第6話 彩華への心配

「もう訳わかんないよ!」


私はもうどうすればいいか分かんなかった。頭が真っ白だった。

そして、私の目には涙が浮かんだ。泣いた顔は見せられなくって、床を見ていたら私のスカートに水滴が垂れた。涙がにじむ。


「二人して何なの?私のことを心配して。」

「彩華、落ち着いて!別にあなたのことを心配したい訳じゃないの。」

「じゃあ、なんで心配してるのよ!」


私の中には、悲しみと苦しみと怒りが入り混じっていた。


「彩華が、これからどうしていくか気になっただけだって!」

「東さん、とりあえず、一回保健室に行って来たら?保健室で休憩しておいで」


そう言われた私は無言で先生についていった。

涙を拭きながら。どうしても涙は止まらなかった。


「最近、何かあったの?」


優しく先生は、尋ねてくれた。

でも、答えることはできなかった。


「自分が怖がっていることや不安なことがあったら、何でもいいから保健の先生にしゃべっておいで。そして、落ち着いたら、戻っておいで。次の授業の先生には私から言っておくから。」


その優しい言葉に私は小さく「うん。」とだけ返事をした。


*****


5限目のチャイムが鳴った。


「はあ、何やってんだ私。」


そうぼやくと、、、


「体調大丈夫?」


突然、優しい声が聞こえた。保健の先生だ。


「はい。何とか」

「うん。じゃあよかった。」

「何を聞いても、返事しないから、意識でもなくなったのかと思った」

「あ、すいません。最近、友達と揉め事がありまして」

「あー。あるよね。高校生。私もたくさんしたわ。喧嘩。友達とね。」


気軽に話しかけてくれて、うれしかった。先生の声に安心する。


「え?そうなんですか?」

「うん。した。いっぱいした。数えきれないかも。」

「高校生はね。するよ。喧嘩ぐらい。喧嘩して、学んで、将来につながる。そうやって人は成長するんだよ」


なんか人生について話されたような気がしたけど、なんだか不安や怒りが収まった気がする。


「ちょっとは疲れ取れた?」

「はい。」


先生の話は面白かった。なんでっ自分が怒っていたかなんて今でもわかんない。でも、気持ちは落ち着いた。


「助かりました。私は、どうして怒っていたのでしょう?」

「それは、分かりません。でも、あなたが何かに不安を抱いていたことには間違ないと思います」

「はい。ありがとうございます」


そう言って、私は、教室に戻り授業を受けた。


「大丈夫ですか?」


授業の先生が私が入った途端、話しかけてきた。


「え?あ、はい…大丈夫です…」


また、心配された。されたくないのに。

まあ、でも、今は何も考えずとりあえず、いつもどおり授業を受けよう。

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1年後、最後の愛を誓った 華村牡丹 @minori-enananosi

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