第3話
──花時雨。
桜咲く、美しい春の雨。
春物の薄着に膝丈のスカーチョとピンク色のブラウス。
髪は、しばらく切りに行っていないせいで
今は、雨に濡れてぺったりと肌に張り付いている。
そんな私がいる場所は、街角の人が行き交う駅。
その隅の壁に寄りかかったまま、曇天を見上げる。
いつからそうしていたかは、覚えていない。
きっかけがあったわけでもない。
行きたい店や食べたいものがあってきたわけでもなく、ただそこに立っていた。
訝しげにこちらをチラチラ見てくる人もいれば、声をかけてくる人もいる。
しかし、なにも返さずに空を見ている私を見て何か感じたのか、逃げるように去っていく。
気づけば、もう夕暮れ時で薄暗くなった。
帰ろうかと思って足を踏み出そうとしたが、その動作さえ億劫で、けっきょくしゃがみこんでしまった。
それでも、空を見ていた。
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