第38話 ハーフオークは妹たちに励まされる

いつもありがとうございます。

しばらく、リューク君たちのお話が続きます。


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追いかけてきたマッケンゼン子爵とその部下どもを皆殺しにして、魔の森の奥に逃げだした。

みんな、黙って考え込みながら歩いていたが、1時間ほど経ったので休憩をとることにした。


まず、妹たちに向かって深々と頭を下げた。

「すまない。やるしかなかったとはいえ、高位貴族を殺してしまった。

これで、国から凶悪犯罪者として追いかけられるかも知れない。

それなのに、俺はこれからどうしたらいいか、全くわからならいんだ。

ディアナ、アレッタ、ディー、トリクシー、どうしたいか、希望はあるか?」


「リュー兄ィは全然、悪くないでしょ☆」

「アレッタたちも狙われていたにゃ!」

「そやな、全く気にする必要はあらへんで。」

ディアナ、アレッタ、ディーが慰めてくれて、トリクシーもうんうんと肯いていた。


「ありがとう。じゃあ、これからどうしようか?」

「うん、国から追いかけられるのはすぐに分かると思うよ☆

だって、巨人と4人の美少女なんて目立ってしょうがないもの☆」

ディアナはさらっと自分のことを美少女と呼んだ。うん、可愛いけどね。


「まずは、貴族を殺したことがバレない前提、国から追いかけられない前提なんだけど、3つあると思うんだ☆

王都に行く、猫人の村に行く、ドワーフの街に行く、だね☆」


「!!!ワイ、ドワーフの街に行ってみたい!」

ディアナが示した選択肢に、ディーが素早く反応していた。


「アレッタはどう?猫人の村に行きたくないか?」

「う~ん、う~ん、アレッタはリュー兄ィの、みんなの行きたい所でいいにゃ!」

「私もアレッタと同じよ。私の幸せは兄さんたちと一緒にあるから。」

意見を言い終わると、妹たちはじっと俺を見つめていた。


「・・・リュー兄ィが決めるんだよ☆『ハーフムーン』のリーダーはリュー兄ィなんだから。アタシ、アレッタ、トリクシーはみんなと一緒ならどこでもよくって、

ディーはドワーフの街に行きたいって。

リュー兄ィ、みんなでどこに行くの☆」

俺は妹たちの厚い信頼を感じて、涙が止まらなくなってしまった。


「・・・ありがとう、こんな俺と一緒にいてくれて。ホントにありがとう。」

「やった~☆リュー兄ィから「こんな俺と一緒にいてくれて。ホントにありがとう。」を頂いたぞぉ~☆」

「心配しないでも、ずっと一緒にゃ!」

「ワイらを捨てようとしてもそうはいかへんで!」

「兄さんは私が守ってあげます!」


ディアナ、アレッタ、ディー、トリクシーはほほ笑みながら、俺の手を取って、

ぎゅっと握りしめてくれた。

「ありがとう。・・・行先なんだけど、王都はまあ、今は無しだな。

猫人の村は、今行ったらもう来たのか?とか、もう最高のパーティになったのか?

とか恥ずかしい・・・」

「みんな、そんなこと気にしないにゃ!」


「うん。俺が気にするだけ・・・行ったことがなくて、ディのお爺さんに会ってみたいから、ドワーフの街はどうだろう?」

「決定☆」

「にゃ!」

「いいですよ。」

「やったで~!」

俺の提案を妹たちは二つ返事で了解してくれた。


もらった厚い信頼に絶対に応えるんだってまた、心に誓った。


すると、ディーがみんなを見回して嬉しそうに話し出した。

「なあ、ワイの大盾、魔法を消すって凄い特性あるやん?

ドワーフの街やったら、きっとみんなの武器にも、ええ魔石があったら、凄い特性付与できると思うねん!」

「アタシたち、もっと強くなっちゃうの☆」

ディアナがピョンと反応すると、ディーは大きく肯いた。


「せや!ほんま、ゴブリンキングの魔石は惜しかったなぁ~。こうなるんやったら、あのボケどもなんかに渡さんでよかったわ!」

そう、スタンピードの時に得た魔石はほぼほぼ、辺境伯に召し上げられてしまったんだ。


「キラーパイソンの魔石なら充分でしょ☆」

「せやな、でも、あれ1個じゃあなあ~。あれくらいの強敵、そこらへんにおらへんかなぁ~。」

「あんなのがたくさんいたら、命がいくつあっても足りないわ!」

「おっ!ニイヤン、ようやくノッテきたやん!」


「ディーの大盾って、ディーのパパがお爺さんから盗んできたんでしょう?

会いに行ったら返せって言われないかしら?」

突然割り込んできた、トリクシーの冷静な一言で、楽しそうだったディーの血の気が引いていた!

「ホンマや、返せ言われたらどないしよ?ニイヤン、どう思う?」

「・・・返すしかないんじゃない?」


「そんなぁ!大盾がなかったら、ワイ、普通の女の子になってまうやん!」

ならへん、ならへん!みんな、心の中でツッコんだと思う。

ギラリ!


「ニイヤン、いっつも言うとうやろ?言いたいことがあったら口にせえって!」

「あはは!行き先が決まったことだし、そろそろ、出発しようか!」

不自然さビンビンで俺は立ち上がった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日が暮れて、夕食を食べ終わった。

妹たちはもう普段どおりとなっていて、楽しそうにしていた。


俺はため息を吐いて、見上げてみれば夜空のてっぺんに半月が輝いていた。

「はあ、俺たちのピークはスタンピードだったのかな、あの『ハーフムーン』みたいに沈んで行くのかな・・・」

俺はセンチメンタルな気持ちを引きずっていて、思わず負け犬のセリフをつぶやいてしまった。


「??あの月は、来月のこの時間、またてっぺんにいるにゃ!」

「そうそう!『ハーフムーン』は上弦と下弦があるから、他より2倍、てっぺんに昇るよ☆」

「下ったら上るだけやで!」

「次の街に着いた頃にはまた、てっぺんにいますよ。」

また、妹たちに慰められてしまった。


「俺だけ、いつまでも引きずっていて、情けないな・・・」

「ふふふ!リュー兄ィ、弱い所を見せてもアタシたちは変わらないよ☆」

「リュー兄ィはアレッタが守るにゃ!」

「でもな、ワイら以外には弱い所を見せたらアカンでぇ~。」

「兄さんが私たちに頼りきっている。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。」


「・・・ええっと、明日には元気だすから。」

肉食獣に怯える草食獣の気持ちになりながら口にしたら、妹たちはニッコニコで肯いてくれた。


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