世界は(物理的には)広いし、(感覚的には)世界は狭い。

「ねぇねぇさくっち~」

「どうしたの未空みそらちゃん?」

「今日さくっちの家行ってみてもい~い?」

「え?…えっと…ちょっと待ってね?」

「うん、分かった~」


 スマホを取り出して、先輩にメッセージを送る。

 SAKU:先輩


 Hibiya.T:どうした?


 SAKU:その、今日友達が家に行きたいって行ってきたんですけど…

 SAKU:いいですか?


 Hibiya.T:あぁ、まあいいんじゃない?


 SAKU:一応、名前は理上未空って言います


 Hibiya.T:あぁ、うん。サンキュ


「…どうって?」

「うわ、驚いた…」

「って、あれ…。この名前…。…もしかして」

「…?」



 未空みそら未空みそら…、………未空みそらね…。

「…まさか、な」

 時に、現実は小説よりも奇怪であると、聞いたことがある。まあそれはそうだろう、所詮創作の世界は人の想像が及ぶ範囲でしか描くことができないのだから。

 …まあ、だから…この未空みそらが俺の知っている…俺の幼馴染の未空みそらである可能性も、捨てられるというわけじゃない。

 …というか、普通に疎遠になってたから会ったら絶対に気まずいだろ…。


 SAKU:私たちは部活があるので、あとで家に帰ります


 Hibiya.T:了解



「ただいま」

「お邪魔しま~…」

「「」」

 俺と、俺の目の前に居る少女がお互いを見合って、絶句する。

 …全く一緒だからだ。疎遠になっていた、幼馴染と。

未空みそら…だよな」

響谷ひびやくん…その…久しぶり」

「あれ、二人って知り合いなの?」

「…ん~…え~っとね~、…疎遠になっていた幼馴染かな~」

 …実は一時期未空みそらに片思いしていたという話はまあ置いといて。

「…なんだか、あんまり変わってないね。あおいさんは今日もお仕事?」

「まあそんなとこだな」

「ふ~ん。つまり今ここには、女子2人と男子1人がいるわけだ」

「…未空みそらちゃん?」

「…ま、いいや、取り敢えず手洗わせて~」

「洗面台はこっち」

「は~い」

 玄関から靴を脱いで家に上がり、綾川あやかわさんの背中に付いて行って洗面所に入っていく。

 …ほんとに未空みそらだったとは…。



 まさか本当に響谷ひびやくんだったなんて…。

 いや、久しぶりに会えてうれしいけれどさ、なんかこう…つい最近まで疎遠になっていたし…。

 いや、でも…そんなに気まずくはなかったかも?


 …響谷ひびやくん…私に片思いしてた時期があったよね~なんて、手を洗いながら振り返ってみる。…実は片思いじゃなかったりして。

 私だって別に、嫌いな訳じゃない。というかまあ好きなのだ。

 さくっちに響谷ひびやくんをとられてしまいそうで、今更ながらなんとなく不安になってくる。

 …私は負けヒロインなのか、それとも正ヒロインなのか…。まあどちらにせよ、私は響谷ひびやくんが幸せそうならそれでも別に全然問題はないんだけど。


 …とはいえ、久しぶりに会った幼馴染を見て思った事、それは、『あんまり変わってないな』という事。

 なんて言うか、響谷ひびやくんは響谷ひびやくんのまんまだ。どこか少し気怠そうな感じで…こう、チャラチャラした雰囲気になってないというか。高校デビュー的な事をしていないという事が良く分かる。


 手を洗い終わった後、私はリビングの中に足を踏み入れる。

 …視界に入ってきたのは、いつかの日と全く同じ光景だった。よくこの家に遊びに来た。最早ここは第二の実家と言っても…流石に差支えはある。けど感覚的にはそんなものだ。

 世界は(物理的には)広いし、(感覚的には)世界は狭い。…なんだか、そんな言葉が似合う気がする状況だ。

「…あんまり変わってないね、ここ」

「そりゃあな。模様替えとか面倒くさいことこの上ないだろ」

「まあそれは確かにそうかもね」


 ■


 …なんか…なんか、絶妙に未空みそらちゃんと先輩の距離が近い。

 いや、まあ別に良いのだけど…。なんか…なんかこう…引っかかるものがあるのだけど…。


――――――――

作者's つぶやき:えーっと…はい、短くてすみません。最近本当にネタも無けりゃ時間もないんです…。本当、何なんでしょうね。新しい作品のネタだけはポンポンと思いつくというのに。

自分の脳みそがこれほどまでにクソだと思ったことはありませんよ。全く。

――――――――

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