002 静かな海の色

 今日の仕事が一段落したので、たまには。と、海へ向かうことにした。自宅から徒歩数分で、白い砂浜の海へと到着する。

 私のお気に入りは砂浜と道の境界線である、塀の上。砂に足を汚されることなく、海の気配を感じられる。そんなこの場所がお気に入りなのだ。



【静かな海の色】



 今日の海は穏やかで、静かだ。

 ここの海も、夏の時期は海水浴客で賑やかになるが、今はそのシーズンも過ぎた秋の初め。

 きらきらと輝く水面をのんびり眺めながら、お昼ご飯に買ってきたサンドウィッチを一口。

 青に輝く海の中に、緑――エメラルドグリーンと呼ばれるようなその色を見つけると、不思議と暑さしかない夏が恋しくなった。


「そう言えば今年の夏はどこにも行かなかったな」


 波の音と穏やかな風に、眠気を誘われる。ひとつあくびをして、伸びをして。

 気づいたときには、もうエメラルドグリーンを見つけることはできなかった。

 ――波の色は、光の色。

 ころころと変わるその姿に、後ろ髪を引かれながらも私は海を背にした。

 これからは、秋を経て冬の海が待っている。

 それも、また今とは違う姿を見せるのだと思うと、少しだけ待ち遠しかった。

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