004 お花見の色

 春。出会いの季節とも言われるこの時期。川沿いに咲く桜並木の下で、お祭り好きの会社の上司の掛け声のもと、お花見が行われようとしていた。

 こっそりと抜け出そうと思ったが、美味しいご飯が食べられると聞いてついて来てしまった。

 まあ、たまには……。と、ピクニックシートに座って、空を眺めながら買い出しに行った同僚を待つことにした。



【お花見の色】



 そう言えば。と、ふと考える。普段は桜と、ひとまとめにしているが実際には桜も数種類の品種があるらしい。それぞれが、異なる特徴を持っているということなのだが、この桜はいったいどの品種なのか。

 桜色はもちろんシェルピンクともとれる色や、鴇色とも言える花びらの色に、春の訪れを感じるのは日本人だからだろうか。

 春特有の薄い空色に、色とりどりのピンク色。そのピンクが、ひらひらを舞い落ちる姿は、さすがに綺麗としか言いようがなかった。


「お待たせしましたー。駅前のお店の花見セットですよー」


 会社の同僚がご飯を買って、ここに着いたらしい。箱を数人で手分けして持っているところから、相当な量を買ってきたのだろう。

 一つ、ピクニックシートに置き箱を開けると箱の中身はおにぎりと、たまごやき。それから唐揚げなど。あとは個別で買った、お酒たち。飲めない人用のお茶類も一緒にあった。

 あちらこちらからお酒の缶を開ける音、コップにお茶を注ぐ音。一通り音が終わって、全員に飲み物が配られたら、音頭を取って、お花見開始。

 目線を桜からご飯へと移し桜の下、話に花を咲かせることにした。

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