飛べ、残せ

やってみる

第1話 私達

飛ぶ能力は、生まれつきだ。


気づけば、水中をたゆたい日光に揺らぎ、影がさせば暗闇に逃げた。食べ物は周りに漂う物がある。辺りには同じような私がいる。


そんな日々から、ある時水中に居るのが苦しくなり体が窮屈に感じた。

早く、上へ。

釣り上げられるように水面へ。今まで天井だった所へ体がぽかりと浮く。

体の更なる窮屈さに耐えられず、力をこめると

急にするりと解放される。

「とべ、早く」


次の瞬間には、今まで感じたことのない推力に引き上げられていた。

ここは?

下を見ると、今までと違う長い手足。

背中からは軽快な音が聞こえてくる。

しばらくは現状を把握する為、思いのままに動いてみる。


すごい。ここは水中の比ではなく広く、私も自由に動ける。水中では眠っていたようだ。飛んでいる。

だが次第に疲れを感じてくる。どうしたものかと壁にぶつかりそうになると、そのまま壁に垂直にとどまれた。どうやら手足の先に秘密がありそうだ。

体と頭の混乱が収まってくると、次はお腹が空いてきた。

何か食べる物は?どこにある?

水中では、周りに食べ物が漂っていて、いつでものんびりと食べられた。気楽な物だった。

とりあえず飛び立つと、草むらの陰に心ひかれる。

食べれる。食べたい。

草の茎にとりつく。そして体の動くままに、首に下がっていた筒を茎に差し込む。草から液体が吸い出される。あぁ、美味しい。これからの食事はこれなんだと思う。


食欲が満たされて落ち着くと、改めて自分の姿が目に入る。

ほっそりと長い手足。腰には長い布、ジャバラ構造になっているようだ。さらに長い2本の紐は常に風に揺らめいている。

先ほど食事に使った管はしなやかに曲がるが、先は鋭い。つなぎ目やボタンがあり、何か動かせる仕組みがありそうだ。


水中にいた頃がぼんやりと夢のように思い出される。今は目が覚めたような感じだ。何をすればいいのかわからないけど、はっきりと強い衝動。

あっちだ。あちらに行け。

私は飛び立った。


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