豊かな髪をしている。そして私の体をしっかりと掴んだまま言う。

「渡したい物がある。受け取って。」

私の大事な袋に入れられたそれは、私の欲していた物だった。

みたされる。これでいい。


しかし、このまま不安定な飛行をしていては危ない。離れよう。

相手と最後にニッコリと笑い合い、手が離れようとした瞬間。

再び、キーンという低い音、微かな風圧、押し付けられる体、パチっという音、明るい火花、動かない私。全ては同時に終わった。

香ばしい匂いがする。私の好きな匂いじゃない。


少し離れた所に落ちた相手は、すぐに起きあがろうとしていたが、空から下がってきた大きな白っぽい物の下になり見えなくなった。


次に私の上に迫ってくる。見上げると、先ほどの相手の輪郭や一部がくっきりと張り付いているのが見てとれた。

そのまま周囲は暗くなり、相手と私は重なる。


あぁ、私達の羽音が聞こえる。





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