003 焚き火の色
今日は会社の懇親会のバーベキュー大会。川辺のキャンプ場を借りて社員が親睦を深めるためのイベント――なのだが。
私は烏龍茶を片手に、人々の喧騒から少し離れた場所で一人。喧騒を眺めながら、離れる前に与えられた焼肉を食べる。
喧騒の真ん中にある、火を眺めながら。
【焚き火の色】
朝から始まったバーベキュー大会の主役は火だろう。肉と答える人もいるとは思う。火は名脇役だと。
しかし、夕暮れ時のこの時ふと思うのだ。
山の中肌寒くなってきて、人は暖かさを求める。空腹はとうに満たされ、その手にあるのは酒がメインになってきた頃だろう。
肉のことを皆が忘れ始めている頃でも、火は中心にいる。絶えることなく、人々を照らし、暖め続ける。
昼間は肉を焼くために赤色だったそれは、今は夕暮れと似たオレンジ色に染まっている。
「あれ、こんなところにいたんですか。寒くなってきましたし、向こう行って暖まりましょ」
同僚の一人が、そう私に声をかける。大会が始まった時から飲んでいた烏龍茶も無くなったし、皿に盛られていた焼肉ももう残りわずか。
私は残った焼肉を同僚に押し付けて、冷えた体を暖めるために輪の中に戻ることにした。
星が光る空に、綺麗なオレンジ色がはじけて消えた。
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