「…えっと、ね。簡単に言うと…家出…かな」
…時刻は…今何時だろ。そろそろ深夜帯と言われそうな時間帯くらい…かな。
未空や綾川さんは多分もう寝てる時間、俺はまだ明かりの灯るリビングで葵と過ごしていた。
「…ほい」
俺の前にクッキーが何枚か入った皿が置かれる。
「急にクッキーなんてどうした?」
「いや…別に何でもないけど…まあ作りたくなって」
「そう」
「これは余ったもので作ったものだから、ちゃんとした奴は明日な」
「はいはい」
■
…響谷くん…遅いなぁ…。
葵さんと何をお話ししてるんだろう?
「…ねぇさくっち」
「どしたの未空ちゃん?」
「…響谷くん、まだ来ないの?」
「そうみたいだね~。葵さんと結構長話でもしてるのかな」
「…大丈夫かな」
「大丈夫だって。………そういえばさ、なんでさくっちは響谷くん達とシェアハウスすることにしたの?」
「……えっと…それは…」
「言いたくなかったら言わなくていいんだけどさ?」
「…えっと、ね。簡単に言うと…家出…かな」
「家出?」
「うん…その、私と両親…元々そんなに仲良くないから」
そうなんだ…なんか意外。さくっちってなんか、両親と一番仲良さそうなのに。
「…なんて言えばいいのかな…元から、そんなに仲は良くなかったんだけど…ちょっと色々、揉めちゃって…ね」
「そうなんだ…」
「それで…家出したけど、どうしようかなって思った時に、葵さんが私に手を差し伸べてくれたんだ」
「そんな事あるんだね…」
「うん…私もびっくりした」
「…まあそうだよね~。…それじゃあ、そろそろ寝よっか」
「うん、おやすみ」
■
「…そういやさ」
「ん?」
「クッキー以外も作らねぇの?」
「ん~…まあなんだ、気分じゃない。ってとこかな」
「そうか」
「ま、お前が作るっていうなら私も手伝ってやらんこともないが」
「何様だよお前」
「葵様だぞ」
「お前が様付けで呼ばれ始めたらいよいよ世も末だな」
「なぁ、いいのか?そろそろ私泣くぞ?」
「泣きたけりゃ泣けばいいだろ、ほら、胸貸してやるから」
「泣くくらいなら腹いせにお前を食う」
「うわ、こっわ…」
「ガチのドン引きやめろ」
「だったらドン引きされるような発言をやめろ」
「それはまあ一理あるな。だが直すつもりはない」
「…はぁ~~~…」
「ま、私がこういう話をするってことはお前とそういう事をするのは全然OKってこった」
「…気色悪ぃな」
「はいはい、コーヒーいるか?」
「う~ん…まあもらう」
「はいよ」
暫くして、コップに入ったアイスコーヒーを葵から渡される。
「あれ、酒じゃないんだ」
「ん?おう。ってか、私家で酒飲む事なんか殆どねぇぞ?」
「あれ、そうだっけ」
「大抵炭酸水だ。…まあ極稀に酒も飲んでねぇ訳じゃなないが」
「ややこしいな」
「…っていうか、コーヒー飲んでも良かったのか?寝れんくなるだろ」
「コーヒー飲んでも眠れるときは眠れるっての」
「まあ確かにそうだが…」
■
…響谷くんのベッド、今更だけどすっごくいい匂いするなぁ…。
柔軟剤とかのふわふわした匂いがする…。って、ダメダメ、もう私も寝なきゃ…。
そうして、そろそろ眠りに就こうかと思っていると、扉の開く音がした。
「…ぁ…」
ベッドの掛け布団をめくって声を漏らした響谷くんが、踵を返して部屋から出て行こうとする。
私は響谷くんの手を掴んで、その場に引き留める。
「…なんで、一緒に寝ないの?」
「…嫌、だろ?」
「そもそも、嫌だったら響谷くんの部屋に寝に来ないよ」
「…まあ、それもそうか…」
なんだか渋々、そんな感じで響谷くんはベッドに寝転ぶ。
「眠れるの?」
「知らん…朝はあんまり起こさないで…」
「ふっふっふ、それはどうかなぁ?」
そんな事を言いながら、響谷くんの腕に抱き着く。丁度いい抱き枕…。
響谷くんはこんな風に女子二人に囲まれたとしても、眠い時は素直に寝るから安心できるんだよね~。
…けど、………襲ってほしい時にもこうして眠ってしまったら困るしな~…。
…おやすみ、響谷くん。
■
「お~き~て~!響谷く~ん!」
「…嫌だ…」
「もう~!あんな時間まで起きてるからでしょ!」
「…昨日言ったろ…」
「昨日は昨日、今日は今日!」
「…なんだよ、それ…」
…あ…でもそっか…起きちゃったらこの寝顔も…ポヤポヤした響谷くんも見れない…。けど起こさないと…。
「…しょうがないな~、それじゃああと2時間だけだよ?」
「未空ちゃん…先輩に甘すぎ」
「あれさくっち、いつの間に起きてたの?」
「未空ちゃんの声が大きすぎて起きたの」
「あれっ、それはごめんね」
「………」
「…未空ちゃん?」
「…………」
「…おーい?」
「…ぇあっ!?」
「大丈夫?」
「あ、うん…。…先、リビング行っておくね」
「分かった~」
…未空ちゃん、さっきすごく興味津々に響谷くんの寝顔見てたなぁ~。
やっぱりギャップってやつなのかなぁ?
■
…なんでだろう、先輩の寝顔が頭から離れない。悪い気はしないけど…。
「…あれ、葵さん?」
響谷くんの部屋からリビングに着くと、ソファに寝転がって葵さんが眠っていた。
「…なんで自分の部屋使わないんだろう…」
そんな疑問を口にしながらも、近くにあったブランケットを葵さんにそっと掛けておいた。
――――――――
作者's つぶやき:これが投稿されるのが11/04…最後に出したのが10/31…実に4日も投稿をお休みしてしまいました。
大変申し訳ございません。
…明日も頑張って投稿します。ので、今後ともよろしくお願いいたします…。
さぁ、未空さんと綾川さん、響谷くんはどっちを正室に迎えるんでしょうか。ワンチャン葵さんの可能性も…。いや…ないかな…。
――――――――
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