王城への帰路③

 アンデッドの集団を掃除仕切った後。

 地図を見てアンデッドが進行していた方角にある村の位置を確認してそちらに向かい、その道中で馬車を襲っていた山賊を薙ぎ払って暗躍しようとしていた魔族の残党を蹂躙し、到着した村で山賊に襲われていた馬車と再会して次の行き先が王城のある街に近い村ということなので、そこまで護衛をしてくれということなので馬車に積まれていた剣四本を報酬に馬車に乗り、そうして歩きならば三週間週間前後程あった王城付近までへの道のりを十日程度に短縮することになった。


 なお俺たちは村の中に用が無かったので入り口付近に到着次第馬車を降りて、報酬としてミスリル製の剣二本に鉄剣二本と数回分の保存食を受け取って王城への移動を改めて再開することにした。


 そして今


「随分と多いな...去年確か残党の一匹すら残らず殺し尽くさなかったか?」

「殺し尽くしたはずだがなぁ...ふぅむ、何やら面倒なことを引き起こそうとしているのかもしれん。それも上位魔族以上の実力を有している奴が」

「……面倒だな」

「あぁ、本当にな」


 王城のある街が視界に捉えられそうで捉えられないぐらいの場所にある森の中で、集会しているかのように屯していた魔族の集団を皆殺しにしていた。


 文字通りの皆殺し、生きている魔族が一匹として残っていないのか草の根を掻き分けて探して全部殺した。

 おおよその数ではあるが五十、これといった指揮官が存在しない魔族の集まりが平均して六匹程度であるというのから何処かに指揮官はいるのだろうというのは推測が出来る。


 だが今こうして殺した奴らの中にはそれらしき存在がいなかったので、どこか別の場所に奴らを指揮している魔族がいるのは確実なんだが...実に面倒極まる。理由としてはこの手の事を考える魔族は特定の場所に滞在していないだろうし、なんだったら人間に化けて生活していたりする。


 それに指揮をしている奴が一匹ではなく複数存在している場合だと十数箇所で似たような集団がいるだろうし、指揮官一匹を殺して散開させられないだろうから完全に対処し切るのに時間が掛かる。


「探すか?」

「二人でか? 無理だな、この手の狡猾な奴らは簡単に逃げるぞ。それよりも報告を上げてしまった方が...騎士団に連絡を入れろ。通常より多くの魔族の集団を見つけた、皆殺しにしたが指揮官はいなかった、魔王軍幹部出現に相当する被害が出るとでも言えば動かざるを得ないだろう。俺が王城に行って報告を上げている間にだな、個別に順番に行っても対応が遅れる可能性があるしな」

「人海戦術ということか、分かった。指揮権は何処に置く?」

「騎士団に置け。俺やお前の命令に全員が全員従うということはないだろう、騎士団長かその補佐官あるいは第二第三騎士隊長辺りに押し付けろ」

「分かった。範囲はどうする?」

「そっちで相談しろ。騎士団から何人動かせるのかも分らんだろうし優先するべき場所の認識というのも俺やお前のものとは異なっているだろうからな。相談するなり押し付けなりすればいい、どうせ報告が終わればこっちも動くことになるからな」

「なるほど...他に連絡する場所はあるか?」

「不要だ」


 ということで、魔族の捜索は騎士団に押し付けることにする。二人で草の根を掻き分けながら蹂躙して回りながら探すよりも騎士団を動かして探させた方が効率がいい、俺たちとは違って特段個別に顔が割れているというわけでもないから逃げられることはないだろうしな。それで見つけて殺せれば御の字、報告が上がらずに帰還者も無ければその地点に指揮官がいるのは確実ということで向かえばいい。


 それに俺たちは俺たちで個別に動いて殺して回ればいい。騎士団が集団規模で動く関係上そこまで遠くに行けないのだと想定すれば、俺たちは遠方から囲い込むように探して殺せば手っ取り早いだろうし手間も掛からない。

 まぁ勇者じゃなくなったというのに何故こうまでするのかと言われれば、見つけて関わってしまったのだから最後まで全うするべきだろうしあとついでに魔王軍の連中は吐き気がする程に邪悪なので俺の精神安定的な側面も含めて殺しておく必要がある。


 あと騎士団にしか連絡を入れない。


 人海戦術という側面だけで考えるのならば魔法連合、教会、冒険者ギルドにも連絡を入れるべきなのだろうが、騎士団も含めて我の強い連中ばかりだから協力は出来ないだろうしその状態で集団が動いたところで混乱してそこを襲われるだけ。

 だから目下一番信頼が出来て尚且つ動かしやすい騎士団にだけ連絡を入れる。

 まぁ、騎士団側が人員を増やすために冒険者ギルドに話を通すというのであればそこは止めない、本人の選択でしかないし状況を知る人間がその方が良いと判断したのならばそれが正解なのだろうからな。


「うむ。分かった...しかし意外だな」

「なにがだ?」

「勇者ではなくなったのだから、こうして自力で動かないと思っていたからな。考えて人を動かしてその上で自分まで動くことを視野に入れるとはな」

「まぁ、関わってしまったからな。それに魔族は気に入らん、魔王軍も気に入らん、俺の視界と活動領域に入ってくるのならば俺は殺すだけだ」

「そうか...ちなみに関わるなと言われたらどうする?」

「そうだな...その時はその時だ。適当に隠れ潜んでいそうな場所を一箇所決めて、後はその方向に移動して道中接敵したから殺したとすればいい。まぁ関わるなと言われたのだから態々報告する必要もないから念のための策だがな」

「ふぅむ...そうならないように願っておくか」

「そうしておけ」


 あくまで最悪を想定した結果の話だからな。起こらなければ何の問題もないし、そもそもファナが報告をしに行った時点でそうはならないだろうと思うがな。


 まぁ、そんな想定の話は捨て置くとしよう。それ以上に上位魔族以上の奴が集団を形成して放置していてそれが複数個所で発生している可能性があるというのはさっさと報告しておかないと、受け入れられる受け入れられないどちらにしろ動くのが後手になれば被害が拡大する可能性が大きいしな。


「ゆっくり向かう暇が無くなった。行くぞ」

「分かった。此処からならば道は分かる、離れたらそのまま置いて行ってくれ。その場合に合流が難しそうであれば騎士団に報告を上げておく」

「あぁ...合流が必要そうであれば訓練場で待っている、そうでなければ俺は王城を抜けて人の目に付かない何処か...路地裏だな。人気の薄い路地裏にいるからお前の方の用事が終わって日中であるならば路地裏で合流しよう。夜は基本外にいるから探すな」

「分かった、任せてくれ」

「頼むぞ」


 ファナに諸々の指示と俺の行動指針を伝えて、それから足下に広がっている魔族共の残骸を踏み砕いてから移動を始める。

 ここまで移動してきた時のようにゆっくりと歩いてではなく、周辺に影響が出ないように力を加減しながら走っていく。取り敢えず森を出るまではファナに速度を合わせつつ...森を抜け出したのであっちだと指差しで伝えながら力を込めて走る。力を込め過ぎると地面が抉れたり、砕けたり、弾けたりするので程々に力を入れて確かめながら走っていく。


「じゃあ、先に行くぞ」

「分かった、後でな」

「あぁ、後で」


 感覚を掴んだのでファナに声を掛けてから一気に走り出す。力の込め方の感覚さえ掴めば地面だのの周辺に影響を出さずに走れるし、その気になれば空を駆け回るぐらいなら出来ないことはないんだがそこまでの距離ではないので地面の上を走り抜けていく。


 道中すれ違う魔物に関しては辻斬りのように八分割してその場に転がして、山賊に関しては勢いを緩めることなく走る速度をそのままにするために蹴りとラリアットで蹴散らす。


 あと二時間もあれば到着出来るだろうから、このまま行ければ日が沈む前に報告を終えられそうではある。


 当初の予定より少しばかし早く到着出来そうだが、まぁ寄り道をした分そういうことはしていない公爵の馬車の方が先に着いているだろうから報告は円滑に進められるだろう。




 ※※※※※※※※


 備考、開始時点からの主人公周りの時系列


 魔王軍幹部討伐&勇者の資格剥奪→治療等で一ヵ月ど経過→公爵の街を出て王城への道出発(同時期に公爵馬車出発)→一日後アンデッドの集団と遭遇&馬車の救助→救助した馬車と合流&護衛依頼受諾→十日間馬車の護衛を行いながら移動して王城付近の街に到着→一日後魔族の集団を発見&殲滅。


 公爵の街から王城までの距離は150キロ程度。


 公爵の馬車は護衛期間の半ばぐらいで到着。


 プロローグoutsideはその直後、大体護衛期間終了ぐらいに行われた出来事。

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