カラーパレット・セレクション

紅莉

001 朝焼けの色

 ふと、目が覚める。ベッドサイドのテーブルに置いた時計を見れば、まだ朝日も登らない時間だった。

 二度寝をしようか迷ったが目は冴えわたり、頭もすっきりとしている。

 朝ごはんを作ろうと、台所へと向かうことにした。



【朝焼けの色】



 朝ごはんは目玉焼きとウインナー。それからパン。洋食のそれと烏龍茶の入ったコップをトレイに乗せ、ベッドサイドのテーブルに持っていく。六畳の部屋では、ベッドとテーブル、そして仕事用のパソコンでいっぱいになってしまう。ベッドをソファにして食べるのは、パソコンデスクを汚したくないための苦肉の策と言ってもいい。

 いつもの食事を、いつもの場所で。いつもではない時間帯に食べるのはほんの少し新鮮で、なかなかに気分がいい。毎日続けるにはきつい時間帯だが、たまにならやってもいいだろうという気持ちにさせてくれた。

 部屋にはテレビはない。ニュースなどは手持ちのスマホと、パソコンで見れてしまうから。

 食べ終わり、のんびり烏龍茶のお替りを注ぐ頃、外でカラスが鳴き始める。ベランダに続く窓に取り付けたカーテンの隙間からは、夜と朝の境目の綺麗なグラデーションが眩しく見えた。

 青、というよりは紺に近い夜空が、少しずつ色を薄く。そして赤味を増していく。

 夜空を彩っていた星々も、いつの間にか消え、白い雲が薄くちらほら。


「今日も、晴れだなぁ」


 ベッドの上で烏龍茶の入ったグラスを持ち、そして外を眺める。

 暗かった部屋の中にも、朝の明るさが染みてきていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る