ラッキーorアンラッキー

「…あれ、葵まだ寝てんの?」

 いつもなら、俺も葵も起きている時間。

 今日は、特に珍しくもなんともなく深夜に話していたため、少し起きるのが遅くなった。

 …が、葵はまだ寝てる。

「あ、おはようございます先輩」

「おはよう綾川さん。…それで、この寝坊野郎はいつになったら起きんだ?」

「…さぁ…」

 ソファの正面に回ると、葵はお腹のあたりにブランケットを掛けて眠っていた。

 …こいつ、黙ってたら結構美人なんだけどな。黙ってたら。

「…あの、先輩」

「ん?」

「…その、聞いて良いのか分かりませんが…親御さんは…?」

 …親…親ねぇ…。

 俺が返答に困っていると、少し慌てたように綾川さんが言葉を付け足す。

「あの…答えたくないなら、無理に答えようとしなくても…」

「いや…まあ俺は良いんだけどさ、綾川さんが大丈夫かなって」

「私も大丈夫です…、両親とは…犬猿の仲とまでは言いませんけど、それなりに仲が悪いので」

「へぇ、そうなんだ」

 結構意外だな。いい子だし両親とも仲いいと思ったんだが…。

「…ま、俺の親はさ、いていない様なものだよ」

「どういうことですか?」

「簡単な話。血縁関係上の両親は居るけど、家庭における親はいない。って、それだけ。…実際のところは、父親が病死、母親は後を追って…らしい。葵は母親の親友。…俺を育てるのは、そいつ母親から頼まれたわけじゃないらしいけど、まあお陰で俺は助かってる」

「母親をそいつ呼ばわり…凄いですね…」

「そうか?」

「はい…」

 …ってか、こんだけ会話しててもまだ起きねぇのかよ…。ったく、どんだけ働きづめてんだ。

「しゃぁねぇ、起きるまで放置しとくか…」

「え、起こさないんですか…?」

「…働き過ぎなんだよ。こんな寝てるって事は、碌な休息なんか取れてやしないんだろうな。だから、あんま起こしてやんなってだけだ」

「…というか、なんで部屋で寝ないんですかね…?」

「面倒くさいからだろ…だとしても仮眠用のマットレスくらい敷けってんだ…」

 何のためにわざわざマットレス買ったと思ってる…。

「朝風呂上がったよ~、やっぱり朝一番のお風呂は気持ちいいねぇ~」

 お風呂上がりのしっとりした未空がリビングに入ってくる。

「あんまり半袖で過ごすなよ?最近ちょっと気温低くなってきたし、湯冷めするぞ」

「分かってるよ~」

「…そう言えば、二人って疎遠になっていたんですよね、ちょっと信じられないです…」

「あ~、そう言えばそうだっけ。疎遠になってた幼馴染って、よくよく考えれば負けヒロインフラグかも?」

「…まあ、な。引っ越して離れたっていう訳じゃないけど…」

「ただちょっと…ね、成長して、男子女子っていうグループができ始めてさ…声かけにくくなっちゃって…ね」

 そう、こんな巡り合わせでもない限り、成長していけば異性の幼馴染っていうのは疎遠になっていく事が多い。ただそれだけの事。

「声を掛けにくくなると、次第に疎遠になっていく訳で…でも実際は、お互いまた話せたらいいな~って、思ってるんだよ?」

「けど…まあ他の友達と話してると…な、話しかけにくくて」

「そうそう、微妙な距離感なんだよね…」



「…えぇ、まだ寝てんの…?」

 流石に寝すぎだろ…。

「…いい加減起きろ、葵」

 葵の体を揺さぶる。すると、葵の手が伸びてきて―――

「ん…やめろ…」

 抱き寄せられた俺の頭が葵の胸に埋まる。

「―――ちょっ…!?」

 力強すぎ…苦し…。

「あらま…」

「な、なにして…!?」

 なんか柔らかいしいい匂いもする―――って違う。

「いい加減…起きろ…っ!」

 なんで人一人起こすだけでこんな疲れるんだよ…。

「…んぁ…?…ばっ、お前何して…」

「こっちのセリフだってんだ…」


 取り敢えず起きた葵に事の顛末を説明した。

「…それは…なんかすまん」

「ほんとだよマジで…」

「それで、どうだった?」

「…は?」

「感想はって聞いてんだよ」

「なんでそれを言う必要が…?」

「そりゃ聞きたいだろ」

 取り敢えず当たり障りのないように感想を伝えておいた。

「…もっと押し付けないとまともな感想は貰えないか…?」

 …うん、聞かなかったことにしよう。

「いやぁ、それにしてもまさか…ラッキースケベがこんな所で見られるとは…」

「全然アンラッキーだっての…」

「そ、そうです…破廉恥ですよ」

「これに関しては誰も悪くないだろ…」



 …まさか響谷の顔を胸に押し付けてたとは…。悪い気はしないがそれはそれとして申し訳ない…。

「響谷、悪かった」

「いや…別に良いけどさ」

「そうか?んならまあよかった」

「…良いけどさ、せめて反省の色くらいは見せくれない?」

「面倒くさい」

「…はぁ~~~…お前なぁ…」

「相変わらず仲いいね」

「ね。行動はちょっと…あれだけど」

「あはは…それは思ってても言わないの」

 …ま、そうだよな。…しゃぁねぇ、自重できる所は自重するか…。

「朝風呂入ってくるわ」

「おう、行ってらっしゃい」

「それじゃあ、私たちは葵さんの朝ご飯作ろっか」

「さんせーい」

 3人で分担して朝ご飯作んのか、今日はどんな味がするんだろうな。


――――――――

作者's つぶやき:うーむ…あとがきに書くことがない…っ!

あ、そうそう、GSMワールドの続編でも書こうかなと思ってます。それか異世界系か…。

まあ思ってるだけでまだ出来てはいないんですが…。

ま、続報をお楽しみに。

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