第29話
「流舞」
「はい」
「前に会ったことあるの、知らねぇだろ」
「……えっ」
思わずバッと貴都を見る。
クックッと面白そうに笑っている。
すぐさま考えるが、貴都と一致する人物は記憶にない。
「覚えてねぇだろーな。
っていうか、覚えてるわけねぇ」
そっと私の頭を撫でて、左頬にその手を添えられる。
その手は暖かくて、心地いい。
温かい眼差しで見つめられる。
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