3-3. 始動

「今回の任務には我々の部隊だけに限らず、第一空挺団、水陸機動団、そのほか陸軍からの選りすぐりの部隊も参加すると聞く──。

 また、米軍においても今回の作戦に参加すると聞いている……。

 総責任者は誰になる? 司令か??」

「知っての通り、本作戦の部隊編成は我々自衛隊だけに限ったものでなく、安全保障条約を拠り所に米軍も参加してもらっている。

 これまでの演習以上の、大きい混合部隊となる。

 総責任者は米国国防省長官、及び防衛相大臣になる。

 私は君のサポートのため派遣されているに過ぎない」


 各々に作戦指揮権が与えられているということか──。


 彼らは実質表向きの責任者、指揮官であって、実際は現場で指揮権を握る者が仕切ることになるのだろうな。

 そのなかでの、合同で臨むテロ対応。

 自衛隊のなかでは司令が指揮権を有し、派遣される米軍においてはまた別の者が指揮権を握るのだろう。


 ……恐らく全体の総括は、経験を重ねている米軍が主導権を握るのであろうな。


 なにより俺自身が所属する部隊は、表向きには『存在さえ認識されていない部隊』──。

 他部隊、そして米軍の動員は一種の隠れ蓑としたくての、判断もあってのことだろう。


「分かった。

 ……現地での支援は望めるのか??」

「残念ながら表立った支援はできない。

 相手に刺激を与えないよう慎重に事を進める必要がある」


 相手への刺激は極力最低限。

 その限界ラインが陽動部隊による錯乱一回のみ。

 ……大々的な潜入からの制圧は出来ないと判断したのは正しい。

 都市圏、国としての機能が損失する可能性もあるからな。

 事態が事態なだけに、息を潜めての潜入しかないのだろう。


「……最後にひとつ聞く。

 今回のテロリストに関わる情報だが──」

「残念ながら、まだ掴み切れていない。

 分かり次第、無線にて連絡する。

 ほかに質問がなければ、予定通り三時間後に陽動部隊を展開し、潜入路を確保する。

 短い時間だが、英気を養ってくれ」

「了解した」


 仮面を被り電子音越しで大々的に行った犯行声明──。

 そこから拾える情報は目的と要求、占拠場所、占拠施設爆破から及ぶ地域の推定、以上の三点。

 彼らの目的と要求を聞く限りでは、国民目線での働き掛けであることから、方法さえ見誤らなければ支持得やすいことだろう。


 しかし、彼らの暴力的に訴える『それ』には、見事裏目に出て非難が集中してしまっている。

 いまも聞こえてくる知らせには彼らに反発する内容が おもだっており、それらはじつに確からしい。


 なれば、なおさら彼らの行動は理解し難い。

 国民目線での代弁者かと思えば、そのじつ、ただのテロリストに成り下がって、支持を得るどころか国民をまさしく憤らせ、自身にヘイトを向けさせているのだから──。


 ……いったい、何が狙いだ。

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