第十一話 よし、全部無かったコトにして、帰ったらガチャを廻して、廻して、廻すぞ~~~っ!?
ソファーから降りた俺に可憐の呟く声が聞こえた。
「ヘタレっ!?」
(いや、だってなあ……明後日から学園で顔合わせ辛いだろう……嫌でも隣の席なんだしぃ!?)
勿論、声にだして反論する度胸もないヘタレだけどぅ(笑)。
それからは、お互いに何気にぎこちなくなってしまい……三、四カット撮影した辺りで約束の五時間も残り30分となった。
そろそろ片付けを始めたら、丁度良い時間になるかな、と可憐に告げると……
何を思ったのか、その場で紫透け紐パンを脱ぎ捨て真っ裸になった可憐が俺を挑発する。
「ふ~ん、センセはもう、わたしの裸は堪能し尽くしたとぉ?」
そして、剥きだしの
「もう、このおっぱいは、飽きたとぉ?」
可憐が何故ここまで俺を挑発するのか、本心は判らないが、多分さっきの【キス待ち顔】をスルーしたのがプライドを傷つけたのだろうとは思われる。
「そうか、センセには大好きな
流石に俺も、これにはカチンときた。
比々野 妃莉お嬢はアダルトDVDでお仕事をなさっている俺の推しだ。
色々お世話になった(笑)が、当然面識とかある訳ではない。
だからと言って、聞き流せなかった。
「何で妃莉お嬢のコトを知ってるんだよっ!」
「あの美人の編集さんが面談に来た時……写真を見せられて延々と似てるだろうと言われたわよぉ!」
「に、似てねーよっ!」
つい、叫んでいた。
俺も、まだ、まだ、器が小さい(笑)が……
実際、似てると言うより、花楓に似たAV女優を探して妃莉お嬢に辿りついたのだが(笑)。
これは、可憐に(いや、花楓に)絶対に知られる訳にはいかないトップシークレットだ(笑)。
気がついたら俺は、つか、つか、と可憐の前に立っていた。
「な、なによっ!?」
オッパイを両手で隠した可憐が、片足半歩退いただけで踏み留まった。
「お、おっぱい触ったら…す、スタンガンだからねっ!」
「判ってる!……オッパイ以外なら、良いんだよなっ?」
「ど、ど、どこ、しゃわりゅのよっ!?」
俺はそれには答えず可憐の両肩を掴んで、ずいっ、と顔を寄せた。
「ひぃ!?」
微かに悲鳴を洩らした可憐が咄嗟に目を瞑った。
その
何でこんなイケメンな行動ができたのか?
多分、アレだ。作画の時に動きをトレースする為に【エアキス(笑)】を繰り返していた成果だ(笑)。
見れば、可憐の【キス待ち顔】が目の前にあった。
僅かに頬を染めて唇を突きだす可憐が可愛いしかない♡
俺は己の暴挙も忘れて見惚れていた。
―― と、可憐が片目を薄く開けた。
ヤバい(笑)!?
見惚れている場合かっ(笑)。
俺が覚悟を決めて唇を寄せると、可憐が慌てて目を瞑った。
―― 行けっ!?、いけっ!?、イケっ!?、行くんだ~~~っ!?
俺の脳内に進軍ラッパが鳴り響き、ドーパミンが、どぱ、どぱ、と放出された。
そして、遂に俺の唇が可憐の唇にソフトランディングを果たしたのだった。
ヤバいっ!?
柔らかいっ!?
甘いっ♡♡
……甘い?
あれか?……カリカリバニラシュークリームか?
そのまま唇を押しつけていたが、ふと、気になった。
(ちょ、待て⁉……息継ぎって、いつ、ドコで、するんだ?)
いや、いや、このままだと、またヘタレの烙印を押されかねないっ!?
(そうだ、ベロを入れて…れ、れろ、れろ、するんだっ!……た、多分…)
俺は両手で可憐の頭部を固定したまま舌を差し入れた。
途端に可憐が暴れ始める。
俺の顔の横で可憐の両腕が、わた、わた、したと思ったら……俺の頭部を、がしっ、と掴んで剥がされていた。
見れば、真っ赤になった可憐が睨んでいる。
「し、し、舌入れるなんて、聞いてないよぉ!?」
「ご、ゴメンっ!」
慌てて謝る俺に可憐が視線を泳がせながら言ってくる。
「さ、さっきのがわたしの……ふぁ、ファーストキス、なんだからね⁉」
『さっきの』と言うのはごっつんこした、アレだよね?
(お、俺もそうだけど?)
「そ、それで人生二回目の、ちゅー、が……こ、こんな形で…し、し、舌入れられるなんて、信じられないぃ⁉」
「お、俺だって『二回目』だけど?」
「うっそっ⁉」
「いや、嘘じゃないぞ……」
「すっごい、慣れてたじゃん……」
(いや、それは【エアキス】を繰り返したからで……(笑))
……とは言えない(絶対バカにされるに決まってる)。
可憐は俺の思惑をスルーして語った。
「わたしぃ……でぃ、ディープキスする時は、ドレスアップしてぇ……ムードのあるホテルのバルコニーでぇ……とか、思ってたのにぃ……」
「しかも、相手がこんなモブの俺では……」
「えっ?……そこは…べ、別に……いんだけどぉ?」
(えっ?、良いの?)
「こ、こんな……ま、真っ裸でぇ……普通の…仕事場でぇ……も、最低よぉ⁉」
「しかも、相手が俺みたいなモブでは……」
「えっ?……そこは…べ、別に……いんだけどぉ?」
(えっ?、良いの?)
俺が謝罪の方法をあれこれ考えていると、何やら〝自己完結〟した…っぽい可憐が大きく伸びをして、言った。
「良し、無かったコトにしようっ!」
「は、はいぃ⁉」
俺の疑問をスルーした可憐はかなぐり捨てた紫透け紐パンを拾って、真っ裸を隠しもせずに俺の横を通って脱ぎ散らかしてあった制服一式も小脇に抱え、入り口近くに置いてあった紙袋に向かった。
そして、紫透け紐パンをその中に放り込み、例のこ洒落たブルーのポーチから自前の可愛い系ショーツをだして穿いた。
更に、する、する、と身支度を整えた可憐は、学園指定の制服姿で……何故か頬を両手で、ぱん、ぱん、と叩いた。
「良っし⁉……全部、無かったコト……おでこがぶつかったのはタダの事故……ありもしないディープキスはモブちぃの妄想……良っし⁉、
「は、はいぃ⁉」
俺の当惑を余所に可憐は振り返って笑顔を見せた。
「本日は、『モデル派遣の
そして、最上級の(作り)笑顔で言った。
「またのご用命をお待ちし…………ああ、これはタダのルーティーンでした(笑)……お忘れください」
その作り笑顔のまま90度のお辞儀をした可憐は紙袋を手に扉を大きく開け放ったのだった。
そして、その扉を抜けた可憐が廊下で大声で叫んでいた。
「良っし⁉、全部、無かったコト……帰ったらガチャを廻して、廻して、廻すぞ~~~っ!?……『女神の純白ドレス』がわたしを待っているのよぉほほほほほほほほほほほほぉん♡♡♡」
【つづく】
ここで「ヌードデッサン篇」は終了です。次回、閑話(?)が入り、二話後からは「学園篇」が始まります。
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