第3話
「遂に………完成したァ!!!」
俺の絶叫に、周囲の視線が痛い。
「………水木を呼ぼう。」
俺はその場から逃れるついでに、完成したアタックコマンドを同室の恩人に見せようと、その場を後にした。
「オッホォー!あのアタックコマンドがここまでカッコ良くなるたぁ、やっぱラートの手は神の手だな!」
一際大きい水木が来たことで、メンテナンスルームにいた技術者達は怯えたようにいなくなった。今回のメンバーは皆極端にビビりすぎだと思うのだが、軍人と聞くと忌避する市民も少なくない。これも、軍人の減少の原因でもある。
もちろん、軍人がいてもそのまま仕事をする技術者もいるが、避けるように動いたり、舌打ちするやつはいる。
「あぁ、紹介してくれて感謝する。俺も久し振りに満足だ。」
両腕脚部に水色の装飾モーターを装着したことで推進力を向上させ、機動力を上げられる。パンチやキックも早くなるが、使われる日は分からない。
胸部には炉心を追加し、濃い青色の装甲で弱点を守る。これによりアタックコマンドではあり得ない程の出力を発揮できる。
背部には元々あった電動機に外付けの新たな電動機を装着。
上記のモーターを全力で使うと最速マッハ3まで行けるが、音の壁を越えられる程の力はこの機体にはないため、各部を調整しながら使うことになる。
頭部は一応補強したのだが、上の装備で懐がスッカラカンになってしまったため、作り手のラートさんから産廃一歩手前の装備をしている。色はくすんだ白。年季の入った物だが、元々アタックコマンドがグレーのため、違和感はそこまでない。
「いやー、どうよ!機体のために有り金使いきった気分は!」
「達成感で満ち溢れているよ………」
「ハッハッハッハッハッ!!良いね良いねー!今日は俺の奢りだ!飲むぞぉー。」
「そりゃ良い。最終調整を終えたら頼むよ。」
「おう!じゃあ、先に飲んでるわぁ。」
水木は手を振って、酒場の方に消えていった。
大柄な水木がいなくなったことで、技術者達がチラホラと戻ってきた。
ちなみに俺の技術者はカスタムすると言った途端辞退してきた。俺達新人の機体を担当する技術者も同じく新人なのだが、技術者は結構引く手数多だ。例えば、偉い人の機体やエースと呼ばれる方々の機体は複雑な設計のため、技術者が何人もいないといけない。そのため技術者は新人でも弟子として取ってもらったりするから働き口に困らないのだ。
「よし、これでオッケーだな。」
配線を全て繋ぎ直し、アタックコマンド改め、アタックコマンド空の調整を終えた。
「おい、待てよ。」
「あ?」
話し掛けてきたのは向かいの機体を調整していた技術士数人だった。
「お前、新人のクセに機体をカスタムして恥ずかしくないのかよ?」
「新人は新人らしく地味な機体でも使ってな。」
「「アッハハハハハハ!」」
「……………………」
ハァー……メンドクセー………水木に絡まれるかもしれんけど気にすんな!、とか言われてたけど、直面するとかなりダルイ。
「おい、何黙ってんだよ!」
「なんとか言ってみろよ!」
センター分けと鶏の鶏冠みたいな髪型が俺に近付く。周りの技術士達は、見ないふり……と。
「…………………ハァ。」
「てめぇ!そんな態度で良いのかよ!」
「俺達が誰の担当か知らねぇみてぇだな!」
………ドヤるなよ、鬱陶しい。
俺は酒場に向かうため、この二人の横を通ろうとした。
「待てよ逃げんな。」
「もしかして怖くなったか?でもざんねーん、逃がしませぇーん。」
センター分けが俺の腕を掴む。
センター分けはまだしも、この鶏のウザさはなんだ?
「俺達はこの要塞のエース。ドレンさんの機体を担当しているんだぞ!」
「俺達に逆らったら、ドレンさんに逆らったも同然。それを分かってんだろうなぁ?」
ドレン……確かドレン・ファスタ少尉だったか。
「そうでしたか。私は仕事を終えたので、これで失礼いたします。」
俺は捕まれていない方の手で、センター分けの手を優しく払い、少し早歩きで水木の方に向かった。
「おい!………チッ、生意気なヤローだ。」
「なぁ、あいつの機体、弄ろうぜ。」
「バカ!それはダメだ!それだけは……絶対に……」
「チェッ、わーったよ。」
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