第二十七話 一縷女史もひずポンも、オッパイスキー大先生の元に〝95センチ(自称)Hカップ(実際はGカップ)〟を連れて来たらダメっしょうっ!?

「いや、『学園の二大美少女』って、誰のコトですか?」


「君の隣の席の我が学園No.1美少女の片桐かたぎり 花楓かえでクン、そしてその花楓クンの親友にして97センチHカップの〝きすみん〟こと鬼崎きざき 貴澄きすみクン、この二人以外あるのか?」


「『学園の三大美少女』のですと会長も入るようですが?……まあ、順位は特定されていませんようですが?」

 董乃とうのが、ちょろっ、と舌をだしていた。


「ふ、ふんっ!……誰かさんも『トップ5』にランクインしたそうじゃないか?」

「はて、初耳ですが?」

「しかも、二回生限定なら、あの〝ちび巨乳〟を抜いてトップだとか?」

「畏れ多い事でございます♡」


 〝チビ巨乳〟って、多分だが一栞いちか、だよな?……ってコトはあいつ学年2位なんだ(笑)。



 そんなお喋りに惑わされて、肝心の一縷いちる女史のを訊きそびれて昼休みは終わってしまったのだった。


          *


 さて、少々仕事の話だか……出版業界には『年末進行』というモノがある(いや、殆んどの業界にもあるだろうが)。

 関連の業者が年末年始10日ほど休みになる為、年始に(あるいは年末ギリギリに)発売される雑誌も書籍も印刷スケジュールが前倒しになり入稿日(つまり締切だ)が早まる。


 新年号(1月号)は12月1日発売だが、新春号(2月号)は12月27日発売となる(年内に発売して『新年号』だ『新春号』だも無かろうと思うが、昔からの慣例だから仕方ない)。

 そして、発売日が早まるだけでなく、新春号(2月号)の締切は10日+αの前倒しだ。しかも、その前倒しを受けて新年号(1月号)の締切も早まるのだ。


 更に、俺のようなは全てのシワ寄せをこうむるコトになる(大きな声では言えないが、自分の締切直前に大御所作家さまに臨時アシに呼びつけられる、とか勘弁して欲しいんだがっ!?)。


 そんな訳で新春号(2月号)に巻中カラーを戴いた俺はも強く、早速呼びつけられたんだが。

 まあ、現在は新年号(1月号)の締切絡みなので俺的には、まだ余裕だが。

 『GW進行』の時も、『お盆進行』の時も、お声も掛からなかったコトを考えると俺もモノだ(笑)。

 しかも、今回は『ひずポン』こと氷上ひかみ 秀流ひずる(同級生で『漫研』部長だ)も一緒に呼びつけられたのだった。


 ホントは、今週土曜日は花楓とスタジオで、いちゃ、いch ……いや、月曜日に少し気まずかったから、修復の為にもシュークリームを買って(いや、俺場所知らないんだった)……じゃなくてだな……そう、オッパイを揉まs…いや、だからモデルのお仕事をお願いしてあったのにぃ!?



 という訳で三代目担当編集者の一之江いちのえ 一縷いちる女史に遣って来ましたWマガジン社の現在の(いや、死ぬまで)看板作家、大河内おおこうち オッパイスキー(マジもんのペンネームだ)大先生の、超大邸宅(笑)。

 毎年、新年号(1月号)の巻頭カラー8ページ付き50ページをご担当なさっていて、をアシに使うのを何より愉しみにしていらっしゃるそうだ。


「すごー!……これ、個人の住宅っすかーっ?」

 ―― ちょ、待てぃ!?

 その声は〝チビ巨乳〟こと、お下げ髪の小柄な美少女(二回生の)一文字いちもんじ 一栞いちかっ?

 お前、何で付いてきたの?

 一縷女史もひずポンも、オッパイスキー大先生の元に〝95センチ(自称)Hカップ(実際はGカップ)〟を連れて来たらダメっしょうっ!?


 俺の心配を余所にピンポンを押して大先生の超大邸宅に入り、粛々と仕事部屋に。

 挨拶する一縷女史の後ろで頭を下げる俺を見てオッパイスキー大先生が睨んでいた。

 えっ?、何でっ?、何かやらかしたのか俺っ?


「おい、キマイラっ!?」

(キメラです、大先生!)

「仕事に彼女連れとは良い身分だなっ!」

「は、はいぃ!?」

 慌てて一縷女史が紹介した。

「あっ、オッパイスキー先生、ご紹介が遅れました……こちらが、新人の『ひずポン』です!」

 勘違いしていたようだ。まあ、女流エロマンガ家って少ないしね。


「初めまして、ひずポンと申します……本日は、アシにお呼び戴きありがとうございます! 宜しくお願い致します!」


 緊張気味に挨拶するひずポンの微胸をスルーして大先生の視線は一栞の胸にロックオンっ(笑)。

 知らんぞ、俺はっ!?


「良いオッパ……いや、お前も新人か?」

「いえ、あたしはひずポン先生の手伝いで…」

「うむ、絵が描けるなら良いぞ……こっちへ来い♡」

「お、オッパイスキー大先生っ!……彼女は、手伝いの手伝いですのでえ…」

 俺が必死に声を掛けたが、


「なんだ?、キマイラ…まだ居たのか?……お前は帰って良いぞ!」


 ホレみろ、知らんぞ俺は……とも、言えんしなあ(笑)。

「オッパイスキー大先生、俺にも大先生の技を勉強させてくださいませ、ませっ!」

 最敬礼で頼み込む。


「しょうがねえなあ…」

 そして、チーフアシに指示をだした。

「おい、キマイラにトイレの背景でも廻してやれ!」

「ありあした~っ!」

 トホホだぜ(笑)。


 そして、一栞を見て一声。

「おい、お前……丁度良いんで、オッパイを見せろ!」

 大先生にとってはそばにいる女(特にオッパイの大きな女)は、こういう扱いで済んできたんだろうなあ?


 どうするっ?、どうするよっ、俺っ!?

 俺は、何も案が浮かばないまま、一栞を庇うように前に出たのだった。



            【つづく】

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