第17話
「私、…には、愛が、………わからないです」
何か感じたのか、樹は黙って私を見る。
「コップいっぱいの、愛情をもらって育ちました。
コップから溢れるほど愛されて、育ちました。
でも、どんなにもらったって、私の心はこのコップと同じくらい、満たされないどころか、愛されていると感じることもできなくて」
ほんの少しだけコップに残こしていた水を口に含んで飲んだ。
視線を、樹に戻す。
「私には、愛がわかりません。
………だ、だから、樹さんが、心から愛する人のために流しているその涙が、羨ましい」
樹は、ハっと自分の目に手をやる。
ぽろぽろと止まらない涙を、その手が受け止める。
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