第十七話 いや、まあ、アレは沙耶香くんが、また脱がされては堪らないと独断専行したんだけどね(笑)
「
「あの、おっぱい、は至高ですぅ♡」
(そ、そうなんだ……)
俺は返事に窮したのだったが。
―― ん!?
ちょと、待て……二回生というコトは、俺のマンガを買えないだろう?
そんな俺の心の葛藤に
「あたしのコレクションを見られてしまってね…」
同時に一栞もファンだと言う対象のマンガがアダルトだったコトに気がついたのだろう、真っ赤になって俯いた。
「と、取り敢えず……今の話は聞かなかったコトにしておこう」
「そ、そうだね……色々迷惑を掛けて済まない…」
やはり、秀流はアダルト系の同人誌をやっているのだろうか?
俺のコトはバレないように気をつけよう……と、肝に銘じたのだった。
その後、月曜日の昼休みの件だけ伝えて俺は逃げるように『漫研』の部室を後にしたのだった。
*
それから数日、
勿論、また俺から電話するなどというハイスペックな行動を起こせる筈もなく(笑)。
一方で、花楓の親友にして97センチHカップの〝きすみん〟こと
―― あれっ?……花楓が余所余所しいのって、いや、いや、無いな(笑)。
*
そんなこんなで金曜日の夜、編集長から電話があった。
編集長は俺の初代担当編集者で、俺を膨大なネットの海から拾いあげてくれた大恩人である。
いや、決して大袈裟では無い。
ちょっと絵の上手い同人誌作家など、本当に、掃いて捨てる程居るのだから。
なので、編集長からの電話は正座だ(笑)。
その用件だが……
昨日、今回のデビュー10作目記念の新作30ページの最初の10ページが仕上がったので現在の(二代目)担当編集者の
『相変わらず、良いオッパイを描くね』と、褒められた。
まあ、俺を拾ってくれたのも、そのオッパイだったりする(笑)。
「今回は、過分なモデル料を払って戴きありがとうございました!」
「いや、まあ、アレは沙耶香くんが、また脱がされては堪らないと独断専行したんだけどね(笑)」
「そ、そ、そうだったんですか……」
「まあ、キメラくんには先行投資さ(笑)……でも、早速良い絵に仕上がったじゃないか!」
「ありがとうございます」
「何でも知り合いだったそうだね……次回はもう少し安くなるけど(笑)、また呼んだら良いよ」
「い、いや、彼女が嫌がると思うので…」
「え?……さっき、良い絵になりました…と、お礼の電話を掛けて、またお願いしたいと言ったら、『喜んで』と言ってたけどなあ?」
「は、はいぃ!?」
えっと、いや、マジでっ!?
「後は、キスシーンがもう少し……かな?」
「し、精進、します、です!」
「それも彼じょ……いや、まあ…」
何やら言葉を濁した編集長が改まった声をだした。
「実は、今日電話したのは、キメラ先生にお願いがあってね……」
編集長から『キメラ先生』とか呼ばれたのは初めてで、緊張が走る。
「君が知ってるか判らないが、君と同じ頃に声を掛けた新人で、『ひずポン』という子が居るんだけどね…」
「あっ、知ってます……ウエブ雑誌の『K楽天』に描いている百合系の作家さんですよね」
うん?、百合系?……いや、偶然だよ(笑)。
「おや、流石だね……それなら話が早いんだけど……ひずポンくんも君の〝オッパイ〟のファンだそうでね……アシでコキ使って構わないので作画を見せてやってくれないかな?」
「あ、アシとか俺には畏れ多いですが(笑)……作画の見学とか全然オーケーです!」
「それはありがたい……それで、急なんだが、ひずポンくんも君と同じ学生でね……明日の土曜日は学園が休みだと言うんだが、君のトコはどうかな?」
「あ、ウチも休みです……例の新作の作画もしないといけないし、見学なら明日で大丈夫です」
「それじゃあ、急で本当に申し訳ないけれど、宜しく頼むね!」
それから、翌日の時間を詰めて電話は終わった。
*
明けて翌日のお昼過ぎ ――
今日は沙耶香女史でなく編集長と(緊張がハンパねー)待つスタジオに(編集長が借りてくれたマンションだ)、約束の午後1時10分前(10分前って、偉い(笑))にインターフォンが鳴った。
そして、開けた扉から入ってきた『ひずポン』を見て、俺は固まっていた。
「本日はお忙しい処、貴重なお時間を割いて戴きありがとうございます。わたくし、『ひずポン』と申します。気軽に『アシスタント』にお使いくださいませ♡」
深々と下げていた頭をあげて俺と正対した彼女も、瞬時に固まった。
そこに居たのは、同じ学園の『漫研』所属、いや部長の
一瞬の後 ――
「ヘ、へ、部屋を間違えました~~~っ!?」
回れ右をして出ていこうとしたひずポン(いや、秀流の?)肩を編集長が、がっしり、掴んでいた。
「大丈夫ですよ、ひずポンくん……ここで合っていますっ♡」
〝百合エロ〟の同人作家……という時点で、何となくだが、嫌な予感がしていたのだが。
いや、厭な予感しかしなかったのだが。
デジャブしかないんだが。
そして、改めて『ひずポン』を(いや、秀流を)俺に正対させた編集長が重々しく(そういうの止めてください(汗))言ったのだった。
「こちらに
(な、なな、なんで……モブくん、じゃなくて
更に、少し遅れて入ってきたのは ――
「あーっ!?……なんでキメラ先生さまの真似っこ先輩がいるのよ~~っ!?」
おいっ!?
【つづく】
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