第30話 カロリーンはハーフオークを憎んでいる

『ブルースカイ』のカロリーンさんの話。リューク、エステルさんより2歳年上。

背が高く、勝気そうな美人さん。当然、金髪碧眼。ポニーテール。

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私の父母はメレンドルフ辺境伯領で冒険者をしていたらしい。

二人とも金色の髪、碧い目をしていて、優しかったような気がする。

らしいとか、気がする、というのは、あんまり小さいころに父母は殺されてしまったから、ほとんど覚えていないのだ。

父母は夫婦で冒険者をしていて、魔の森でオークの群れに殺されてしまったのだ。


その後、孤児となった私を、父の先輩であったヤーコブが養父となって育ててくれた。

養父は当時、辺境伯領のギルド長だったけど、私を引き取って3年後、

王都のギルドの副ギルド長になったので、私も一緒に王都にやってきたんだ。

養父から、剣と魔法を教えられ、同い年で私より強い人なんていないって思っていた。


15歳になって、養父から凄い才能の同い年の男がいるって教えられた。

それがアルナウトだった。

アルナウトは同じ下級貴族の子どもであるセシリアとシーラの3人で『ブルースカイ』を結成した直後だった。


アルナウトはセシリアとシーラを引き連れて現れた。

15歳のくせに、背が180センチ近くあって、その動きは豹のようにしなやかだった。その顔はこれまで見たことないような端正さで、なのに、その碧い瞳は欲しいものが得られない悔しさで燃え上がっていた。


私はアルナウトに勝負を挑んで完敗した。

「強いな、カロリーン。魔法も出来るんだろ?俺のパーティに入らないか?」

楽勝だったことをおくびにも出さないアルナウトに惹かれ、『ブルースカイ』に加入した。


当時からアルナウトはセシリアとシーラの二人と堂々と付き合っていて、全く隠そうとはしていなかった。

「ねえ、カロリーン。貴女もアルナウトのことが好きなのでしょう?」

ある日突然、セシリアがニコニコと笑いながら私に問いかけた。

「それは・・・」

私はどう答えたらいいかわからなかった。


「もし、ハーレムでもいいなら、アルナウトを受け入れたらいいよ。

アルナウトが貴女のことを気に入っているの知っているでしょ?」

やっぱり、シーラもニコニコしながら私に問いかけてきた。

「ハーレムはイヤだったんだけど・・・二人ともいいの?」

「「モチロンよ。」」


アルナウト。男爵家の次男で、男爵位は長男だからという理由で凡庸で弱い長男が後を継ぐそうだ。

そんな実家にアルナウトは絶望し、そして自らの強さを確信していた。

騎士になれる身分だけど、結局、騎士団だって、身分で出世が決まると知って、冒険者として駆け上がることを選んだんだ。

そんなアルナウトの全てにどうしようもなく惹かれ、私はハーレムメンバーになった。


3年前に、Cランクに昇級してダンジョンに挑戦できることになった。

ダンジョンコアさえ手にいれれば地位、名誉、財産、すべてを手に入れることが出来るんだ。

アルナウトは、それが出来るのはこの自分だけだという強烈な自負を持っていた。

このタイミングで、養父の仲間だったエルフの紹介で、エルフのクラウディアが仲間になり、その後、アルナウトのハーレムメンバーにもなった。


私たちはどんどん強くなっていき、順調にダンジョンを攻略していった。

1年前、『ブルースカイ』は72階を突破して、ついにこの国に4つしかない、

Aランクパーティとなった。


そんな時だ。彼女たちが現れたのは。

『三ツ星』。たった3人で、しかもみんな17歳で、Cランクに上がった有望なパーティ。

さらにわずか3か月で、36階を突破したから、『ブルースカイ』のライバルになるかもって注目していた。


リーダーはダミアン。小柄だけど素早さが売りのイケメン剣士。金髪碧眼!

エステル。剣と火魔法が得意なすらりとした美女。金髪碧眼!

そして最後がリューク。背が2メートルある大男。守り主体の重戦士。

浅黒い肌、豚鼻が特徴で、ハーフオークって呼ばれている。

そして信じられないことに、あの綺麗なエステルと恋人関係にあるらしい。

ハーフオークのくせに!


以前、私の父母の死について調べてみたら、やはり父はオークどもに殺され、

母はオークどもに拉致されてその後は全くの行方知れずとなっていた。


ハーフオーク!

なんで、魔物の子がのうのうとこの王都を歩いているんだ?

なんで、みんな、アレを殺さないんだ?


思い悩んだ末に相談してみたら、アルナウトの碧い目が冷たく光った。

「殺すのはもちろん、明らかに敵対するのは止めておけ。アレはもうギルドに認められているからな。」

殺そうとはならなかったけれど、アルナウトも人と認めていないようで嬉しくなった。


だから、私はハーフオークを殺すのをとりあえず諦め、しばらく様子を見ることにした。

セシリアと一緒にいるときに偶然、エステルとアレが二人で歩いているところで出会い、私たちはエステルと仲良くなることが出来た。


チャンスだ!

エステルを上手く利用して、ハーフオークを殺せるのでは?

いや、殺すのは無理でも、ハーフオークに嫌がらせをしたりはできないか?


そうだ!ハーフオークから恋人エステルを奪ったらいいのでは!

そうだ!エステルをアルナウトのハーレムに入れればいい!

そうすればハーフオークの心は死に、『ブルースカイ』はより強くなる!ははは!


うん!これだ!出来るだけ、無惨にフラれればいいな!

私は昏い期待に胸を膨らませていた。


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