第五話 オーソドックスな白の紐パン、紫の透け透け紐パン、シルバーのマイクロビキニ……の揃い踏みだ!

 オッパイを揉むな、と言われたら……見るよね?

 男だったら、見るよね?


 可憐視線でヘアを覗き見るポーズの撮影の筈が、彼女のオッパイを(いや、制服越しだが)凝視していた。


「えっとぅ?……モブくん、じゃなくて、センセ?」


 カメラを肩越しに差しだしたまま固まった俺に可憐が訝し気な声をあげた。


「あっ、えっと、その……パンツをちょっと、直したい…かな?」


 俺はさりげなく話を逸らした。

 いや、誤魔化したんじゃない……ぞっ!


「あっ、そう言えばあの美人編集さんから、ぱんつを何枚か用意するように言われてたんだ」


「そう、そう、それを見ようか」

 俺は渡りに船と、その話に乗った。

 いや、だから、誤魔化したんじゃない……からね(笑)。

 俺が背後から廻していたカメラを戻すと、可憐が「じゃあ持ってくるね」と歩きだそうとしてコケそうになった。


「わっと……せ、センセ、ぱんつを元に戻しても、良い?」


「ああ……それなら脱いじゃおうか」

 あまり深く考えずにそう言ったのだが、ジト目が返ってきた。

「えっと、いや、他のパンツを見て穿き替えるんだしぃ…」


「ま、まあ、ソウデス…ね」


 何かジト目のままなんだけどぅ(笑)。

 しかも、俺に背を向けてスカートの中でパンツを脱いで、それを隠すようにして部屋の隅に置いてあった紙袋へ向かったんだが?


 いや、俺が間違ってる?


 俺は冷蔵庫から烏龍茶のペットボトルを取りだしグラスと一緒に、仕事デスクの対面にある応接セットのソファーに向かった。

 この応接セットは編集との打ち合わせ以外に撮影の小道具にもなる。

 待つ程もなく、可憐はその大きな紙袋からこ洒落たブルーのポーチを取りだして戻ってきた。

 テーブルを挟んだ三人掛けの方のソファーを勧め、烏龍茶のグラスを置く。


「きょ、恐縮です」


 モロにタメ口かと思えば敬語がでたり……緊張してるのか?

 確かに烏龍茶を一口飲んだ可憐が何故か、そわ、そわ、している。

 俺はテーブルを示して言った。

「ここへ並べて」


「ひゃい!?」


 挙動不審だ(笑)。

「ぱ、ぱんつを……ですよねっ?」

「いや、他にある?」

「い、いえ…あぅ!?」

「どしたの?」


「だ、だってぇ……ど、同級生の男子に…ぱ、ぱんつを見せるの、緊張するよう!」


「ああ、成る程(笑)」


 俺は和ませるつもりで言った。

「ほら、これは『お仕事』だしぃ、『女神の純白ドレス』の為だしぃ(笑)」


 何故か睨まれました。後半は余計だったね(笑)。

 それでも気を取り直したのか可憐はこ洒落たブルーのポーチからパンツを取りだしてテーブルの上に並べていった。

 一枚広げては「はうぅ」とか、また一枚広げて「ハズい」とか言っている。

 四枚テーブルに広げて、ふう、と息を吐いた。


 俺はその四枚を観察して言った。

「何だか可愛い系ばかりだね……まあ、可憐ちゃんには似合ってるけど」

 しかし、言わずには居られない。


「えっと、エロマンガの為のモデルだというのは、聞いてるよね?……エッチぃのは持ってないの?」


「わひぃいっ⁉」

 見ればポーチは膨らんでいた。

「み・せ・てっ♡」

 俺の視線を受けて可憐が、おず、おず、と最後の一枚をだした。


「おおぅ♡……良いじゃん、良いじゃんっ♡」


 俺は思わず手に取って広げていた。

「黒のレースのスキャンティ……しかも、少し透けてるぅ♡」

 俺は可憐を、ちら、見て言った。


「勝負下着ってヤツ……かな?」


「ち、ち、ち、ちぎゅうかりゃ⁉……ね、ネットで衝動的にポチっただけで、意味なんか、にゃいかりゃ⁉」


 可憐は焦ると舌が縺れて可愛いしかない(笑)。

 しかも、俺の手からその半透け黒レースのスキャンティを引っ手繰るとポーチに乱暴に突っ込んだのだった。

 こりゃあ、当分使う場面は遣ってこないな……と、俺は自分の恋愛事情(まあ、何もありはしないが)を棚にあげて思ったのだった。


 しかし、その半透け黒レースのスキャンティを穿かせるのは無理ゲーだな(笑)。

 俺は仕方なく部屋の奥に鎮座する白いチェストに向かった。

 そこには資料用の下着とか、下着とか、下着とか……が詰まっているのだ(笑)。

 その三段目を開く。そこは『エロいヤツ』の収納スペースだ。

 ちらっ、と物色して……

「サイズ的には、この辺か…」

 俺は三枚選んでソファーに戻った。

 テーブルの上の『可愛い系』を横によけて、選んだ三枚を並べる。


 オーソドックスな白の紐パン、紫の透け透け紐パン、シルバーのマイクロビキニ……の三枚だ。


「へ、変態っ⁉」


「いや、第一声がそれ?」

 俺はかなり鼻白はなじろんで声を荒げた。

「い、言っとくけど、作画資料用だからっ⁉……誰かさんと違って興味本位でポチった訳じゃないからっ!」

「そ、そそそ、そうですよ、ね……」

 可憐が見るからに、しゅん、としてしまって俺も怒りの矛先を収めるのに苦労した。


「まあ、これを穿いてくれれば許すよ(笑)」

 俺は一番なシルバーのマイクロビキニを指差した。

「わひぃいいいっ⁉」

「あと、上もこれね♡」

 俺は揃いのシルバーのマイクロブラ(ほぼ、紐だ)を横に置いたのだった。



            【つづく】

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