第18話



「私の知り合いは、子供を産むことができない身体です」


「え…?」


「でも、……その知り合いは、そう言う身体であることを隠してなくて、むしろ、……それで苦しんでる人のために演説もしているんですよ。


すごいですよね。


私には、できない、です…」





胸を張って壇上で話す知り合いの姿が、脳裏に浮かんだ。





「旦那さんも、その知り合いも幸せそうですよ。


2人で、ゆっくり歳をとるのだと。


お互いに愛おしくてたまらないという瞳で見つめあっているんです。


私は子供を産める身体ですし、恋人がいたこともあるし、友人がいたこともあった。


それでも、満たされないし、愛せないし、愛を知る以前に、恋人や友達どころか家族さえ、信じられなかった」





樹に近づいてしゃがみ、その綺麗な泣き顔を見上げた。







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