保護者にも親心
未空、綾川さんと3人で葵の寝顔を観察し続ける事はや2時間。ようやっと葵が目を覚ました。
「…んぁ…」
「あ、起きた」
「…みそらちゃん?」
「…あれ、家来た事言ってないの?」
「ん?うん。別に言わなくてもいっかなぁって」
「ほうれん草は大切だよ?」
「…おう、そうだな」
「未空ちゃん、それを言うなら報連相でしょ」
「でもどっちも大切だよ?私は苦手だけど」
…あれ、そうだっけ。
「響谷くんの作る野菜料理が美味しいだけで、私野菜全般そんなに得意じゃないの」
「俺もそんな特別な事はしてないんだけどなぁ~…」
「レシピ通りに作ってもおんなじ味にならなかったよ?」
「そりゃ、響谷の料理は大体目分量の適当調理だしな」
「うっせ、食えりゃいいんだよ」
「まあ、私も目分量&適当調理だからあんまし他人の事は言えんが」
「…ってか葵、いい加減退いてくれん?」
「えぇ…めんどい。寝心地いいからもちょっとだけ寝させろ」
「…はぁあ~~~~…」
■
「…よく寝れたか葵」
「おかげさまでな」
「ほんとだよ。…ったく、なんで朝からソファに固定されなきゃならんのだ…」
「それは普通に悪かったと思ってる」
「…ほんとか?」
「わーったよ、んじゃあ昼飯私が作ってやるから」
「え、いいの?」
「葵さんの料理食べるの初めてかも…」
「確かに…先輩の料理よりもおいしいって聞いた事はあるけど…」
「響谷、お前余計な事吹き込んだろ」
「事実を言って何が悪いんだ?」
「悪いとは一言も言ってねぇだろ。…」
「…どした葵?」
「…いや、なんにも」
…なんか、俺の事を見てたような気がするけど気のせいか?…自意識過剰になってんのかな。
■
…なんか、成長したな…響谷。
つい最近まで、もっとこう…小さかったような気がするんだが…。
甘えてきたこと…はそんなになかった。というか全くと言っていいほどなかった気がする。
…けど、なんて言えばいいのか…。響谷が大人になっていく様を見るのは、嬉しいような、それでいてどこか寂しいような気がする。
昼食を作りながら、遠巻きに響谷を眺めそんな事を思う。
…なんてーか、親心ってのはこういうことを言うのかもしれん。ネガティブではないのだが…かと言って100ポジティブかと言われてもなんとも言えない…すげぇ複雑な感情。
もし、梨帆がちゃんと響谷を育てていて、私が響谷の保護者じゃなかったのなら、私はこいつの事を、ちょっと生意気な奴程度に思っていただろう。
まあ、私の元で育てたからそうなったのかもしれんが…。梨帆だって家事はできんだ、響谷に教えるくらいはできるだろ…多分。
成人してから家事やり出した素人よか、万年家庭科の成績が5だった梨帆の方が多分…、私より家事は上手い。
そういやあいつの手料理って食ったことあったっけな…。学生の時に梨帆の弁当からちょっとおかずを貰ったことはあったが…あれ多分藍音さんの手料理だよな。すげぇ美味かったけど。
「…なあ葵、なんでそんな俺の事ガン見してんの?」
「…いや、親心ってこういう事なんかもな…って思ってな」
「?何言ってんだ?」
久しぶりに作ったな…料理全般、あんまり自身は無かったけど、案外体が覚えてるもんだな。
「いただきまーす。———ん!おいしっ!?」
「あはは、そりゃよかった」
「…葵さん、料理上手ですね」
「そりゃな、俺に家事教えたのは葵なわけだし」
「ま、学校だと家庭科の成績は万年1か2だったんだがな」
「…あぁ、母さんは万年5だったらしいな」
「叩き上げと才能じゃ訳がちげぇんだろうな、多分。私もあいつの料理の腕は詳しく知らんが、飲食店を開いたら普通にやっていけるくらいの腕はしてたらしいぞ」
全部藍音さんの話だからちょっと誇張も…ないか、あの人家事に関しては結構口うるさくしてたもんな。
今の響谷の家事を見たら絶対に口出してくるわ…、その光景が目に浮かぶんだよなぁ…。
「ごちそーさま!」
「えっ、早くね…?」
「だって葵さんの料理美味しかったんだもん♪」
「お粗末様未空ちゃん。美味しかったのならよかった」
「…あ、そうそう葵さん。私もそろそろ料理始めてみようかなって思ってるんだけど…。教えてくれたりしないかな?」
「そーいうのは響谷に頼みな。多分私よりも家事上手いの響谷だから」
「えー、そんな事ないと思うけどなぁ。ね、響谷くん?」
「これじゃ謙遜合戦になるやつだな…」
いや…少なくともこれは事実だと思うんだがな…。
「…まあ、分かったよ、響谷の教え方が絶望的に下手だった時は頼って」
「あの…先輩…私も、教えてもらっていいですか?」
「う~ん…教えるようなことあるかなぁ…二人とも全然、食材の下処理とかできるし…メシマズって訳でもないし」
…まあ、ぼちぼち見つけて行けばいいんじゃねぇかな。課題はぶつかって初めて分かるもんだし。
「それじゃあ、今日の夜ご飯は4人で作ろーよ!」
「いいね、それ賛成」
「…だってさ、どうする葵?」
「まあ、いいんじゃねぇの?」
「…じゃあ葵、車出してくれ。買い出し行くぞ」
「へいへい、いい加減お前も免許取れよな」
「俺はまだ未成年だっての」
――――――――
作者's つぶやき:更新2日も休んで申し訳ないです…。
してそれはそうと、4人で料理って逆に狭くないですかね?あと料理の工程にそこまで人員が必要なんでしょうか…。
ワンマンでしか料理したこと無いので分かんないですが…。
まあ全員家事スキルは高いですし、余程の事故が起きない限りは食べられるものが作れる事でしょう。
――――――――
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