朝ごはんとお弁当当番

「おはようございます」

「あ、おはよう綾川あやかわさん。朝ご飯作っておいたから、冷めないうちに食べてな」

「…あの…これは?」

 そう言って、綾川あやかわさんは布に包まれた弁当箱を指差す。

「弁当だよ、俺と綾川あやかわさんの分」

「朝ごはんの上にお弁当まで…」

「あれ、迷惑だった?」

「あ、いや…そういわけではなくて…何というか申し訳ない気持ちに…」

「別にいいよ、1人分も2人分もそんなに変わらないし」

「あ…それなら…お弁当と朝ごはん、当番制でどうですか?」

「当番制?」

「はい、今日は先輩がしてくれたので、明日は私が朝ごはんとお弁当を作ります。明後日は先輩が…みたいなサイクルで、どうですか?」

 …まあ、俺は別にそれでも良いけど…。

綾川あやかわさんはそれでいいの?」

「はい、もちろんです」

「…なら、まあそれでいいかな」

「あ…でも先輩の料理より数段クオリティは落ちると思いますけど…」

「その辺は別に食べれれば良いから大丈夫。それより早く食べないと冷めるけど大丈夫?」

「あ、そうですね…。いただきます」

 手を合わせてそう言った後に、朝食のトーストを食べ始める。

 まあ、特別これと言った物は入ってない、ベーコンとスクランブルエッグのトーストだけど。

「…あ、綾川あやかわさんコーヒーで良い?」

 俺がそう聞くと、綾川あやかわさんはコクリと頷く。豆を挽く…のは面倒だし、もうインスタントのコーヒーでいいか。

 電気ケトルでお湯を沸かして、インスタントのコーヒー豆の上から注いでいく。楽だし美味しいし、完全に豆から挽いたやつの上位互換なんだよな…。


「ブラックのままで大丈夫?」

「できれば砂糖を…苦くなくなるくらい」

「分かった」

 調味棚から砂糖を取り出して、コーヒーに少しずつ加えていく。…味見できないのがちょっとやりにくいけど、まあこのくらいだろ、多分。

「はい」

 できたコーヒーを綾川あやかわさんに差し出す。

「ありがとうございます」

 綾川あやかわさんが朝食を食べているのを横目に、俺は時計をぼーっと眺める。

 …5時か…。昨日寝たの何時だっけな。今朝起きたのが4時頃だったけど。

 ゆったりと朝食作ったり弁当作ったりしてたらなんだかんだ1時間くらい経ってるんだよな~。

「ごちそうさまでした」

 そんな事を考えている内に、朝食を食べ終えた綾川あやかわさんがそう言って、椅子から立ち上がる。

「洗い物、しておきますね」

「あぁ、それは当番の時にやってくれればいいよ」

「分かりました。それじゃあお願いします。…そういえば先輩は朝ごはん食べないんですか?」

「ん?あぁ、俺はもう食べたから大丈夫」

「えっ…先輩朝何時に起きたんですか…?」

「4時くらい?」

「よ、4時…。あの、明日…私もそれくらいに起きなきゃダメですか…?」

「無理のない範囲で起きてくれればいいから大丈夫」

「ほんとですか?」

「あぁ」

 …っていうか、流石にいきなり4時起きはきついだろうし。俺はもうなんか習慣化されているけど。

「…先輩…ちゃんと寝てるのかな…」


 4限目が終わり、俺はいつもの通り教室の自分の机で昼食を食べ始める。

 …中学の時もそうだけど、友達いないんだよな俺。知り合い…というか、話せるような奴はいるけど。

 まあ特にこれと言って困ることもないしいいや。気にするだけ無駄無駄。



 …先輩、いつもこんな美味しいお弁当を食べてたなんて…。明日の朝ごはんとお弁当にとてもプレッシャーを感じる…。

「さくっちどしたの~?浮かない顔してさ~」

「あ…ううん、特に何でもない、気にしないで」

 今日も今日とて未空みそらちゃんとお昼を食べる。…先輩の作る玉子焼き、甘くないんだ。これはこれでアリ…というかすごく美味しい。

「さくっちの玉子焼きもーらいっ!」

 目の前に未空みそらちゃんの箸が伸びてきて、私の弁当箱に入っていた玉子焼きを一切れつまんで未空ちゃんの口の中に入っていく。

「あっ、ちょっと―――」

「―――ん!?なにこれすっごく美味しい!」

 未空ちゃんがオーバーリアクション気味にそんな感想を残す。

「ん、でも甘くない…。今日は作ってる人が違うの?」

「…あ、えっと…」

 …先輩の事…話したら…流石に良くないよね…。

「今日は気分。たまにはこういうのも、いいかなって思って」

「うんうん、確かにいいかもね。今日の玉子焼き、すっごく美味しいよ」

 …嬉しいけど、未空みそらちゃんが一切れ食べちゃったせいで残りが少なくなった。なんだか少し残念な気分。

「…それじゃあ、未空みそらちゃんのもちょっともらうよ」

「さくっちには~、そうだな~、はい、じゃあ唐揚げあげる!」

 そう言いながら、未空みそらちゃんは私の弁当の白米の上に、自分の弁当から唐揚げを一つ乗せてくれた。

「ありがと未空みそらちゃん」

「うんうん、いいよいいよ~」

 …今日の晩御飯…先輩に唐揚げを作ってもらおうかな。

 そんな事を考えながら、私は唐揚げを食べる。

「…うん、美味しい」

「ほんと?うれし~。って言っても作ってくれたのはお母さんだけどね~」

「そうなんだ」

「あれ、さくっちは違うの?」

「私は…そうだね、一人暮らし…」

 …してたから…。

「最後の方が良く聞こえなかったんだけど?」

「なんでもない、気にしないで」

「え~、そう言われると気になっちゃうなぁ?」


――――――――

作者's つぶやき:ブルアカ楽s…おっと。

さて、響谷くんは友達が少ないらしいです。ぼっちらしいです。特別陰の者という訳でもなさそうですけどね…。

一方で綾川あやかわさんは友達と楽しそうにお昼を食べてますね。

やはり響谷くんの料理は美味しいらしいです。いやはや、どれ程美味しいのか食べさせてほしいものですね。

――――――――

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