第2話
「おや?それはなんだい?」
同室となった水木一等兵に尋ねられた。
「これですか?」
俺はネックレスのように紐でくくりつけている巾着を軽く持ち上げた。
「そうそう。何かのお守りかい?」
「これは………はい。父の形見…のようなものです。」
父の最期を映した記録媒体であるから、ニュアンス的には合ってるだろう。
「そうか……悪いな、思い出させて。」
「いいえ、もう昔の事です。ですが、これは俺の命の次に大事なものですね。」
「……そうか。決して離すなよ。」
「もちろんであります!」
「…ハハハハッ!ちょっと堅苦しいな!勤務時以外はフレンドリーにしてくれよ。その方が助かる。」
「………分かりました、そうし…する。」
「あぁ、それで良い。それと、俺のことは………そうだな。水木って呼び捨てで良いや。もちろん任務中はちゃんと呼んでくれよ?」
「分かったよ、水木。俺のことも呼び捨てで。」
「おう、阿笠和。」
コンコンコン
「ん?……あぁ。」
何か思い当たったのか、横になっていたソファからむくりと起き上がると、ドアの方へと向かった。
「誰だ?」
「予定通りの来客だ。」
笑いながらそう言って水木がドアを開けた。
「初めまして、この度第14小隊のオペレーターに配属します、高崎と申します。新人の身ですが精一杯頑張りたいと思います。」
茶髪でおさげの…同い年ぐらいだろう。高崎が丁寧に頭を下げた。
「俺は水木一等兵、こっちが……」
「阿笠和二等兵です。」
「以上だ、よろしくな。」
「はい!よろしくお願いします。」
高崎はそう言って別の部屋へと向かった。
「水木は前にいた部隊はどんな感じだったんだ?」
さっきのように水木がソファで横になってからしばらく、気になったことを聞いてみた。
「ん?あぁー佐藤伍長の元にはいたが、それ以外は初めましてだな。」
「そうなんですね?」
「あぁ、前々回の戦闘でかなり死傷者が出たからな。」
「……山城の反乱だな?」
山城家。この海に浮かぶ要塞都市ホーゲンルの陸軍大将だった家柄だ。原因は不明だが、突如として反乱を起こし、一族諸共処刑された。
それを受けて、当時の空軍大将が陸空兼任大将となったのだが、あまりにも軍全体に被害があったせいで、陸軍と空軍は合併され、今の形になった。
「そうだ、軍学生も従事したんだったか?」
「補給や物資の配送だけだったけどな。戦の概要くらいは説明されたさ。」
俺は肩を竦めて答える。
「大変だなぁ。まぁ昔より乗り手が減ったってのが原因なのかねぇ。」
「そうだろうな。軍学校に在籍はしていても、ちゃんと兵士として軍に入ったのは全体の三割と聞いた。」
「マジかよ!?やっぱ命賭けるから不人気とか?」
「いや、それよりも、親の方針ってのが一番の理由だ。俺の知り合いも大体がそれを愚痴ってたよ。」
兵士としてこの場所を守りたい!という強い意気込みを持っているほど、親は心配して他の職を与えようとしていたな。
「なぁるほど。昔より外敵の脅威は減ったらしいし、要塞の中で安全に暮らして欲しいと思うのが親心ってやつだろうな。」
水木はしみじみと呟いた。
「そうなのかもな。…それともう一つ良いか?」
「なんだ?」
「水木の機体のカスタム、どこで手に入れたんだ?出来れば紹介して欲しい。」
あの機体のカスタム、俺が知るなかで性能はダントツのピカイチだった。少々値段が張っても目を瞑れるレベルの逸品ばかりだった。
「お!お前もカスタムするのか!?」
水木が今までで一番食いついてきた。
「あぁ、アタックコマンドだろうがなんだろうが俺の命を預ける大切な相棒だ。俺好みにするのは当然だろ?」
「ハハッ!お前と同室で最高だぜ!最近の奴らはカスタムの良さをなんも分かっちゃいねぇんだ!
どんな風にしたい!?教えろ!」
「あぁ、まず腕部を………」
この談義は深夜まで続き、次の日の点呼で俺と水木は遅れかけた。
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