第三十話 過って一世を風靡したアニメ『犬のホームズ』に対抗しようと企画されたのが『猫の黄門さま』というアニメであります…彼の長寿ドラマ+擬猫化で柳の下を狙って見事コケた幻のアニメでございました(大嘘)

「ちょ、ちょっと、失礼……」

 スマホを掴んで寝室に走る俺の背後で……

「女ね」

「女ですね」

「Kだな」

「K先輩ですね」

 くそぅ、何故バレる?



 寝室に入り扉を閉めて花楓かえでからの電話にでる。

おっそいっ!』

 いきなり怒られた(笑)。

「ゴメン、どうしたの?」

『えっと……今日って、暇?』


「ああ……………………っと、ちょっと……し、仕事で…」


『(今の……ア、ヤ、シ、イ)……お、お仕事なら、仕方ないね……』

「んと?」

『暇だったら……あ、遊びに行こうか、なんて、ね……残念っ!』

「あ、明日のお昼に……あ、会えるし…」


『そうだけどぉ……(まさか、女が居るんじゃないわよね?)』


 鋭い(笑)……って言うか、心の声が駄々洩れてるんだけどぅ?

『土曜日キャンセルになってぇ、二週間二人きりで会ってないじゃん(最近、〝きすみん〟の様子も変だしぃ……あの氷の女王氷上 秀流もアヤシイしぃ)』

「そ、そうだった、かな?」

「そ、う、で、すっ!(いや、あのちっこいおっぱい娘一文字 一栞もアヤシイわね?)」


 えっと、心の声、駄々洩れたまんまなんですがあっ!?

 まあ、今日の二人は標的になってないか?


「(そういえば、こないだ教室まで呼びにきた二回生……あのも美少女よね?……なんで、イケメンでもないのに、モブちぃの周りに美少女ばっか集まるのよぉ?)」

「わ、悪かったなあ!」

「え!?……なにが?」


 ヤバっ!?、心の声に返事してた(笑)。

「そ、そろそろ仕事に戻らないと……」

「あ、そうよね…じゃ、また明日学園で…ん、ちゅっ、♡」


 ちょ、ちょ、ちょ、待て、待てぇ~~~っ!?

 い、今の…キ、キス…かっ!?

 俺が固まっていると……


「……………………モブちぃ?…お返しの、ちゅー、は?」


 花楓から催促が……

「えっと、俺も…す、するの?」

「と・う・ぜ・んっ!」

「えっと、あの……」

「は・や・くぅ♡」

「えっと、その……ええいっ、ちゅっ、♡」


「もおぉ!?…『ええいっ、ちゅっ、♡』って、なによぉ(笑)……まあ、モブちぃじゃ、そんなモンよね(笑)」


 笑い声と共に電話は切れたのだった。

 何だか、恋人同士みたいで…は、恥ずいんだけどう(笑)。



「『ええいっ、ちゅっ、♡』とはっ(笑)」

「『ええいっ、ちゅっ、♡』ですか(笑)」


 ―― な、何で二人して盗み聞きしてるのさっ!?

 寝室の扉を細く開いて二人が覗いて居りました(笑)。


 見ると二人ともオッパイは丸だしのままだが、副会長はブルマを装着し直していた。

 やれ、やれだ(笑)。

 が、そのまま三人掛けソファーに連行され二人の間に坐らされて些か居心地が悪い。

 しかも、会長が更なる爆弾を投下したのだった。


「なんでも、次回のミッションは『モブっちの、ちゅー、のレベルあげ』だそうだが、前倒しで?」

「ちょ、待てぇ!?」

「あたしはウエルカムだけど、副会長董乃は、初ちゅー、だよね?……止めとく?」

「全然大丈夫でございます♡」

「俺と董乃とうのって、こないだ初めて会ったんだよね?」

「いえ、一年半前にお会いしております!」

「え?、いつ?、どこで?」


「語るも涙、聞くも涙の、わたくしの身の上……ベン、ベン!」


 えっ?、また始まるの?……長くならないと良いんだけどぅ(笑)。



「母上さまのご厚意でこの学園に籍を置いたわたくし……ベン、ベン!

 しかし、中々クラスに馴染めずを囲っておりました……ベン!

 そんなある日の事、クラスメイトたちがの話題で盛りあがっていたのでございます……ベン!

 なんでも誰にでも懐いて、構ってオーラを垂れ流すという、その猫の名前を『ハチベエ』と言う……ベン、ベン!


 過って一世を風靡したアニメに『犬のホームズ』がございました……ベン、ベン!

 それに対抗しようと企画されたのが『猫の黄門さま』というアニメ( ※ 末尾に注釈あり)であります……ベン!

 彼の長寿ドラマ+擬化……で柳の下を狙って見事コケた幻のアニメではございますう……ベン!

 その『うっかり八兵衛』役の猫キャラに似ていると付けられたのが『ハチベエ』でありました……ベン、ベン!


 この誰にでもなハチベエを介すれば、ボッチなわたくしでもクラスメイトの輪の中に入れるかも、と愚考したのでございました……ベン!

 しかし、わたくし何故だか猫に嫌われる体質でございます……ベン!

 もし、皆さんで盛りあがっている時にわたくしが顔をだしてハチベエが逃げだしたら……そう思うと中々勇気がでませんでした……ベン、ベン!


 そこで、わたくしは愚考致しました……ベン!

 誰も居ない夕暮れ時を狙って接触を試みたのでございます……ベン!

 トコロが(同じコトを考えていたのか)如何にもな冴えないモブ顔の上級生がハチベエを抱いていたのでございました……ベン、ベン!」


 わ、悪かったなあ……ボッチで冴えないモブ顔でえっ!?

 会長が、ちらっ、と俺を見たが何も言わずに、董乃のが再開された。


「わたくしは、日を改めようか迷いましたが、取り敢えず上級生の坐るベンチの隅に腰を降ろしました……ベン、ベン!


 すると、モブ顔の上級生が訊いてきました……ベン!

『君もハチベエを抱きに来たの?』

 わたくしが頷くと、ハチベエを渡そうとしてきたのでございます……ベン!

 トコロが、ハチベエは『ふーっ!?』と威嚇してきたのでございました……ベ、ベン!


『こら、こら、ハチベエ!……君が美人さんだから焼き餅を焼いたかな?』


 わたくしの何処が『美人さん』なのか、耳を疑いました……ベン!


『君から、手を差し伸べてご覧!』

 しかし、そう言われて人差し指を伸ばすと、また『ふーっ!?』と背を丸めて威嚇してきます……ベン!

『だめ、ダメ…猫は尖ったモノが怖いんだ……だから、グータッチでね』


 言われるままに『グー』をだすと……な、な、なんと…わ、わたくしの手にハチベエの肉球があああっ♡♡♡


 生まれて初めて猫と触れあった瞬間でございました……ベ、ベン、ベン!


 更に、モブ先輩がハチベエに仰いました。

『良かったなあ、ハチベエ……こんな美人さんとグータッチできて(笑)』

 モブ先輩がそう言うとハチベエが嬉しそうに『な~ご♡』と鳴いて彼の唇を、ぺろ、ぺろ、舐めたのでございます……ベン、ベン!


 ああ、わたくしもあんな風に猫ちゃんと、ちゅー、したい……そんな野望を抱いた瞬間でございました……ベン!


 すると、ハチベエが首を伸ばして、わたくしの唇に……ちゅ、ちゅ、ちゅー、したのでございますぅ……ベ、ベン、ベン!


 えっ?……これって、モブ先輩と……か、か、か、か、間接キッス~~~ぅ!?


 わたくし、生まれて初めて殿方の唇と触れ合ったのでございますうっ♡

 こうして、わたくしのファーストキッスは夛茂たも先輩に捧げられたのでございましたあああっ♡♡♡


 ……ベベン、ベン、ベン、ベベン、ベンっ!」



            【つづく】

※ 注『まんが水戸黄門』(1981年~1982年)というアニメがありますが、関連はありません。うっかり八兵衛も出てきません。犬の鈍兵衛は出てきましたが(笑)。

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