006 運動会の色

 運動会を子どもの行事と思うなかれ。

 体を伸ばし、準備運動をして挑むのは、大人のための運動会。

 ――球技大会である。



【運動会の色】



 会社の年に一度の行事。球技大会。

 部署ごとに分かれて競い合い、日頃の運動不足を解消しようという企画。

 運動好きな人ならいいが、苦手な人にとっては苦痛でしかない時間である。

 今年の種目は全員が参加できるように、ドッヂボール。変な配慮の仕方だが、バスケやバレーよりはましだろう。とのんきに話を聞いていたらまさかの球技大会の広報役に抜擢されてしまった。なんということだ。

 広報役といっても、やることは単純。球技大会中の写真を撮って、社内報を書くだけ。それだけ。それだけ……なのだが。


「めんどくさいなぁ……ドッヂボールの写真ってどこ撮ればいいのよ……」


 その分、球技大会自体は免除されるので嬉しい反面、と言ったところである。

 通常の業務の合間に、カメラの整備や社内報の下準備。

 ――気づけば、球技大会当日になっていた。


「それでは、本年度の球技大会を始めます」


 音量の上げすぎで、音割れするマイクとスピーカー。やる気のある営業部に、ほどほどという感じの私の部署。体の硬い人や、やわらかい人が露見したところで試合は始まっていく。

 私はというと、広いレンタルの体育館をあちらこちら走り回る。

 二、三枚撮って次の試合へ――を繰り返すうちに、お昼休憩のアナウンス。

 手渡された漆塗りの弁当箱に入った三色弁当に、目を輝かせた。


「はい。これ食べて、元気出して。また午後も頑張ってね」


 白いご飯に、うっすらと黄色がかっているのは酢だろうか。茶色担当のそぼろに、黄色担当の卵。それから、桃色担当のでんぷん。

 見ただけでわかる眩しさに、恐る恐る箸を入れる。

 口いっぱいにおいしさが広がったところで、同時に手渡されたお茶を一口飲めば、疲れなんてどこかに吹っ飛んでいく気がした。

 社内報の詰めが待っているが、今日この時、今ばかりは楽しもう。そう思ったのだった。

 ……一か月前にも同じこと思った気がするが、それはそれ。これはこれ。

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