第二十一話 前回は、舌を入れたと怒られた気がするんだけどぅ?…この、上から目線で、ベロキスされてる圧倒的な敗北感はあっ⁉

 次の金曜日の夜に、また、編集長から電話があった。


 何でも(笑)現在の(二代目)担当編集者の笹目ささめ 沙耶香さやか女史が入院したらしい。

 まあ、症状は安定しているので心配は要らないそうだ。良かった(笑)。

 そんな訳で、暫く編集長(最初の担当編集者さまである)が担当してくださるとのコト。

 若干、緊張が走る(笑)。

 なので、スマホを前に正座だ。


 用件の一つは、先週のペンネーム『ひずポン』こと氷上ひかみ 秀流ひずるに作画を見学させたコトへのお礼だった。

 本人も色々刺激になったらしい。良かった(笑)。


 それで、二つ目の用件は ――


          *


 明けて土曜日。いつもの午後1時前 ――


 今回も沙耶香女史でなく編集長と(緊張がハンパねー)待つスタジオに、約束の午後1時10分前(10分前って、偉い(笑))にインターフォンが鳴った。


 そして、開けた扉から入ってきたのは、 『モデル派遣の華園はなぞのカンパニー』所属、花棲かすみ 可憐かれんこと同級生の片桐かたぎり 花楓かえでである。


「本日はご指名を戴きありがとうございました。『モデル派遣の…」

 口上を述べる花楓を(いや、今日は可憐か?)遮って編集長が言った。

「まあ、まあ、硬い挨拶は抜きにして…本日も宜しくお願いしますね!」

 そして、驚いたように続けた。


「本当に綺麗なお嬢さんだねえ!……キメラ先生の作画に力が入るのも頷けるなあ(笑)」


「きょ、恐縮です…」

「へ、編集長っ!?」


「それでは、後は若い人同士で宜しくお願いしますね」

 と、見合いの席のみたいな台詞と、去り際に耳元でこんな言葉を囁いて編集長は帰って行ったのだった。


「後でバイク便が何とかいうケーキを届けてくれる手筈になっているから、それまではに、ね(笑)」


 『ホドホドに』って、何をですか~~っ!?



 まあ、そんな訳で可憐との二回目のミッションだ。

 今回は、ヌードデッサンではなく(勿論、本人がOKなら、ご随意に……とか、言われたが)キスのレッスンだ、そうであるっ!?


 いや、キスのレッスンって、何だよ~っ!?


「い、言っとくけどぉ……こ、今回は…お、お金に釣られた訳じゃ…な、ないんだからねっ!」

 可憐が真っ赤になって言い募る。

「あ、あの編集長さんに……ど、どうしても、って頼まれたから…」


 そ、それは兎も角……キスのレッスンって…き、きき、キスするんだ、よなっ!?

 俺と、可憐と、で……

 ヌードより、ハードルが高くないのか?

 前回の二回のは、確か『無かったコト』にしたんじゃなかったのか?

 大丈夫、なんですか、ねっ?


「編集長さんが言うには、おっぱいの描写は素晴らしいが、キスの表現はだから、たっぷり、教えてやって欲しい……って!」


「いや、あの……俺とキスするの…だ、大丈夫なの?」

「まあ、こんな場所で、べろちゅー、とか……ムードもなにもあったモンじゃないけどぉ(笑)……モブちぃ相手にムードとか期待しても、ねぇ(笑)」

「わ、わ、悪かった、なあ……し、しかも相手がこんなモブの俺じゃあ…」


「えっ?……そこは…べ、別に……いんだけどぉ?」

(えっ?、良いの?)


 何やらデジャブ感満載の会話ののち……


「そ、それじゃ、時間もないし、早速始めるわよぉ!」

 今回は三時間らしい。

 さ、三時間キスし続ける、のかぁ!?

 俺の当惑を余所に可憐が三人掛けソファーに坐って隣を、ぽん、ぽん、と叩いた。

 俺が隣に坐ると膝と膝がぶつかってそれだけで、ドキ、ドキ、する。

 ヤバい、三時間も持つのか、俺の心臓っ!?


「じゃあ、軽く肩慣らしからね…」


 前回、確か『ファーストキス』とか言ってなかったですかね?

 可憐さん、余裕あり過ぎじゃないですか?


 身体を斜めにして可憐が顔を寄せてくる。

 息が掛かりそうな距離で、すっ、と目を瞑り唇が突きだされた。

  慌てて俺も目を瞑り、唇を寄せた。

 柔らかく少し濡れた感触が俺の唇に触れた。


 ヤバいっ!?

 良い匂いがする。

 シャンプー?、洗顔ソープ?

 ……そ、それとも…か、か、可憐の体臭っ!?


 早くも俺の右脳も、左脳も、パンク寸前だ。

 つのかっ!?、俺の心臓っ!?


 そのまま、キョドっている俺の首に可憐の細い腕が巻きついてくる。


「おべろ、挿入れるわよっ♡」


 言葉と同時に少し、ザラ、ついた小さな舌が俺の唇を割って侵入してきた。

 更に、俺の舌先を、つん、つん、突付いたと思った瞬間 ――


 俺のベロが、可憐の上下の唇に、ぱっくん、されたんだがあっ!?

 そのまま、吸われて可憐の口腔に取り込まれていたんだがあっ!?


 ―― はむん、あむぅ…じゅぷ、ちゅる、ちゅぷぅ…ずずずぅ、じゅる、じゅぽっ…れる、えろ、るろぅ…ん、んぅ…あふっ…るろぅ、れる、えるぅ……


 卑猥な水音が部屋に木霊し、可憐の攻勢(口勢?)は留まるトコロを知らず。


 マジで…や、ヤバいんですが?

 な、なんですか、ね?

 前回は、舌を入れたと怒られた気がするんだけどぅ?

 この、上から目線で、ベロキスされてる圧倒的な敗北感は……


「ねえ、モブちぃ?……今日はおっぱい触ってもぉ、したげるぅ♡」


「えっとぅ!?……ど、どしたんですかね?」

 その、『良いにしたげる』という表現が、微妙なんすけどぅ!?


「触りたく、ないのぉ?」

「さ、触りたく候う……だけど、スタンガン隠し持ってないですかね?」


「莫迦ね…な、い、わ、よぉ♡」


 そう言って可憐は制服のブレザーとブラウスの前を、がばあっ、とはだけて見せたのだった。

 そこには、ブラすらなく、あの見慣れた88センチFカップの、ぷるるん、オッパイが揺れておりまして……



            【つづく】

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