第2話 敗者の理由/ギャル/回想etc……
•敗者の理由
彰征「敗者同好会ってなんなんだよ……」
「言葉の通りだ。何かに負けてしまった者が、集まってその傷を癒す……みたいな。で、その部長がこの俺、
彰征「及川満………………」
雅「どうしたの?」
彰征「んー、いや……あっ、思い出した。陸上部の元主将ですよね?」
満「おぉ、知ってたんだな」
彰征「もしかして、敗者というのは大会で負けて、とか?」
満「まぁな……恥ずかしながら」
彰征「何か原因あったんですか?」
満「あぁ。最後の大会に行った時のホテルでちょっと、な……」
彰征「へぇ……」
雅「それは残念でしたね……」
「及川っち、ビデオオンデマンドが無料だったから深夜にAV見てて、そのせいで寝不足になって負けたの」
彰征「おいこら」
満「仕方ないだろ‼︎ ラインナップ見てたらめっちゃタイプの巨乳女優いたんだよ‼︎」
彰征「まず見るな‼︎」
•ギャル
「ウチは
赤木「ども」
坂「宜しく……」
雅「派手な金髪ですね。前から染めてたんですか?」
瀬那「ん〜ん、ウチも部活やってて、引退した後からだよ。少し髪も伸びてきたし、またそろそろ染めようと思ってるんだけどね」
坂「プリン……」ボソッ
瀬那「おぉい坂ァ‼︎ 聴こえてんぞ‼︎」
坂「ひいぃごめんなさいぃ‼︎」
彰征「プリンというより間違えてイカスミかけた冷やし中華じゃね?」
雅「しょーくん‼︎ 火に油注がないで‼︎」
•敗者の理由パート2
雅「平田先輩も部活が理由ですか?」
瀬那「いやいや、ウチは大して大会にも出ない茶道部員だったし」
彰征「へぇ、すすきのの擬人化みたいな雰囲気なのに意外ですね」
瀬那「キミ、ウチにだけ当たり強くない?」
雅「え、えーっと、それならどうしてこの集まりに?」
瀬那「………………」
雅「……えっと……先輩?」
瀬那「………………フラれた」
雅「なんかすみません」
•回想
瀬那「まぁ、折角ここに入ってくれる後輩のためにも、ウチの壮絶な過去を語るとしようか」
彰征「失恋ってそんな壮大なもんじゃないでしょ」
雅「いやまだ入るなんて言ってないって事をツッコもうよ」
瀬那「あれは2024年6月25日、夕方の校舎での話……」
彰征「おい普通に語り始めたぞ」
坂「日付まで正確に覚えてるの、妙なキモさがあるな……」
瀬那「おぉん? なんか言ったか?」
坂「ごめんなさいごめんなさいぃー‼︎」
彰征(平田先輩もこの人にだけ当たり強い……)
•進学先
瀬那「そんで中学から同じだった奴に、告白したのよね〜」
雅「その人に何て言ったんですか?」
瀬那「末永くお付き合い頂きたい」
彰征「うわ重っ」
赤木「武士みたい」
瀬那「そしたらさ……フラれたんだよ……『1年もしないうちに進学で遠く離れるんだから無理』って……」
雅「あぁ……成る程……」
彰征「因みになんですけど、先輩と相手の方はどこを志望してるんです?」
瀬那「えっとね、ウチは札幌か旭川の医科大学に行きたいなーって思ってるんだけど」
彰征「地味に成績しっかりしてるんだ……」
満「意外だろ?」
瀬那「おいそこ」
雅「それで、向こうは?」
瀬那「熊本大」
雅「あっ無理ですね」※舞台は北海道です
•負けヒロイン
瀬那「大体なんで熊本なのよ‼︎ 新千歳からも旭川からも直行便ないじゃん‼︎」
雅「そういう問題じゃないのでは……」
彰征「そもそも旭川空港の国内線3つしか行き先ないですよ」
瀬那「せめて九大ならまだマシなのに……」
雅「福岡なら通う気だったんですか⁉︎」
満「ホストに貢いだ方が安そう」
彰征(この人そもそもフラれてる事忘れてない?)
瀬那「あーもう思い出すと嫌になってくるわぁ……」
彰征「………………」
瀬那「どしたんじっと見て」
彰征「いやぁ……負けヒロインってこういうのを言うんだなぁって」
雅「しょーくんオブラート‼︎」
瀬那「よっしゃ表出ろや。ブラックジャックで勝負だ」
赤木「ディーラーは任せろ」
彰征「表出る必要あります……?」
雅「2人共落ち着いてぇ〜‼︎」
•大体A70
瀬那「そう言えば日比野っちは自己紹介まだじゃない?」
「あぁ〜……
彰征「あぁ、名前は存じているよ。確か5組だったかな」
十優「へぇ〜覚えててくれたんですねぇ〜」
雅「日比野さんもここにいるのは何か理由があって?」
瀬那「日比野っちの親友はウチの仲良い後輩なんだ。だからウチが勧誘したの」
満「女子は瀬那1人だったからな、その点で女子も欲しかったものあるさ」
彰征「……因みに何に負けたのか聞いても?」
十優「昔、その親友と勝負をしたんですぅ〜。3年後にバスト大きかった方が勝ちって」
彰征「ごめんボクが振っておいてなんだけどこの話題やめようか」
雅「しょーくん目線が胸に行ってるけど」
•虚しくなりません?
十優「何で78cmから成長しないだろうねぇ〜……そもそも身長も早々に止まったしぃ〜……ハハッ」
彰征「2徹したミッキーみたい」
雅「因みにその相手とはどのくらいの差があったんですか?」
瀬那「完敗よ。あの子は全体的にデカいからね」
雅「ありゃ〜………………」
十優「あぁ〜……おっぱい……おっぱいが欲しい……」
彰征「人によってはかなりヤバいセリフだぞそれ」
雅「いや人によらなくてもヤバいよ」
•人それぞれ
十優「にしてもぉ〜……彼女さん、とゆと同じ位の身長なのに、良いサイズのお胸さんをお持ちですねぇ〜」
瀬那「お胸さんって」
雅「えっ、ありがt」
彰征「ミヤビはバスト83cmのCカップだぞ‼︎ 日本人の平均に近い理想的な胸だな‼︎」
雅「すみませんアロンアルファ持ってる方いません?」
彰征「待て‼︎ 口は洒落にならん‼︎」
十優(今のは彼氏さんの方が悪い気がぁ〜……)
瀬那「ウチは気にしないから言うと、前測った時は87cmのEだった。余分な肉がつく場所に恵まれたよね〜」
坂「前はサバ読んで90って言ってたような……」
瀬那「おっとぉ? ここに回転箒があるぞ?」
坂「待て気にしないんじゃなかお許しを‼︎」
赤木「それで叩くと汚いでしょ」
彰征「ツッコむとこそこじゃないのでは?」
雅(あの人も何で余計な一言を繰り返すのかな……)
•本当の理由は……?
彰征「そう言えば斎藤が見当たらないな」
満「確かクラスの人に勉強教える予定があると言ってたな」
彰征「へぇ、成績良かったのか」
満「一部の教科だけな。実際それが理由で彼を誘いに行ったつもりなんだけど」
〜数ヶ月前〜
満「キミが斎藤礼央くんか?」
斎藤「……そうですが」
満「キミの兄と仲が良いから、話は聞いているよ。化学基礎の定期テストが1年間全て100点ながら、2年になって最初の定期テストでやらかして化学85点いかなかったと」
斎藤「その通りです」
満「当初はショックで授業休む事もあったと聞いて会いに来たんだ。俺は敗者同好会の部長。何か負けた者が集まってその傷を癒す集まりだ。キミの勧誘に来た」
斎藤「………………」
満「どうした?」
斎藤「あぁ、いや、こないだのウマ娘のガチャで数万注ぎ込んだのに大敗北した結果お小遣い減額されたのが理由かと思ってました」
満「……もうそれでいいよ」
〜〜
瀬那「待って、ウチが聞いたのは、中1のいとこに50m走のタイムで負けたって理由なんだけど」
彰征「あいつ足遅ぇなぁ‼︎」
赤木「体育祭の種目決めじゃんけんで負けたからって聞いたよ」
彰征「ちっさ‼︎」
十優「確かパチn」
彰征「ちょっと待てぃ‼︎」
坂「相席食堂……?」
雅(揺れる見解……)
•本当の理由は……⁉︎
礼央「失礼しま〜す」
満「あれ戻ってきたぞ」
礼央「矢野くん、ここの雰囲気はどうだ?」
彰征「まぁ、皆さん会話相手としては申し分ないが……因みにさっき斎藤がここに入った理由を話してた」
礼央「そうかそうか。あっ、戻ってきたのは忘れ物しただけです。そんで、この同好会に入った理由だったかな」
彰征「あぁ。会話の中で出てきた理由がバラバラなんだけど」
礼央「ははっ、大した話じゃないさ‼︎ 旭川までのバスで友人とどっちが多くエゾシカ見つけられるか勝負して負けたんだ」※舞台は十勝です
満「新説⁉︎」
雅「日替定食並みに理由がポンポン変わるね……」
彰征「というかくっだらねぇ‼︎」
≪≫
「それで、敗者同好会に入ってくれる気にはなってくれたかい?」
小会議室での時間が暫く経ち、ふと及川先輩がボクとミヤビに切り出した。
最初の強制参加みたいな雰囲気とは違って、非常にこちらを窺うような口ぶりだし、態度から圧を感じさせないような配慮もしているのだろう。
「う〜ん……迷いますね……」
とは言え、こちらとしては、のんびりと学校生活を送りたいと思っていた所で。そこにこんな、楽しそうだけどそれ以上に疲れそうな面々と過ごすという案は、正直言ってミスマッチだ。
パイプ椅子の背もたれに体重をかけて唸っていると、ミヤビが微笑み加減に振り向いた。
「折角だし入るだけ入ったら?最近のしょーくん、のんびりするとは言っても、無気力になってるようにも見えたし。アタシはもっと活発な姿を見たいって思うな」
妖精が羽を広げたようにニコリと笑う。その顔に思わずドキッとすると同時に、彼女の指摘にハッとする。
ボクはそう見えていたのか。いや、実際そうだったのかもしれない。のんびりしたいと思ってその通りに過ごしていたつもりだったが、それはただ会長選挙のプレッシャーから解放された反動で虚無になっていた可能性もある。
視線を落とす。机には開けられたアルフォートの袋。片隅にはトランプのケース。
少し考え直す。自分に必要なのは何か。
のんびり悠々自適に……それはどういう事なのだろうか。ボクはどういったイメージでその言葉を使っていたのか。何かに煩わされる事なく心静かに生活を送る。それは誰かと関わって絆される事なく高校生活を送りたいという事なのか。
いや、そうじゃない。自分には沢山の友人がいる。沢山の居場所がある。今だって、ここに新たな繋がりが生まれようとしている。それを無駄にするなんて愚行の極みだ。誰かと関わり合う高校生活でありたい。
ならボクは……
「ただ責任感とかを背負わず、気楽に生活したいんだ……」
「えっ?」
「いやごめん、ちょっと考え事をしてて」
そう言って、ミヤビの事を見下ろす。
少し気の抜けた様子を伴った、僅かに茶色っぽい瞳が、ボクを一心に見ていた。
「ミヤビの言う通りかもしれない。普段のボクはもっと元気だったもんな。こうやって肩の力を抜いて高校生活を楽しむ居場所は、多いに越した事はない」
この人達となら、深い事を考えず、何かを背負う事もなく、日々を楽しめるかもしれない。今はそれに期待する事にしよう。
「ミヤビもこう言ってましたし、入ります。皆さんと話してる時間は確かに楽しかったですから」
その言葉に、おぉ‼︎というリアクションが生まれる。
ミヤビに視線をやる。ボクの事をよく見てくれて、こういう時には、何かしら助けとなる言葉をくれる。そんな彼女には感謝しかない。
目が合った彼女は、それはそれは可愛らしい笑顔を見せて頷いた。
この新たな出会いは、ボクやミヤビの生活にきっと何か変化を与えるだろう。責任感のようなしがらみから解かれた、退屈しない日々になりそうだ。
「じゃあ入ってくれたお2人さんにぃ〜、この進研模試の結果で作った大きな紙飛行機をあげますねぇ〜」
「えっいらない」
……退屈しない日々になりそうだ。
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