第三十五話 なので、キメラ先生さまをお呼びしたのでございますぅ♡ つまりぃ、キメラ先生さまに揉んで戴いて、それをデッサンするのが宜しいのではと♡

 ―― 確かに、扉ページのカラーは一縷いちる女史の言うように、土下座させられた正面から見あげての睨みは絵になる。

 となれば、次のページにお尻からの絵はキャッチーだろう。

 しかも、いきなりエロいがアップでくれば読者受けも良さそうだ。

 そして、俺がイメトレに夢中で視線をにロックしたままだったのを董乃とうのにすっぱ抜かれたのだった。


「会長ってば、もしかして……旦那さまに、じっくり、見られて感じちゃいましたあ?」


「ば、ばか、ばか、ばか~っ!?……こ、は違うかr…………はうっ!?」

 見事にいたるが自爆した瞬間だった!



 それはともかく、俺は右脳内に構築され始めた冒頭二ページの構想を形にする為に、部屋隅に片してあったパイプ椅子を先ほどの位置に(つまり、洸の尻の先に)置いて坐り、イメトレを再開した。

 右脳をフル活用した状況下での俺の左脳は、ほぼ、条件反射でしか反応しない。

 なので、董乃が隣にパイプ椅子を並べて、俺の口元に食べ物を差しだすのを事務的に咥え、咀嚼し、飲み込んでいった。


 それを暫く繰り返していたのだが、たぶん董乃が一口では大き過ぎる鯖の照り焼きを俺の口に押し込んできた。

「はぐぅ!?……けふっ、こふっ!?」

 軽く咳き込んで左脳が目覚めた俺が董乃を睨むと、


すこおし、おっきかった、か・し・ら・あ?」


 白々しく言いやがりました(笑)。

 なので、まだ箸で摘まんでいた鯖の照り焼きに食らいつき、口腔に取り込んだ一口サイズのそれを董乃に口移ししたのだった。


「ふふふ♡……旦那さまのお味がしますわあ♡」


 ―― はい、俺の負けです。

「(い、いちゃ、いちゃ、しおってえっ!?)」

 『全裸土下座のきみ』から、心中のボヤキが駄々洩れてきたのだが。

 まあ、俺も董乃も完スルーしたのだった(笑)。


 ―― そして、授業終了のチャイムを聞いて、俺は椅子から立ちあがり……

「ありがとう、な♡……ちゅっ♡」

 感謝を籠めて洸の尻に、キスを捧げたのだった。


「ばっ!?……ど、どこに、キスしたんだよぅ!?……へ、変態、助平、死ね、死ね…いや、殺す~~~うっ!?」


 見れば洸の尻の下辺りに小さな水たm……い、いや、見なかったコトにしようっ!?




 生徒会室を出たトコロで、今度は秀流ひずるからLINEが入った。

 今日は大忙しもてもてだなあ(笑)。

 俺はさっさとスタジオに戻って先ほど右脳に構築したネームを絵に起こしたいんだがあ?


 何でもWEB雑誌の『K楽天』1月号(WEB版は発売月表示なので1月1日発売だ)に16ページ貰えてネームは完成したのだが、見て貰えないか……とのコト。

 1月号なら俺と同じ締切だな。

 まだ、時間的には余裕がありそうだ。

 同じ『エロマンガ』描きだし(いや、そもそも同じ『漫研』だった(笑))少し見てヤルか。


 んで、『漫研』部室の扉をノック(以前、ノックもせずに開けたら『絹を引き裂くような悲鳴』の歓迎を受けたので(笑))したのだが……


 ―― 氷


「はいぃ!?」

「『氷』と言ったら、氷上ひかみ先輩の、『上』でしょうがっ!?」

「ああ、成るほど、かあ(笑)」


 ―― 氷?


 え?、もっかいヤルの?(笑)

 メンドイ女だ(笑)。


 ―― 上(笑)。


 やっと開いた扉の向こうに居たのは、95センチ(自称)Hカップ(実際はGカップ)の〝チビ巨乳〟こと、お下げ髪の小柄な美少女(二回生の)一文字いちもんじ 一栞いちかだった。


 ―― って、言うか~あ……何で『符牒』まで使って開いた扉の前で丸だしなんだよっ(笑)。


 ―― こいつも、残念美少女に追加だなっ!


 まあ、どうせ秀流のモデルをやってたんだろうが。

 そして、部屋の中では秀流まで上半身裸で貧乳を〝手ブラ〟で隠してるんだがっ!?


 ―― こいつも、残念美少女入りけってーっ(笑)。


 氷上ひかみ 秀流ひずるは、〝氷の麗人〟という二つ名を持つ我が学園の漫研所属、いや部長であり、ペンネーム『ひずポン』としてWマガジン社のウエブ雑誌の『K楽天』にのエロマンガを描いている……まあ、二つの意味で『同期』だ。

 因みに、83センチBカップのである。

 因みに²(2乗にじょう)、何でも学園でトップクラスの眼鏡美少女だが、言い寄る男子を【氷の一睨み】で撃退するトコロから付いただそうだ。


「何で俺が来るのにオッパイ丸だしなワケっ?」

「だ、だって、デッサンしてたから……」

「いや、それは見れば判るが…」

「そ、そんなに…み、みりゅなっ!?」

「……………………(だったら、何か着ろよ!)」


「まあ、まあ、たかがおっぱいくらいで騒ぐコトでもありませんし……キメラ先生、粗茶ですが…」


 以前は大騒ぎした女が、相変わらすのまま、水筒から湯飲みにお茶を注いで差しだしてくる。

 そのたび、ぷるん、ぷるるん、揺れている。

 非常に目に宜しい光景である(笑)。


「で?……どこを見て欲しいんだ?」

「お、おっぱいは……み、見るな!」

 ―― だから、何か着ろよ!


 秀流が片手で両方のオッパイを〝手ブラ〟で隠したまま、PCの画面を切り替えた。

 ―― 成る程、こういう時は貧乳も便利だな。

「いまあ……モブくん、失礼なコト、考えなかった?」

(何故、判るっ!?)

 俺は首を左右に振って否定したのであるが。


 そして、秀流が示した下書きカットは……

「この左のだったら、一栞をモデルにしたら無理があるのでは?」

 そのキャラが秀流ばりのだったからだ。

「なので、キメラ先生をお呼びしたのでございますぅ♡」

「いや、イミフなんだが?」


「つまりぃ、キメラ先生に揉んで戴いて、それをデッサンするのが宜しいのではと♡」


「は、はいぃ!?」

 秀流を見ると、

「………………」

 頬を染めて微かに頷いたんだが?



            【つづく】

※ 「²(2乗にじょう)」の処は「環境依存文字」ですので文字化けしていたら申し訳ありません。因みにわたしのスマホでは表示されました。

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