第38話




「3ヶ月前に引っ越したらしいって聞いたわよ?」


「3ヶ月、前?」


「えぇ」






どういうことだろうか。

急いで大家さんに電話することにした。


この時間では迷惑かもしれないが、帰る場所がないのは流石に困る。



数コールののちに大家さんが出てくれた。








『はいよ…だれー?』


「あ…の、209号室の綴です」


『え?綴さん?何か忘れ物?』


「いえ…。あ、あの、3ヶ月前に、私、引き払いましたか?」


『何言ってるのよ〜。そうよ、あなた、引っ越したでしょう?

今はもう別な人が入ってるわよ。

何か忘れ物があったなら今日確認しておくけど…』


「あ…いえ、朝早くから、すみませんでした」


『いいのよいいのよ〜』


「あの…もう一ついいですか?」


『いいよ』


「あの、荷物とかって、誰か引取りに来ましたか?」


『スーツを着たむきむきなお兄さんが持って行ったわよ?』


「そう、ですか…」





そのあとお礼と謝罪の言葉を口にして電話を切った。


青い顔をしている私を、中森が心配そうに覗き込んでくる。









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