第9話



「あ、の……ぁ、……えっ、と…」



ご飯は、ほとんど食べられなかった。

箸が止まったことに気づいたのか、男性は私をソファーに移動させた。




「……俺は清水しみず貴都たかと

あんた、なんて呼べばいい?」



「ぁ…ぇ…あ、の、…」






男性──貴都がそっと私の左手を両手に包む。

ゆっくりでいい、落ち着けと声をかけてくれる。





「……あ、の…つ、つづり……」


「綴?」


「つ、綴、る、……るま」


「るま?どんな字?」


「な、流れる、に、……舞うで、…流舞」







貴都はメモ用紙に私の名前を書き付ける。







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