第十四話 えっ?、嘘っ⁉、片桐さん?…マジ、か?……どうぞっ!…想い人がお待ちですよぅ(笑)

 何故か、花楓かえでが俺を睨んでくるんだが?

「いちゃ、いちゃ、しちゃってぇ!?」

「は、はいぃ!?」

 ―― 誰と誰が、いちゃついてる、とぅ!?


 そこへ貴澄きすみまで、何やら問題発言をブチ込んできたのだが?


「さっさと白状おしっ!……どこでと乳繰り合ったのさあっ?」


 この女は、花楓の親友にして97センチHカップの〝きすみん〟こと鬼崎きざき 貴澄きすみだ。

 俺を揶揄からかって遊ぶ〝性悪女〟だ。

 因みに『』とは花楓のコトだ。


「ち、乳繰り合ったり……し、していない…ぞ…」


「あーしの目は誤魔化せないわよぅ?……モブちぃの目はカエちぃの裸を舐めるように見た目だっ!」


「ゴホっ⁉……ゲホっ⁉」

 まるで撮影現場を見ていたかのような発言に、俺は思わず咳き込んだ。

 しかし、辛うじて持ち応えた。

「……ど、ど、どんな目だよっ?」


「あ、や、し、いっ!?」


 貴澄が俺の顔を覗き込んだ時、教室の前の引き戸が開いて担任が入ってきた。

 ―― た、助かったっ⁉



 取り敢えず、朝のホームルームは無事乗り切った。

 更に、担任が一限の担当教官でもある為、引き続き授業が始まった。

 貴澄にはなコトだったが、(一旦だが)追及を逃れるコトができたのだった。


 俺はこのチャンスを逃さず花楓にLINEを送った。


 【俺がゲットした『女神の純白ドレス』は譲渡できるので、後で相談しよう。】


「ホントにぃ!?」


 花楓の声が教室に響き渡った。

片桐かたぎりぃ、本当だぞっ!……テストにでる確率は高いから、予習しとけよぉ!」

 タイミングが、良かったのか、悪かったのか?

 とまれ、は担当教官が受け取ってくれたのだった。


          *


 昼休み、購買でパンを買った俺は花楓との約束の『漫研』の部室に向かった。

 実は俺は『漫研』の幽霊部員だったりする(笑)。

 尤も、この学園の『漫研』は俺以外は部長の氷上ひかみ 秀流ひずるが居るだけだ(こんな名前だが、女子だ)。

 この学園では『アニ研』がハバを利かせているのだ。

 そして、秀流も俺も三回生なので、『漫研』はもうじき廃部……かも知れない。


 『漫研』の部室に鍵を差し込むと、開いていた。

 ヤバい、秀流が居るようだ。

 案の定、部室に入るとサンドイッチを咥えてPCに向かっている秀流が見えた。

「あれえ?……珍しいね(笑)」

「ゴメン、ちょっと内密に相談したい人がいて……」

「ふうん?……じゃあ、あたしは席を外すね」

「それは、悪いなあ……」


「えっ?、まさか、女子か?……モブが女子と逢引きか~、成長したモンだねボッチのモブくん(笑)」


 PCの作業を保存して電源を落とした秀流が残りのサンドイッチを持って立ちあがった。

「い、言ってろよっ!」

 まあ、こういう気易い間柄だったりする。


 しかし、間が悪いコトに、部室から出ようとした秀流と花楓が、かち合ってしまった。

「『漫研』の部室って、ここで合ってる?」

 そう言いながらドアを開けた花楓の正面に秀流が立っていた。

「えっ?、嘘っ⁉、片桐さん?……マジ、か?」

「あ、ごめんなさい、入っても良いですか?」


「はい、どうぞぅ!……想い人がお待ちですよぅ(笑)」


「ひぇいぅ⁉……そ、そんなんじゃ、にゃいれしゅからっ!」

 相変わらず焦ると噛み捲くる花楓だった。

 花楓と擦れ違って部室を出しなに秀流が振り返り、俺にウインクしてきたのだった。

 やれ、やれ、今度会った時イロイロ問い詰められそうだ。

 まあ、口は固いのでその点は心配ないのだが。


「い、今の氷上さん……よね?」

「えっ?……面識があった?」

「話したのは今が初めてだけど……有名人じゃないっ!」

「ええっ?……そうなの?」

「モブちぃは、モブちぃよねえ(笑)」

「な、何だよそれ?」


「氷上さんって、『氷の麗人』て二つ名があるんだけどぉ……モブちぃが知ってる訳ないかあ(笑)」


「い、言ってろよっ!」

(さっきもこんなセリフを吐いた気がする)


 何でも学園でトップクラスの眼鏡美少女だが、言い寄る男子を【氷の一睨み】で撃退するトコロから付いただそうだ。

 気さくな良いヤツだけどなあ……


「そ、それより先に『女神の純白ドレス』の譲渡を済まそう」

「うん、どうやるの?」

「フレンド登録すれば良いんだって」

 俺がそう言うと花楓が自分のスマホをだして『あかつきのエスペヒスモ』を立ちあげた。

「それじゃ、お願い♡」

「いや、俺はフレンド登録なんてしたコトないから、やり方判らない……片桐さんがやって」


「か、え、でぇ⁉」


「は、はいぃ?」

「二人切りの時くらい、名前で呼んでっ!」

 いや、それ、ヤバくね?

「か、かえ、花楓……さん」

「さん…は、要らないぃ!」


「そ、それより……か、花楓がフレンド登録してよ」

 俺が立ちあげた『暁のエスペヒスモ』の画面を花楓に示した。

「わたしだって、やり方なんて判らないわよぉ……したコトないしぃ」

「えっ?……まさか、今までソロプレイだったの?」

「な、なによぉ……どうせ、モブちぃだってプレイだったんでしょ!」

「い、言ってろよっ!」

(本日三回目のセリフだ(笑))


「そ、それじあ、今夜調べておくよ…」

「了解……それなら、判ったらLINEでも電話でも良いから、連絡してね」

「えっ?、俺が電話して大丈夫?」

「ぷっ!…なにそれ~(笑)……大丈夫に決まってるよぉ♡」


「いや、女子に電話したコトないしぃ……」


「ぷっ!…なにそれ~(笑)…ウケるぅ~(笑)」

「じゃあ、花楓は男子に電話したコトあるのかよ?」


「さて、お昼休みも終わりだから戻りますか」


 ご、誤魔化したよな?……絶対、誤魔化したよなっ!



            【つづく】

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